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【概略・全文は上記記事をお読みください】
町でナンバをする企画である。奇をてらった策や特別な方法を用いるでなく、ただただ女性に声をかけセックスに持ち込まんとする、ごく普通のナンパルポである。
はぁ?佐藤なんぞに関心はないぞ。成功しようが失敗しようが、それがどうしたよ。これが普通の反応のはずだしそうでなければならないと私も思う。理由を説明したい。そもそも何故このような企画が立ち上がったのか。佐藤がナンパするとは、いったい何を意味しているのか。
赤澤慎吾なのである。以前、彼自信も原稿内で触れたように、本誌連載どうしてこんなにモテないんだろうを執筆する赤澤の元には毎月、非難のメールが大量に届いている。『一生そうやってろ』
『何様のつもりだ』かくもすさまじきバッシングは他の連載には見られないものであり、編集部も、何が彼らをそこまで激怒させるのか原因を推理しやった。出た結論は、近親憎悪だった。自分も女に縁がない。モテない。不遇の日々を送っている。だからこそ、赤津の分をわきまえぬ行動にイラ立つのではないか。失敗を笑するのではないか。誤解かもしれぬ。しかし赤津批判のほとんどが匿名投稿
という事実、あるいは言葉遣いの乱暴さなどからも、自らのことを棚上げし、安全圏から弱い者イジメをしている卑怯な印象はぬぐえない。じゃあオマエはモテんのかよ、という問いかけに、彼らは答えられるだろうか。とまあ、こういったことが編集会議で論じられ、ならば批判者の代表格である男に、赤澤と同じようにナンバをさせてみればどうだろうかとの案が出たのである。罰としてではない。自ら行動を起こす勇気のない読者だって、《いざ自分がやってみればどうなるか》は知ってみたいはずだ。代表者が体を張って一部始終を報告すれば、身につまされる思いで読んでくれるに違いない。もうおわかりだろう。その代表者として選ばれたのが赤澤の担当編集者であるこの私なのだ。

強制的に実験台とさせられることになったガチナンパレポート。以下に、その時間のすべてを報告しようと思う。なお、リポート時の気に合わせ、ここからは一人称を「俺」に変更させていただく。

無視が続き、周囲の視線が恥ずかしい

まず最初に、俺の街頭ナンパ経験についてだが、正直なところほとんどない。酔っ払った勢いで声をかけたことがある程度で、それも友人と一緒のふざけ半分だ。ナンパなんかしなくてもセックスする相手はいるんだと、強がりを言うこともできるが、それは闘わない者のエクスキューズだろう。ヤレる相手は。多いほうがいいに決まってるのだから。

企画が決定した9月上旬、木曜日の夜、地元の高田馬場駅周辺でナンパを試みることにした。

ターゲットは、ある程度の容姿を兼ね備えていることが条件だ。オバチャンでもオデブちゃんでもいいなら、本物のナンパとは言えまい。夜11時。まだ人気の残る駅前で、予想どおり最初の難関にぶつかった。足が動かないのだ。皆さんも想像してほしい。いざ、ー人きりで町に立たされ、女性に声をかけることができるだろうか。どの角度から接近し、どう呼び止めるのか。振り返ったときにぶつける話題は何だ。が、ここは「こんな段階で何もできなければ恥ずかしい」という思いが勝った。なんでもいいからヤケクソで声をかけてやろう。

ー人目。OL風を追いかけ
あきらかに迷惑そうな顔をして無視。馬っ鹿じゃないのっとでも言われた気分になり、さらに落ち込む。また意味もなく携帯を取り出し、どこかにかけるフリをしてみた。どうやら俺が恥ずかしいのは、断られた事実そのものではなく、その様子を見ているであろう周囲の人間に対してのものであるようだ。

出発寸前の電車に間一髪で間に合わなかったとき、悔しさを悟られまいとおかしな行動を取るのに似ている。

「ちょっとごめん」無視

軽く落ち込んだ俺は、周囲の視線への照れ隠しか、意味もなく携帯を開いてみたりする。なんだこの行動。

2人目。相当に可愛いミ二スカに接近。

「ねえ、ちょっといいっ」

これも無視。続いて3人目。正確には、声をかけて3人目。スタイルのいい学生風が目の前を横切った。しばらく追跡し、人通りが少なくなったところでアクション。

「ちょい、こめーん」「はい」

「俺、今帰るとこなんやけどね」「はい」

無視されない。横に並びながら話を続ける。

「家に帰ったところで、何もすることがないんよね」「はは」

「だから君と一緒に飲んで帰ろうかと思い立ったのよ」「明日、早いんで」

「俺も早いんや、偶然やね。偶然祝いに30分だけ飲むことにしよか」

「ハハ、偶然祝いですか」

オモロイやないか俺。笑わせてるやん。人間ヤケクソになれば、これぐらいのことはしゃべれるもんなんだな。

「じゃあー杯だけなら」「オッケー。逆にあんまり飲まれるとおごる金ないし」

こんなに早く食いついてくるとは。読者代表とは名乗ってみたものの、ここまでやれる読者クンはそうそういないんじゃないのっニンマリ。

とはいえ過去の連載をよんでもわかるように、ここまではしょっちゆうやっていることだ。喫茶店だの焼肉屋だので、いつもくだらない会話を交わしているじゃないか。おっと、くだらないなんて書いてしまった。俺は実のある会話ができるのか。

「何もせーへんよ。当たり前やん」近くのバーに入りビールで乾杯した2人ではあったが、彼女はほとんどグラスに口をつけなかった。

名はミキ(仮名)。顔はそこそこの部類に入れてもいいと思う。早稲田の文学部に通う3年生で、そろそろ就職活動を始めようと考えている時期だという。

「ふーん、どんな業界狙ってんのっ」「一応、旅行関係とか」

「いいね、楽しそうやん」

以降の会話を書き込んでもしょうがないし、覚えてもいない。ただ、すべてのやりとりは彼女の就職活動についてに費やされた。耳スマすれば、これもくだらない会話になろう。しかし、当人にとって深刻な話題というのは、時間を忘れさせるものなのか、約束の30分はとっくに過ぎ、バーに入ってからあれよあれよと3時間も過ぎていた。

さんざん奮らされてバイバイー定番パターンが頭をよぎり、俺はある行動に出た。

「場所変えて話すっもう一軒知ってる店あるし」

外に出た瞬間に、自然と手をつないでみる。酔っていたからこそできたのだろう。

「たぶん、どこ受けても受かるよ。しっかりしてるし」

「そうですか。ありがとうこざいます」

「俺なら採用するな。あ、店閉まってるわ。残念」「え、そうなんですか」

「しょうがないし、うち行こか。何もせーへんよ、そんなん当たり前やん」

「じゃあ信用します」

自画自賛がみっともないことは、よくわかっているが、それでもやっぱりこの展開は
褒めてあげたいところだ。

渋谷でナンパする赤津が偉く思えてきた従来のナンパルボは、ここで小見出しが入るとセックスシーンはしばしば省略される。部屋に付いて来たのだからセックスは行われて当然であり、くどくど書く必要はないとの判断からだ。しかし今回の場合、ラブホに入っても何もできない赤津の例との比較のため、いよいよという段になったときのあれやこれやも記しておかねばならないだろう。あれやこれや。実はさほどあるわけでもない。隣に座り、ズブズブとディープキスをかまし、そのまま押し倒して、前、後ろ、上と体位を組み替えただけのことだ。部屋で2人きりになってしまえば、大方の男性はこれぐらいのことはできてしまうはずだし、現に俺にもできた。この件に関しては、赤澤の失態を叱責する資格を得たと言えよう。ていうか、もうちょっとわかりやすく言うと、俺モテるんじゃんってことだ。

しかし他の編集部員によれば

「高田馬場なんて庶民的なとこじゃダメでしょ」となるらしい。赤津の主な戦場である、ナンパ激戦区の渋谷で結果を出してみろ、だと。ふーん、そんなに違いがあるもんなんかい。

翌日、金曜の日中にパルコ前に立った俺は、あらためて自分の器の小ささに気づかされた。渋谷の雑踏に立って女を品定めするというそれだけの行為が気恥ずかしい。いい歳こいたオッサンが何やってんだと白い目で見られているような気になる。あちこちに1人きりで歩く女性がいる。買い物袋をブラ下げショーウインドウを眺める彼女らの中には、金を払ってでもお相手してもらいたいほどの美女もいる。赤津はああいう女にも声をかけているのだろうか。

再び想像してほしい。目の前にモデルのような、上下10万円くらいしそうな洋服を着た女がいるとして、そして自分は貧乏学生のような格好が馴染んだ男だとして、さて、何と声をかけるっ声なんか出ません。もう最初から負けてるというか、どうせ相手にしてくれないだろなと卑屈な気分になってしまうのだ。

とはいえ、声すらかけられませんでしたでは立つ瀬がない。タメ元で突進せねば。

「ちょい、ごめーん」無視。「ちょっと、いいっ」・ハイ無視。

「すいませーん」また無視。3人に挑んだ時点で、もうノックアウトされた。しつこく粘る気力も沸いてこないし周囲の視線も気になってしょうがない。負け犬そのものである。この町でナンパを続けている赤津が、急に偉く思えてきた。パルコ前やセンター街で物怖じせすに声をかけ、喫茶店でお茶を飲んでいる、それだけでも実はスゴイことなのではないか。俺にはできない。悔しいけれど、負けだ。

コンプレックスを見せ付けられた翌土曜日は、赤澤が今月号で挑戦した六本木のクラブ「エーライフ」に出向いた。果たしてクラブ初体験の35才はどこまで戦えるのか。結論からいえば、何もできなかった。周囲の独特の雰囲気に終始ビビりまくった。入店時から言い訳ができあがっていた。今ここで声をかけたところで、どこへ連れ出すこともできん。踊りに来ている彼女らが、あっさりラブホなりに付いて来るわけなかろう。だからどれほど力ワイイ子がいても声はかけられなかった。

前述の言い訳以外にも、本音を言えばどうせ相手にされないだろうとあきらめが入っていた。いかにも遊び人っぼいイケメン連中を敵に回して、この俺に何ができよう。あんなヤツより俺のほうが《本当は》いい男だと、まさに赤澤の書くようなことも内心では思ったりする。なのに態度は弱気そのものだ。

それが証拠に、ヒマそうにしている相当にブサイクな子には「一緒に飲もうか」と気安く話しかけることができる俺。美人には卑屈になり、ブサイクには尊大に。意識下に隠されたコンプレックスをはっきりと見せ付けられた一夜だった。

またも馬場の女が部屋にやってきた。たいしたことないな。初日がフロックだっただけで、やっぱり俺もモテないんか。今後は謙虚に生きていこう。タメ息交じりに家路に着く途中、地元の高田馬場でー人歩きの女性を発見した。OLだろうか。

「ちょい、ごめーん」
「はいっ」「俺、今帰るとこなんやけどね」

一昨日と同じ台詞を口にし、またも「一杯だけ」の約束でバーに引っ張っていった相手は、26才のOLマイコだった。ルックスは70点としておこうか。正直、ナンパされた勢いでセックスをする年齢でもないだろうと、半分あきらめていた。いくら会話が盛り上がったところで、いざとなれば軽くかわす術くらいは持っているだろうと。ところが、これまたマイルームに来ることになったのである。きっかけはドラマ北の国からだった。

「俺この前、ビデオで初めて見たんよ。宮沢りえの出てる回」「最終回は見たっ」「ううん」「あれ見なきゃダメだよ。泣けるんだから」「じゃあ借りてウチで一緒に見ようか」「うん」まさかOKが出るとは思わなかったし、部屋に来てからもしばらくは様子見に徹したのだが、上下巻の2本目をセットするころには、2人とも全裸だった。今回もルールに従って、ちゃんと書いておこう。セックスはもちろんした。おかげで泣きどころを見逃した気がするのだが、やむをえない
佐藤よ、俺はモテるんだぞとでも言いたいのかネ?、そういっ部分も多少はある。40%くらいはある。3日で2人ゲットしたんだから、それぐらい思っても許されるはずだ。残りの60%は、どうやら俺は地元で大きな態度に出られるだけの内弁慶に過ぎないとの思いだ。ともかく俺は動いた。赤澤ももちろん動いている。次は君らの番だ。

女の子の自転車と自分の自転車をチェーンロックしてナンパ

自転車置き場でタイプの女の子を見かけ、本人がいなくなったすきに、女の自転車と自分の自転車をチェーンロックで繋ぎとめたとする。そして、『誰かのイタズラだと思いますので工具を取ってきます。もし戻ったら連絡ください! ×××(自分のラインID)』と、走り書きしたメモを女の子の自転車に貼り付けたらどうなるか――。
 俺はこの方法で、大勢の女の子から連絡先をゲットしただけでなく、2人の女の子とセックスにまでこぎつけたことがある。数々のナンパを試したモノならば、そんなことをやっても上手くいくわけがないと思うかもしれない。女の子と二言三言、言葉を交わせたとしてもそこからどうナンパにつながるのかと。その指摘は的外れじゃない。
しかし、ある条件を兼ね備えている女性に限り、この作戦は見事にハマるのだ。俺がいつも利用している駐輪場は、個別ロック式ではなく、エリア内に何台でも停められるタイプだ。狙いは朝の通学通勤時か夕方の帰宅客が多い時間帯で、できれば新入生や新社会人の多い4月から6月がベストだ。通勤時間に気になる女の子を見かけたら、その子が停めた自転車の横に自分の自転車を停め、100円ショップのチェーンロックで、自転車の前輪部分同士を繋ぎ止めてしまう。そして先述のメモを女の子の自転車のハンドル部分に結びつけて、仕込みは完了だ。夕方過ぎ、帰宅途中の女の子が自転車の異変に気付き、メッセージを読む。そのうちの9割からラインが届く。大抵は「手紙見ました」といった簡素なメッセージなので、すぐに『いま工具を手に入れて、そちらに向
かってます。待っててください』と返し、現場に急行する。
用意する工具は、ワイヤーカッターだとやりすぎ感が出るので、金槌とドライバーのみ。100円ショップのチェーンロックはダイヤル部分を金槌で叩けば簡単に割れるので、急場の演出に都合がいいのだ。もしメッセージが来ない場合は、警察に相談でもされたら面倒なので、丸1日だけ待ってみて、チェーンロックを解除だ。息を切らし、いかにも急いで来たという体で女の子と対面したら、金槌でロックを壊し、会話スタートだ。「すみません、ありがとうございました」
「しかし、何でこんなことされたんだろうね。こんなにいっぱい自転車があるのに」このときの女の子の反応は大抵2パターンに分かれる。ひとつは、「ホントむかつき
ますよねー、誰がこんなことしたんだろう」などと怒る子。
もうひとつは、地味な女の子に多い、怯えたりオドオドした感じのタイプだ。前者はきっぱりあきらめることにし、後者の場合はここで不安を煽る。
「何か心当たりないの? 誰かに恨まれたりとか、ストーカーみたいなのかもしれないし」「ああ…いるかも…」
こんな感じで、ストーカーという言葉に反応する子が結構な割合でいるのだ。
「そっか、心当たりがあるんだね。お家はどの辺なの?近くまで送ってってあげるよ」「そんな…大丈夫ですよ」「でも犯人が近くにいるかもしれないよ?」
こうして自転車を並走し、彼女の自宅方向へ。あまり近所まで付いていくと逆に気持ち悪がられるので、ある程度の場所で別れた方がいい。すでに連絡先は手に入れてあるので、ここではあまり深追いしないことだ。帰宅したらラインでメッセージを送る。ここで俺が演じるべきキャラは「ストーカー被害に困る女の子を心配してあげる優しい大人の男」だ。『今日は驚いたけど、無事に鍵が壊せてよかったね。ストーカーの話は心配だね。俺にできることがあれば何でもするから、遠慮なく言ってね』こんな感じのメッセージに返信があり、なおかつ以降のやりとりが継続するようならば、心当たりがあるというストーカーの話を聞き出し、親身になって相談に乗ってあげる。ストーカーといってもたいていは好意のない男性からメールがよく来るといった他愛のないものなので、アドバイスも難しくはない。頃合を見計らい、相談ついでにご飯でも奢ってあげるよ、という流れで、後日のデートに持ち込んだのが、過去2人との成功パターンだ。

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