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うだるような猛暑日に、東京の下町エリア、新小岩にやってきた。この町に足を踏み入れたのは一昨年の年越しテレクラ以来だが、駅前の様子は相も変わらずガラが悪い。道端にツバを吐きながら歩くオッサンの多さは都内随一だろう。
目的のテレクラ店へ向かっている途中、先ほどまでカンカン照りだった天気が一転し、バケツの水をひっくり返したようなゲリラ豪雨に見舞われた。おかげで服もびしょ濡れだ。これからテレクラで戦おうってときにこの間の悪さ。不吉な予兆のように思えてなんだか怖い。
最初のコールが鳴ったのは、店に入って30分が過ぎようとしたころだった。
「あのう、ワリキリで会える人探してるんだけどぉ」
ずいぶんハスキーな声が響いた。まるで酒焼けしたスナックのオバハンママのようだ。
「はい、大丈夫ですよ」
「え! え!」
「どうしました?」
「びっくりしたのよ。そんなカンタンにOKすんの? 私のこと何も知らないのに!?」
なるほど、たしかにその言い分は常識的だ。ま、容姿を聞いたところでどうせデブとかババアなんだろうけど。
「じゃあ、いまいくつですか?」
「39。あと何知りたい?」
「体形とか知りたいですね」
「全然フツーだよ。太ってもないし、やせてもないし」
「なるほど。見た目は誰似とかってあります?」
「ていうか逆に聞きたいんだけどさ、こういうところに電話かけてくる女ってヒドイのばかりじゃない? おかずクラブのオカリナちゃんとか森三中の大島とか、だいたいそういう系でしょ?」
「まぁ、はい」
「でしょ! 男の人からいろいろ聞くもん。さすがにイヤでしょ、そういう女は。だから、テレクラで探さなきゃいけないのは大久保佳代子とかいとうあさことかあのレベルなのね。それが現実的じゃない?」
「はあ」
「でね、私はいとうあさこ似だから。大丈夫、安心して」
そうか。この回りくどい話し方は、自分がいかにハズレじゃないかのアピールだったのか。何だかめんどくさそうなキャラだな。女芸人で例えてくれるのは非常にわかりやすいが、これから会うのがいとうあさこ似って…。ワクワク感が微塵もないんですけど。
「ところで今って、新小岩駅の近くにいます?」
「うん、いま南口にいるよ。さっき蒲田(都内南部の街)からはるばるやって来たの」
「蒲田にお住まいなんですか?」
「そう。あのクソみたいな街ね」
自分の地元をクソ呼ばわりするとは、何かイヤな思い出でもあるんだろうか。
「ぜひお会いしたいんですけど、希望額はいくらです?」
「1万2千円は欲しいかな」
「わかりました。じゃあ、待ち合わせは5分後にミスタードーナツの前でいいですか?」
「できたらローソン前にしない?前にミスドですっぽかされたことあるから避けたいんだよね」
エンコーにジンクスを持ち込むところがバカっぽくて笑えるが、テレクラですっぽかされた過去をあっさり暴露してしまうあたりはもっとマヌケだ。やはり、容姿もハズレとみていいだろう。
ローソン前でスマホをいじっていると、見知らぬ女が下からヌッと覗き込んできた。
「こんにちは〜。さっき電話で話した人だよね?」
聞き覚えのあるハスキーボイス。てことは、この人がそうなのか。
「あ、どうも。全然、気がつきませんでした」
なんせ想像していたルックスとまるで違うのだから気づくハズがない。歳は40半ば、いや下手したら40後半ほどに老けており、あれだけアピっていた「いとうあさこ」要素がどこにもないのだ。
例えるなら、売れないロックバンドを辞めて、ロックバーのマスターに転身した昔自慢系のオッサンといった感じか。女としてのルックスは壊滅的といってよい。
悪びれた様子もなく女が言う。
「じゃ行くよ」
向かった先は駅からほど近い小ぎれいなラブホで、部屋に入るや、彼女はソファにドスンと腰を沈めた。そのままテレビのリモコンに手を伸ばし、何やら慌ただし気にチャンネルを切り替えている。
咥えたばこで煙をくゆらす、ロックっぽい仕草をキメながら、彼女は競馬チャンネルを観はじめた。ちょうどレースが始まる直前で、ホッとした様子で声をもらす。
「よしよし、間に合った」
「馬券買ってるんですか?」
「そう」
「競馬好きなんですか?」
「たまにパチもやるけど、ギャンブルはやっぱ馬かな。蒲田で生まれ育ったから先輩連中にイチから叩き込まれたのよ」
「いつの話ですか?」
「中学。親のサイフから金パクったり、カツアゲしたりしてよく大井(競馬場)に行ってたよ」
ほう、ずいぶんとヤンチャなJCだったようで。
「ギャンブルは一通りやったけど、馬だけはやめらんないね。もう何百万突っ込んだかわかんないよ」
饒舌に語る彼女だったが、レースが中盤に差しかかるころにはすっかり無口になっていた。ただ静かに画面を睨みつけるばかりだ。
「うるらぁ!」
先頭の馬がゴールした瞬間、彼女が憤怒の形相で足元のテーブルを蹴飛ばした。よほどの力だったのたか、テーブルは元の場所から1メートル以上も移動している。
恐る恐る話しかけてみる。
「負けちゃったんですか?」
彼女がハッとしたようにこちらを向いた。
「…ああ、ごめんね。2万分買ってたから熱くなっちゃった」
「残念でしたね」
「ったく競馬なんてやるもんじゃないね。あーあ、蒲田なんかに生まれ育ってなければなぁ。おかげで人生マジで狂っちゃったよ」
不良になったのも競馬にハマって止められないのもすべて蒲田が原因だと考えているらしい。単に自分の意思が弱いからでしょうに。よそ者は知らないんだよ、蒲田の闇を
その後、アンチ蒲田さんが立て続けに2本タバコを吸い終えたところで、風呂に入ることに。
裸になり、髪を後ろに結んだ彼女はマスター風から、ただのポッチャリおばちゃんに変貌している。ドス黒い乳輪と垂れた乳がなんとも物悲しい。
脱ぎ終えたパンツから彼女がナプキンのようなものをはぎ取って投げ捨てた。同時に股間の方からうっすらと酸味がかった不快臭が漂ってくる。
「もしかして生理ですか?」
「違うよ。今日はオリモノが多いからシートを貼ってるの。アタシってそういうのに気をつかうタイプなんだよね」
気をつかえる女なら、汚物のついたシートを客の前で投げ捨てたりはしないと思うのだが。
「ところで、普段は何の仕事してるんですか?」
一緒に風呂に浸かりながら尋ねると、妙な答えが返ってきた。
「リサーチャーだね」
「なんですかそれ」
「飲食店に行って、店員の態度や食べ物の評価とかをすんの」
覆面調査員のことを言ってるようだが、そんな仕事でメシが食えるとは思えない。となると主収入はワリキリか。
「ご結婚は?」
「してない。シングルマザーってやつ。中2の息子がいるのよ」
「へえ、それくらいの歳だともう生意気なんじゃないですか」
「そうなのよ。最近は口ごたえばっかりしてくるし、大変よ」
言いながら、アンチ蒲田さんがうなだれる。
「この間さ、家に帰ったらタバコ吸ってやがって。ぶっ飛ばしてやろうかと思ったら逆に押さえつけられちゃって」
「大丈夫だったんですか?」
「そんときはね。でも最近は万引きで捕まったり、変な友だちともつるんでるみたいだし心配なんだよね。クスリとかに手を出さなきゃいんだけど」
「まだ中学だし、クスリは心配しすぎでしょ」
「バーカ、ウチらどこに住んでると思ってんだよ。蒲田だよ?」
急に口調が荒くなった。
「よそ者は知らねーんだよ、蒲田の闇を。街を歩けばシャブ中とかウリやってる女とか、そんな薄汚いヤツばっかなんだから」
上から目線でボロクソに言ってるが、たぶんこの人は、いまなぜ自分がラブホにいるのかを忘れているのだろう。
「それにしても蒲田ってそこまで治安の悪い街なんですか? シャブ中がうようよいるとか、あんまりそういうイメージないなあ」
「いるよ、いっぱい! 私だって昔はシャブいじってたしさあ」
…頭痛がしてきた。私の顔見てると気が散るでしょ?
風呂を出ると、アンチ蒲田さんが何やらいそいそと動き始めた。照明の明るさを調節し、ミネラルウォーターをベッドサイドに。そして最後に、テレビのリモコンを手渡してきた。
「これで自分の好きなAV流してくれる?それ観ながらだとイキやすくなるでしょ?」
つまり「穴は貸すから性的興奮はAVでお願い」ということだ。そのオナホール的スタンスは、きっと長年のワリキリ経験の末にたどり着いた、もっとも合理的なプレイ手法なのだろう。たしかに、こんなおばちゃんを見ながらでは興奮しづらそうだ。
お言葉に甘えてギャルものAVをチョイスすると、それが合図のようにフェラが始まった。吸引力だけがやたらと強いバキュームフェラで、あまり上手とはいえない代物だったが、目の前のAVに集中しているおかげでチンコはむくむくと大きくなっていく。
チュパッ!と豪快な音を立て、アンチ蒲田さんがチンコを口から離した。
「もう入れたい?」
「そうですね。入れましょうか」
「オッケー」
仰向けにゴロンと横になる彼女。その顔にはバスタオルがかけられている。なんだ?
「AVに集中していいよ。私の顔見てると気が散るでしょ?」
ここまで気が利くと逆に恐縮してしまうが、ありがたいのは事実。よし、さっそく挿入しちゃえ。濡れやすい体質なのか、ロクな愛撫もしていないのに、チンコがヌルっと膣にのみ込まれていく。
そのまま腰をグラインドしたとき、バスタオル越しに奇妙な音声が漏れてきた。
「おふぇっ! うぐぅっ!」「…どうかしましたか?」
「いいの、続けて。き、気持ちいいの」
「はい」
しかし、グラインドを再開した途端、また同じ声が。
「んぐぅっ! うふぇっ!」
まるで人が腹を殴られたときに出す声にそっくりだが、一応、これでも喘いでいるようだ。
「おふっ!うんぐっ!気持ちいいよ!い、いつでも! イキたくなったら…うふぇっ!
だ、出していいからねぇ〜〜〜うんぐぁっ! わ、私も、もう…うがぁ! い、イッちゃうと思う。ああ、んぐぐっ!」
だんだんとエスカレートする喘ぎ声に音声がかき消されて、AVに集中できない。あーあ、せっかくバスタオルで顔隠してくれても、これじゃまったく意味ないよ。
それでもどうにか射精までこぎつけ、すっきり気分でホテルを出ることに。
別れ際、アンチ蒲田さんがスマホを見ながら深いため息をこぼした。
「どうしたんですか?」
「息子からいまLINEが来て、今晩、友だちの家に泊まるから帰らないだって。明日、学校あるのに。ホントに蒲田のガキどもってロクなもんじゃないね」
息子さんにはまっすぐに育ってほしいと願うばかりだ。たとえ母親が元シャブ中の現役ワリキリ嬢だったとしても。
2人目今現在の新小岩のテレクラはどんな女がやってくる?

東京・新小岩の駅前は年末らしい活気に満ちていた。両手に食材を詰め込んだ袋を下げて、いそいそと歩く人々があちこちで目につく。これから家に帰ってお節料理の準備に取りかかるのだろうか。そんな幸せな光景に背を向けるように目的のテレクラ店へ。
店内には50代のおっさんスタッフが1人ヒマそうに立っていた。こんな年の瀬に仕事だなんてご苦労なこった。見渡したところ、その他に人影は見当たらないが、物音が聞こえてくるあたり、客は何人か個室内にいるっぽい。同志の存在に少し心がホッとする。
部屋に入って缶ビールを飲みながらAV観賞をしていると、さっそく最初の電話が。
「もしもし、こんにちは。どうもはじめまして」
丁寧な第一声に、落ち着いた女性の印象を受けた。声からして30半ばってとこか。まずは軽く会話しておこう。「どうもはじめまして。テレクラはよく利用してるんですか?」
「うーん、ときどきですかね。何で?」
「俺も人のこと言えないけど、今日って大みそかでしょ。そんな日にテレクラに電話してくるってどんな人なのかなって」突然、大声が響いた。
「はっ、バッカじゃねーの?んなの、カネがいるからに決まってんじゃんよ!!」
うわ、びっくりした。急にどうしたんだ?
「…あ、えー、てことはワリキリ希望ってことですよね?」
恐る恐る尋ねてみる。彼女は元の落ち着いたトーンに戻っていた。
「はい、そうです。年末だし、いろいろとお金が必要で。今から会えますか?」
「大丈夫ですよ。俺もそういう人を探してたので」
彼女、ナツミさんは38才のシングルマザーで、普段は実家で暮らしながらパチンコ屋のバイトをしているらしい。希望額はホテル代別の1万3千円だ。
「実は明日も出勤なんです。だから今日のうちにお金を稼げればなぁって」
「なるほど。ちなみにルックス的にはどんな感じです?」
直後、小声で「ちっ、面倒クセー」と言ってから、また何事もなかったかのようにナツミさんが答えた。「たまに森口博子に似てるって言われますね。背は170センチで体重は50キロくらいかな。大丈夫ですか?」小声で悪態をつく女に大丈夫かと聞かれても、抱くのは不安だけなんですけど。が、その申告が本当ならルックスの心配はなさそうだ。
「ヤセのノッポですけど、胸は一応Dカップあるのでそこそこボインちゃんですよ。あ、なんか調子に乗ってすいません!」「いや、そういうアピールなら大歓迎ですよ」
「優しい方なんですね。ありがとうございます!ホントにありがとうございます!」
うーむ、どうにも掴みにくいキャラだ。この人、分裂症か何か?
「で、このあと何時くらいまで大丈夫なんですか?」
「7時半くらいにホテルを出たい感じです。今晩、娘と食事に出かける約束なので」
大みそかは娘と食事か。テレクラ女にも人並みの感覚はあるらしい。
「わかりました。どちらに向かえばいいです?」
「新小岩駅の中の券売機前でどうですか。ショートカットでベージュのコートを着てるからすぐわかるかと」待ち合わせ場所には、小じわの目立つ中年女が立っていた。
「ナツミさんですか?」
「あ!来てくれてありがとうございます!」
ニッコリ微笑むその顔は、森口博子というより、中村玉緒を10倍下品にしたような面構えで、歳も軽く45は行ってそうだ。が、これまで散々バケモノどもを相手にしてきたからか、それでもマトモに思えてしまう自分が悲しい。
「それにしてもオニーサン、かっこいいですね。芸能人のあの人に似てますよね」「誰ですかね」
「ほら、あの、よくコマーシャルとかに出てる人。そのジャケットもかっこいいし、服屋の店員みたいですね」
場を盛りあげようとする気持ちからなのだろうが、ここまで適当なお世辞もそうはない。
「こんなかっこいいのに、ほんとに私でいいんですか?」
「大丈夫ですよ」「私みたいなのですみません。ホントにすみませんね」
うっとうしくなってきたので、話を強引に断ち切る形で尋ねてみる。
「あの、ホテルはこの近くにあるんですか?」
「…は?んな話してねーだろっつうの、今!」「……」
ア然としていると、なおもナツミさんは怒り顔で「信じらんねえ」「イモかよ」といった悪態を俺にではなく、地面に向かって吐き捨てている。もし情緒不安定が競技化すれば、オリンピック王者として10年は君臨できるレベルだ。とはいえ機嫌を直してもらわねば先に進まない。とりあえずここは謝っておこう。
「すいません。なんか俺、気に障ること言ったみたいで…」
「あ、いえいえいえ!こちらこそワッとなってすいません」
今度はこちらが恐縮するくらいペコペコと謝っている。
「あの、気を悪くしないでほしいんですけど、いつもそうやって急にカッとなるんですか?」
「そんなことないです。ちょっとね、思ってることをついね、私、ウソがつけない人だから。ホントにすいません!」
ウソとかそういう問題じゃないだろうに。こんな調子じゃ日常生活もきっと大変だろうな。ホテルに入り、さっそく風呂に入ろうと服を脱ぎかける。と、ここでまた、情緒不安定さんから鋭い声が上がった。「あれ!?あれ!?すごいね!約束も何もあったもんじゃないね。タダで遊ぼうっての!田舎モンってやだね〜!」 
約束したカネをまだ支払ってないことに対する不満らしい。おっと、これはイカン。
「あっ、ゴメン忘れてた。1万3千円でしたね。はいどうぞ」
彼女は賞状を受け取るような姿勢でそれを受け取る。
「はい、すみません。どうもありがとうございます」
何なんだ、この人。振れ幅が広すぎるんですけど。機嫌を取り戻した情緒不安定さんが脱衣スペースで服を脱ぎはじめた。スリムだが、いかにも40女らしい、たるみきった裸体だ。
「いい体型してますね。全然お腹とか出てないし」
「そんなことないですよ。私、昔から自分に自信が持てなくて。学校でもよくイジメられたしね」
「そうなんですか」「うん。でも本当に怖かったのは父なんです。とにかく厳しくて暴力も振るう人だったから人の顔色を見るのがクセになっちゃって。…あ、こんな話、楽しくないですよね。すいません」腑に落ちた気がした。このオカシな性格は、きっと父親の過度な抑圧が大きく影響しているに違いない。シャワーを終えてベッドへ。ゴロンとあお向けになる俺の股間に、彼女がゆっくりと顔を近づけてくる。「私、エッチィこと好きなんです。興奮してきちゃったぁ」
ジュボジュボと音を立てる、プロっぽいフェラが始まった。エッチィことが好きと言い切るだけあって、プレイが始まってからの情緒不安定さんは精神がしっかりと安定し、フェラ以外にも、乳首舐め&手コキ、ヘソ舐め、指でアナルつんつんと、いろんな攻めを熱心に繰りだしてくる。たまらず、フル勃起したチンコを股間にぶっ刺した。おりゃ!「あぁ〜、チンコ入ってるぅ。私エッチぃことしてる。あぁ〜」
マゾヒスティックな喘ぎを聞きながら腰をパンパン打ちつけているうち、やがて射精感が。ふう、たっぷり出ましたなぁ。「じゃあ、お疲れさんでした。よいお年を」
ホテルの前で別れを告げると、何故か、彼女の眉がピクピクッと引きつった。また何か地雷を踏んだのかと身構えたものの、彼女は何も言わず、軽く一礼して歩き去った。ふぅ。

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