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品川の青物横丁にある婚活居酒屋初体験

この7月で38才になる。
友人を誘って、品川の青物横丁にある『婚活居酒屋』というところへ行ってみた。男女それぞれのグループ客を同じテーブルにセッティングして出会いを後押ししてくれるお店で、テレビにも何度か出るほど有名なとこだそうだ。
真っ昼間から、店内はサエない男女でいっぱいだった。特に女は、お見合いパーティのフリータイムでひとりぼっちになるようなタイプだらけだ。こんな店、1時間いるだけでも人生のムダ遣いだけど、まだオレたちと相席になるグループは決まってないのですぐに帰るのは早計だ。待つこと30分。やっとこさ新しい女客2人がやってきて、目の前に座った。
金髪と黒髪の美女
共に25才の社会人。どうしてこんな2人が友達同士なのかさっぱりわからないが、黒髪に絞って頑張ってみる価値はある。気合いの入れ直しだ。
「こんにちは。赤澤です」「こんにちは?」
「ここはよく来るの?」
「いえ、初めてなんです?」
 良かった。こんなとこに何度も来る女なんてロクなもんじゃない。
婚活パーティだって、常連の女はたいてい男をモノでも見るような目で値踏みしてくるものだ。狙いの黒髪ちゃんも、歯抜けの金髪も、性格はよかった。ニコニコと笑いながら話題を振ってくれる。今日のツレ(友人)はもっさい男なので、間違いなくオレに食いついていると考えていいだろう。店のルールで、適当な時間に席替えをするため、1時間ほど経ったところで連絡先を交換し、また別の女客(トウのたった三十路オーバー)とおしゃべりしながら、黒髪ちゃんたちの帰りを待った。店の出口で声をかけて、そのまま二次会へ流れ込む作戦だ。
夕方6時ごろ、ようやく黒髪ちゃんたちが出口へ向かった。急いで追いかける。
「お疲れさま。帰り?」「あ、はい」「4人で二次会でもどうかな」
「あ、えっと、どうする?」
黒髪ちゃんはまんざらでもないようだが、金髪のほうが用事があるらしい。それじゃ3人で行こう。飲み屋に入り、黒髪ちゃんがトイレに立ったところで、ツレに声をかけた。「頼むから帰ってくれ」「え…」
「今日はオレに花を持たせてくれ。オレの人生はこの2年で決まるんや。25才のOLと付き合うチャンスはこれが最後かもしれんのや」
 渋々、ツレは帰って行った。よし、これでもらったぞ。
 黒髪ちゃんと2人になったところで、次のデートにつながる話題を繰り出していく。
「来週末は予定は?」
「んーっと、まだわからないです」
「それじゃ遊ぼうよ」
「そうですね、予定がなければ…」
 なんだ、ノリ気なような、そうでもないような態度だな。
「夏はなんか予定あるん?」
「フェスとかですね」
「あ、じゃあオレも行こかな」
「友達も一緒なんで」
「いや、2人きりがいいと思うよ」
「それはダメですよー」
 しまった。焦りすぎたか。
「それじゃ、今度ドライブ行こうよ」
「クルマ持ってるんですか」
「うん、今日もクルマで来たし。なんなら今から海でも行こっか」
「それはちょっと…」
 いかん。人生残り2年となると、つい焦ってしまう。
 なんだか煮え切らない感じの彼女は、お酒もロクに飲まず、
「ちょっと電話してきますね」
と、店の外へ出て行った。その直後、携帯が震えた。黒髪ちゃんからだ。なんだ、この演出は。直接だと言いにくいことでもあるのか?もしかして告白?
「はい、もしもし」「なんか最悪なんだけど」「最悪?」
オレ、なんか言ったっけ?
「キモくってさぁ」「え……」「迎え来てくれる? もう、マジで帰りたいんだけど」
「……」
ピンときた。彼女、他の人間と間違ってオレに電話しているようなのだ。最初の「もしもし」は聞こえたはずだから、男友達の誰かのつもりでいるのだろう。「……」
声を発することもできず、通話を切った。もう先の展開がないことは確定したけれど、だからといって彼女に間違い電話だと気づかせてしまうのはあまりに気まずすぎる。
どうしよう。黙って帰ろうか。まだ席に戻ってこないってことは、彼女も間違いに気づいてあたふたしてるからかも。気づいていないにしても、このあと冷静に会話できる自信はない。下手したら殴りかかってしまうぞ。オレはすくっと席を立ち、手早く会計を済ませて外へ出た。向かいの軒先で誰かと電話している黒髪ちゃんの姿が見えたが、無視して立ち去った。もう、出会いの場に顔を出すのは、正直疲れた。今回のような屈辱的な経験を味わうくらいなら家で寝てたほうがマシだ。やっぱり男女の出会いは、もっと自然な形のほうがいいんじゃないか。オレの恋愛人生はもう2年しかない。後で悔やみたくはないので、ここで大胆に動くことにした。月金まで毎日、会社帰りに習い事を入れるのだ。もちろん女子の多い教室ばかりを狙って。
いま考えているラインナップは、ヨガ教室、ワイン教室、英会話、料理教室、テニスの5つだ。来月からは、それら教室で知り合った女性たちとの楽しげな交遊リポートとなるだろう。

こちらはモンゴル居酒屋
ネクタイをしめ直し、予想もしない展開が待つ入り口のドアに手をかけた。仲よく盛り上がる客たち。女性客と男性客のセッティング規定はないものの、マスタ—がなぜそこまで?
「女の子と男の子仲良くさせるのボクの仕事ね。飲むの常識ね」
素晴らしい心がけですな
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