同窓会では、今流行の『イジメ』がとんでもない事態を引き起こすこともあります。
幹事に頼まれ、中学同窓会を私自らが担当いたしました。なんでも卒業以来ぶりらしく、場内は活気づいていたのですが、参加者の１人が誰かの噂話を始めてから、様子がおかしくなっていきました。
「そういや、『A』はどないしてるんやるな？」
「あんなもん、死んでるか、便所を駈けずり回っとんちやうか？」
参加者の全員がケラケラ笑い、話はさらにエスカレート。先生まで悪ノリする始末です。
「今でもウンチ漏らしてるんちやうか。未消化のゴマが出てきた時は、ホンマにビックリしたな」
「アレはワタシら女子の間でもウケたわぁ。ほんまダニみたいで気分悪かったもん！」
なるほど、それで『A』か。
受付者名簿を見ると連絡はついている様子だが、これでは本人、とても参加はできないでしょう。
と、それから10分ぐらいが経過したときでした。
パタン
会場の扉が勢いよく開き、１８０センチはあるオールバックの大男が入ってきました。マオカラースーッの上にロングコート。明らかにソッチ系の方です。
「だ、誰ですか？会場間違ってますよ」
「Aや遅なったなぁ」
サングラス越しに、全員を晩みつける大男。一瞬に空気が張り詰めました。
もしかして…。
「A…？アレが…」
消え入るような咳きが誰からともなく、聞こえてきました。どうやら、A御本人が大変貌を遂げ、クラスに戻ってきたようです。
大慌てでA氏にドリンクを渡し乾杯。凍りつく会場の中、席に案内すると、１人の参加者が彼に声をかけました。
「や、Aくん、久しぶりやね…」
「おいおい、オレは『A』やろ？誰と思うてんねや！」
「ハ、ハハ…。今、…何やってはるの…？」
「談合屋じゃしょーもないこと聞きさらすな、ボケッ」
そう言って脱いだジャケットの下のシャシに、刺青が浮かび上がりました。コワー
「Bは、今日は来てへんのか」
A氏が怒鳴ると、遠くの席から１人の男が手を上げます。
「ぼ…僕…やけど…」
「お前か！お前だけは絶対殺したるからな。家もわかつとるんじゃ。家族ごといてもうたるからな。おい、そこのジジイ、ワレもじゃ」
ご指名を受けたのは、当初話題の中心にいたB氏と先生でした。半ベソになりながらガクガク体を震わせています。気の毒ですが、かける言葉はありません。
その後、会では、ビンゴゲームや思い出サイコロトークなどが行われましたが、当然ながら一切盛り上がりません。会場にはA氏の怒号が響くばかりです。
さらに閉会後、ホテルの駐車場でA氏がB氏の車と接触事故を起こしました。たぶん意図的だったのでしょう。
「４課でもなんでも呼べや」
そう怒鳴ると、彼はB氏を自分の車に乗せ、ドコかへ連れ去って行きました。
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