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遅ればせながら、大ヒット中の映画『君の名は。』を見た。「感動した」「泣いた」「意外とそうでもなかった」など、いろんな評判を聞いていたが、オレの感想はたった一つだけである。飛騨の女は東京の男と恋をしたがってるってことか!
アニメだってことはわかってます。作り話なのは知ってます。でもこの映画を観た飛騨女性は憧れたことだろう。私も東京の人と恋したい、と。なにせ地元が舞台の大ヒット映画なのだ、主人公の女の子に感情移入しないわけがないじゃないか。   
11月の朝。新幹線でひとまず富山へ向かい、そこから岐阜行きの急行『ワイドビュー』に乗り換えた。目指すは、映画に登場する『飛騨古川』駅だ。
グーグルのストリートビューで見た感じは、田んぼと畑ばかりだ。映画のヒロインちゃんは「もうこんな町いややぁ〜」と田舎暮らしを嘆いていたし、地元の女の子たちもそんな感じだろう。なんならオレ、東京に連れて帰っちゃうからね。
期待を膨らませつつワイドビューに乗ること1時間。昼過ぎに飛騨古川駅に到着した。地元女のみなさん、東京人のマー君がやってきましたよ。
有人改札を抜け、駅前をぐるりと見渡す。若い観光客がパラパラいた。 
線路を写メったり牛のキャラクターと並んで記念撮影したり。映画のモデルになった土地を〝聖地〞だっつって訪ねてきたのだろう。わざわざこんな山奥にやってくるなんてヒマ人どもめ。 
もちろん、オレはそんな聖地バカには用はない。なにせ東京ボーイと恋をしたがっている地元女が待っているんだから、さっさと出会いに行きましょう。
ひとまず周辺をぶらっと歩いてみると、路上には人がほとんどいなかった。通行人と言えば、カートを押して歩くジジババばかり、女の一人歩きなどはゼロだ。
ならばと、女がいそうな店を探してみることにしたが、これまた芳しくない。コンビニすらないし、くたびれた外観のメシ屋や本屋、昼カラオケのスナックが営業している程度である。 一つ気になったのは、老人ホームのデイケアのワゴンをよく見かけることだ。だいたい車内には、若い女のスタッフが乗っているし…。
こんなド田舎でジジババの世話をしている女の子たち。いかにも東京男と恋をしたがっていそうじゃないですか。オレはナンパのプロだ。カバンに入っていた紙ナプキンを取り出し、メッセージを書いた。
「仙頭です。飛騨のお話を聞かせてください。080‐××××‐5019」 
仕事中の子にはやっぱり手紙作戦に限る。 まもなく、老人ホームの車を見つけた。民家での作業を終え、まさに女のスタッフが乗り込もうとしているところだ。運転席にはオッサンが座ってるが、行っちゃいましょう。
「すみませーん。東京から来たんですけど」
「……」
「さっき見かけて、すごくタイプだったんで」 
手紙を差し出すと、彼女は目を丸くしている。どうだ? 
東京の方はシャレたことするなって思ってくれるんじゃね?
「すいません、仕事中なんで」 
彼女はペコリと頭を下げ、手紙を受け取らずに車に乗り込んで行った。
「私らもやっぱり高山に出るからね」
いったん駅に戻ることに。これはなかなか厳しい状況だ。人間の数がこれほど少ないなんて。 
ふと、隣のオバサンと目が合った。
「おにーさん、『君の名は。』巡りで来たの?」
「…まぁそんな感じで」 
というか、何でしゃべりかけてきたんだ?
もしかして東京人っぽいと思ったのか?
でもオレ、オバさんとどうこうする気はありませんよ。しかし、相手はべらべらしゃべりかけてくる。
「私は古川が地元なんだけど、
何にもないでしょ?」
「…でもまあ飲み屋もあるし」
「少ない少ない。私らもやっぱり高山に出るからね、いろいろあるもんで」
隣の市である。飛騨人のお出かけ先は高山ってわけか。これは聞き捨てならない。 
夕方5時。高山に移動した。飛騨古川からはワイドビューで15分くらいだ。町のレベルは、グンとパワーアップである。自動改札だし、コンビニもあるし、ラブホだってあるし。人の数もだんぜん多い。路上に女の子もパラパラいる。大半が高山人だろうが、中にはきっと…。
そばを通りかかった女の子に声をかけてみる。
「すみません。オレ、東京から来たんですけど、よかったら一緒に…」
「急いでますんでー」
歩みをゆるめることもなく去ってしまった。東京人アピールをさらっと流したってことは、飛騨人じゃなかったのか。
「あ、飛騨の人に会いたかったの?」
路上で声をかけ続けること小1時間。すっかり日が暮れてしまい、そろそろ次の手を考えようと思っていたときだった。
『でこなる横丁』という飲み屋街の入り口に、年増の美人さんが突っ立っていた。
「おねーさん、いいところにいた!自分、東京から来たんですけど」
「そうなの?何しに?」なかなかフレンドリーな反応である。
「飛騨人に会いたくて。おねーさん、飛騨の人じゃないの?よかったら一緒に飲みに行かない?」
「あー、残念。もうちょっと早かったら一緒に飲みに行ってあげたんだけど。今から友達が来るんだよね」
先約が入っちゃってるってことか。
「じゃあ、とりあえず連絡先教えてよ」
「いいよー」
すんなりLINE交換に応じてくれた彼女は「連絡待ってる」と行ってしまった。 
この手応えのよさは飛騨女だったのかも?
もう一歩早ければと悔やまれるが。 
その後、さらに路上ナンパを続けたものの引っ掛からないので、夜11時、ダメ元でさっきのおねーさんにLINEを送ってみた。
「おつかれさまでーす。まだ飲んでますか?一人飲みしてますんで、そっちが終わってたら合流しませんか?」
すぐにラインは戻ってきた。
「今、でこなる横丁の餃子屋にいるよー」  きた!
オレのナンパはいつもこういう土壇場から動き出すことが多いのだ。マジで東京に連れて帰っちゃうかもよ。餃子屋のカウンターに座り、彼女は1人で飲んでいた。
「いやー、お待たせです」
頬がけっこう赤い。友達とかなり飲んだのかも。隣にすわると、彼女がつっけんどんに聞いてきた。
「ねぇ、名前なんだっけ?」
「仙頭だけど」
「仙頭さんは、怪しい人じゃない?」
探るようにこちらの目を見てくる。やはりそこそこ酔っ払ってるようだ。こちらとしては好都合だけど。 にしても、いきなりこんな質問をするってのはどういうことだろう。やはり都会の人間に対しての警戒心かな。でも本当に警戒していたら合流しないはずだ。
「いやいや、ぜんぜんオレはフツーの男だよ」
「それだったらいいけど」
すんなり納得しちゃった。ま、女ってのはこんなふうに一応確認したいもんなんだよね。
「それよりも、聞いてなかったけど、おねーさん、飛騨人でしょ?」
「違うよ。高山人」
そうなの?
「昔、飛騨に住んでたってことはない?」
「ずーっと高山。あ、飛騨の人に会いたかったの?やっぱり『君の名は。』が流行ってるから?」
「うん、まあ、そんな感じかな」
「ふーん。ちょっとタイムね」
彼女はトイレに立ち、そして戻ってくるや言った。
「じゃあ、わたし帰るね」 
え!たったいま合流したばっかじゃん!
「ごめんなさい。用事があるのよ。ほんとにごめん」
なんだこれ。

東京編

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「君の名は?」
「…いや、違うんで」 
あの映画の舞台は、飛騨と東京を行ったり来たりしていた。だからオレも飛騨で失敗したからといってあきらめはしない。 
いざ東京編に参ろう。こちらで重要視したいのはラストシーンだ。
青空の下の階段。上っていく主人公、降りてくるヒロイン。すれ違った後、
「あの、オレ、君をどこかで」
「私も」
そして2人が同時に「君の名は?」と尋ねる。この一番の名場面を再現してみるのはどうだろう。
大ヒット映画だから見ていない若い子はいないはず。もちろん、どこかで出会ったなんて記憶はないわけだが、パロディーであることに気づき、クスっと笑うだろう。 
第一声にもってこいでは? 
土曜日の午後。渋谷にやってきた。向かったのは、宮下公園横の歩道橋である。いつ見ても若い子がよく歩いている絶好の階段だ。 
今日もいるいる。そして天気も素晴らしい。おっ、かわいこちゃんが降りてくるぞ。レッツゴー!すたすたと上っていく。彼女をチラチラ見つめながら。
すれ違ったところで、すかさず呼び止めた。
「あのオレ、君をどこかで…」 
反応はない。どころかこちらを見ずにそのまま降りていく。 気を取り直してもう一回。レッツゴー。さっきよりも大きな声で声をかけてみる。
「あのオレ、君をどこかで…」 
相手が振り返った。キョトンとした表情だ。
「…いや、違うと思います」
げっ!普通に反応されちゃったよ。人違いと思われてるんだけど。
ならば真意を教えてあげよう。
「君の名は?」
「…いや、違うんで」
回れ右するとそそくさと階段を下りて行ってしまった。違うって何だよ!
あらら、答えてくれちゃったよ 
また上から女の子が階段を下りてきた。すれ違いざま、例のセリフだ。
「あのオレ、君をどこかで…」
彼女が振り向いた。すかさず次のキメ台詞へ!
「君の名は?」
「●△×□イングリッシュ」
うわ、答えてくれたけど英語じゃん。最後にイングリッシュという単語が聞こえたし。外人だったのかよ。うーむ、これは英語で言えって意味なのかな。

「What's your name?」
「ジェニファー!」
あらら、答えてくれちゃったよジェニファーちゃん。
一緒に階段を下りて、話を続ける。といっても英語なんて話せないんだけど。
「ジェニファーちゃん、ぼく、君とどこかで会った気がするんだけど」
「ノー、ジャパニーズ」 
日本語わかんないのね。
「ドリンクしない?ティードリンクしない?」
「ノー、ノー…」 
めっちゃ大きく手を振って、ジェニファーちゃんは逃げていってしまった。

ヒットした映画の聖地
キングダム
1. 静岡県・須山十里木
2. 栃木県・大谷資料館
3. 千葉県・鋸南町
マスカレード・ホテル
東京都・ロイヤルパークホテル東京
翔んで埼玉
東京都・バーレスク東京
でもスムーズすぎ~だと逆に不安

最初のメールで「ありがとう」。今度もまた「ありがとう」。何に感謝してるのやら。
ちょうど別の女性とのやりとりで忙しくて2日ほど返信ができずにいたところ、向こうから突然こんなメッセージが届いた。
〈まだお仕事だったの?大変ですね?1人で残業ですか?社長さんですか?もしかして?でも無理しないでガンバって下さいね〉
なぜメールを送らなければ仕事中なのか。なぜ「忙しい社長」なのか。俺は恐るべき敵を相手にしているのかもしれん。でもせっかく相手が思いこんでるんだから、この設定のまま話を進めてみよう。
〈代表ではないけど、役員には入ってるんですよ〉
〈すごいですねえ。私は保険の外交員をやってます。まだかけだしなんで大変です。毎日、朝礼からグッタリです。日々怒られっぱなしです〉
〈そうなんですか。僕は保険には入ってないんですよ〉
〈掛け捨てとかのにも入ってないの?ガン保険も今は絶対に必要だよ。入ってないのかな?〉雲行きが怪しくなってきた。
もしやこの女、引っかかったプリして、保険の勧誘をするつもりなのでは

それなら積極性の理由も説明がつくし。たいしたタマだ。だったらこちらはさらにそいっに引っかかった演技で、アポに持ち込んでやる。
〈それが入ってないんですよ。入らなきやとは思ってるんですけどね〉くあらまつ。じゃ〜まだまだ説明出来ないから、話す練習相手になってくれる?〉
〈どうせならど飯でも食べながらどうですか?どちらまで行けばいいんです?〉
〈私は埼玉だよ。夜遅くでかまいませんか?家は熊谷なので、そのあたりがいいです。田舎ですいません〉
さて、どう出てきやがる?熊谷駅にスーツ姿の中年女性がやってきた。40才前後か。

「ゴメンね、こんな遠くまで」「大丈夫ですよ」
生活臭が漂っているが、見た目はさほど悪くはない。ちょっと小縞麗な痩せたオバチャンって感じか。「初めまして、イクヨっていいます。よろしくね」
そういえばまだ名前も知らないんだった。おかしな出会いもあったものだ。お酒は苦手というので、彼女の車の助手席に乗り込み、近くのファミレスに向かう。
「なんで僕のメールに返信してくれたんですか」
「変なメールはいっぱい来るんだけど、知り合いかなと思って」
この言葉を真に受けてアホ認定するのは危険だ。保険勧誘のためにわざと隙多い女を演じているだけかもしれない。食い物を注文し、例の話をフシてみる。
「保険のお話はしなくてもいいんですか?」
「ああ、そうですね。すっかり忘れてました。なんか久しぶりに楽しくって」
あれ?おかしいな。裏読みし過ぎてたのか?むしろ保険うんぬんは俺と会うための口実
だったとか?
「あっ、じゃあ保険は今度でいいです。イクョさんともっとしゃべりたいんで」「そうですね」
聞けば彼女、バッイチで子供も2人いるシングルマザーらしい。今日は子供を親に預けて来てくれたのだとか。やっぱりこの人もネジが緩い系で正解か。ちょっと探ってみよう。「もしかして出会い会サイトとかで知り合った男性と会ったことあります?」
普通なら隠したいだろう過去を、彼女はあっさり口にした。「前に出会い系やグリーで知り合った人と付き合ったこともありますよ」
そういうタイプの人なのね。今日も出会い活動の一環みたいなものなんですね。じゃあ俺たちも乳繰り合いましょうよ。ところが彼女がしきりに時計を気にし出した。時刻は夜10時半過ぎだ。

「遅いと母親に怒られちゃうの」
子供を置いて夜遊びは肩身が狭いそうで。ま、そりゃそうだ。今日のところは帰りますか。「本当はもう少し一緒にいたかったけど…」
帰り際、彼女が車の中でうるんだ瞳を向けてきた。思わずキスすると、舌を絡めてくる。もうここまででいいでしょう。

街頭アンケートが美人奥様だったので答えて口説く

「ちょっとお時間いい?簡単なアンケートなんですけど」
都会の読者なら、街中で一度はこんな風にオバチャンから声をかけられたことがあるだろう。ご存知、化粧品やスナック菓子などのモニター調査をしているパートの主婦連中だ。
オレの会社の近くでも数メートル間隔に立ち、道行く人に声をかけている奥様の姿をよく見かける。が、オレ自身は彼女らに一度たりとも協力したことがない。というよりそんな気はさらさらないのだ。だって五百円程度の図書券をもらったところでうれしくも何ともないしだいいち若い女ならいざ知らず40前後のオバチャン相手に貴重な時間を取られるなんてシャクじゃないか。なんてことを思っていたら、世の中にはいるんですね。街頭アンケートなんぞやってる場合じゃないでしよって感じの美人奥様が。
「タバコのアンケートです。謝礼は現金で千円差し上げますのでお願いします」
振り返ってビックリ。そこには、吉永小百合を若くしたような清楚な奥様が1人立っていた。思わずオレ、言っちゃいましたョ。
「千円いらないから、デートしてください。この後ヒマなんでしよ」「え?」
このニーチャンは何を言っているんだ、と困惑げな彼女。いや、それはごもっともなん
ですが。「おいしいケーキを出す店があるんですよ。ごちそうしちゃいますから」
「イエ、アンケートがたくさん残ってるんで…」
ち、やはり簡単にはオチませんか。ならば、これでどうだ。
「それ全部貸して。会社の連中に書いてもらうからさ」
言うが早いが、彼女からアンケート用紙を奪い、雑居ビルの陰へ。筆跡を変え、左手で書き、とオレは十数枚のアンケートをまたたく間に埋めていった。
「はい、コレ」「え-、ありがとう!」
「これで、仕事終わりでしよ」「…はい」
「じゃあ少し付き合ってくださいよ」「え、はい。少しだけなら」
会社に取引先へ出かけると連絡し、まずは喫茶店で軽くお茶。口説きモード全開で押しまくる。

「そんな・・からかわないでくださいよ」

「からかってません。僕は本気です。あなたみたいなキレイた奥さん、初めてですよ」歯の浮くような台詞もエッチのためなら。果たして1時間後、オレと彼女は肩を並べてラブホの門をくぐった。子供を2人産んでいるとは思えないプロポーション。清楚なイメージと裏腹な濃厚なテク。いやあ人妻ってのはタマりませんなあ。

というわけで皆さんに耳よりな話を。彼女の言うことには、実はアンケート奥様連中はこのようにナンパされるのを若干心待ちにしているフシもあるとか。また、若い男ばかりに声をかけ、アンケートの名を借りた逆ナンを楽しんでいるツワモノもいる。皆さんもぜひ一度チャレンジを。ちなみにオレは、あの後もう1人いただいちゃいました。

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