妙な発想だが、コンピュータ上に、現実にはまったく実在しない架空のグルーブが急増しているのをこ存じだろうか
ネットサークル、ネット合宿、ネット国会等々、極類形態は様々だが、中でも最も奇妙奇天烈なのが＂ネット暴走族＂なる集団だ
『r北海道から沖縄まで、全国各地にメンバーが軽く100人以上はいたでしょうね」
今回取材に応じてくれたネット暴走族の元メンバー、K氏は語る。
「コレは、新入りが入った時のやり取り記録ですね」
彼が携帯のメール画面を差し出す
今日からお世話んなります。気合じゃ誰にも負けないんで夜露死苦
期待してっぞ、新人ー夜露死苦ーW総長
喧陣は負けたらアカンで 大阪特攻隊長
勇ましいことばが並ぶが、メンバーは、一度も集合したこともなければ、一緒に暴走したこともない。あくまでネツト上だけのイメージ暴走族である
K氏が別の画面を差し出す。
【今夜。時から●街道爆走こいちゃうからー】
【了解ーコッチは国道●号ガンガン行っちゃうよおー一緒に走ろうぜいー】
【こっちも一緒に集団爆走じゃー】
【今日、ョソの族と操めちゃってよおー明日シメっから協力してくれや】
【了解、一気に叩き潰そうぜーうちらナメたら、どうなるか思い知らせたるわー】
全国各地のメンバーが携帯メールで連絡を取り合い、全員で集団暴走している気になってるようだ。
ただ、驚くべきは、ここに本物の暴走族が、ー人もいない点だ。
K氏によれば、所属メンバーは全員バイクはおろか、免許すら無いという。
「大半はいわゆるアキバ系ですね。学校やクラスで、バカにされてイジメられてるから、その反動というか、もう一人の強い自分を作りたいんでしょうね」
K氏自身も、学校ではイジメの対象で、深夜、イメージ暴走の中だけで、威張り散らし、ストレスを発散していたのだという。
このネット暴走族、元々は広島の学生2人組が作ったものだという。当人たちはあくまでジョークのつもりだった、入会希望が気がつけば本物もビックリの人数に膨れ上がったらしい
「中には、自分は本物の族に所属してるって、勘違いして喜んでた子もいたでしょうね。上下関係も厳しくて、へタなことしたらヤキを入れられそうな雰囲気さえありましたよ」
とはいえ、あくまでネット上のお遊び。
実際にはトラブルなど起きそうにないが、加熱するあまり、時には事件も起きた。
東京メンバーと、埼玉メンバーが、些細なことから、喧陣を始めたんです
当初はメール上で中傷し合うだけだったが、日を追うことに工スカレート。ついには、両者が某公園に直接出向いて、直に喧嘩しよういっところまで発展する
【夜7時なー逃げんなよ】
【生きて帰さねえぞ】
果たして、集まったのは東京2人と埼玉3人の計5人
しかも、全員がメールの語気とは正反対のアキバ集団だった。むろん喧嘩などできるワケもなく、何とお互いにメールで謝罪し、一口も口をきかないまま、和解したらしい。
しかし、話はここで終わらない。
「その公園は、本物の族の溜まり場だったんですよ。そのときもアキバ系が5人でイジケてるのを発見され、カツアゲに遭ったみたいです」
結局、通行人の通報で管察が駆けつけ、事なきを得たが、この一件で活動は急速に盛り下がっていく。
「5人が讐察に事情聴取されて、自分たちのことを洗いざらい話したみたいなんですね。そのことをポクはメールで知ったんですが、急に恥すかしくなって、抜けることにしたんです」K氏の話では、現在も、小規模ながら、ネット暴走族、ネットギャングなどの不良クルーブ、女の子だけで結成されたレディースまで存在するんだという。本物になれないオタク連中の“成り切り“遊び。何ともショボイ話ではある。
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