
恋愛沙汰に関して言えば、ストーカーとしか思えないヘヴィなお客様もいらっしゃいます。
よほど想いを伝えたいのでしょうか。こうした方は男女に限らず自ら幹事となって主催し、ときにトンデモナイ挨拶をしてしまいがちです。
とりわけ強烈だったのは3年前の女性幹事です。
南海キャンディーズ・しずちゃん似で、乾杯の音頭の後、分厚いノートを取り出しました。
「私は、高校時代から、ずっと高橋オサム君が好きでした…」
突然の告白に、会場は沸き、歓声や指笛が鳴ります。ご指名を受けた高橋さんは場の中心に立たされ、初めこそ、素直に微笑んでおりました。
が、しかし…。
「私は高橋君を思い、ずっと日記をつけておりました。…少し聞いてください…」
〈○月○日。アナタのことばっかり考えて、アナタが2年前から住んでいる○○町のマンションに引っ越しました。ここならアナタも○○区の会社まで近いからいいよれ。これで、私の家から目と鼻の先。家を出る7時加分頃には窓越しに『いってらっしやい』・帰ってくる頃には『お帰りなさい』…〉
し、しずちゃん…。常軌を逸した内容に、会場はシーン。高橋さんの困惑する顔を尻目に、彼女は続けます。
〈○月○日。今日は晴れ。アナタの白いイプサムでいっぱいドライブに連れて行ってほしいな。でも、ワタシはアナタを待って結婚もせずにいるのに、日曜日に楽しそうに家族で出かける姿を見ると、たまらなくなって、ぶち壊してやりたくなるよ〉
薄ら寒い怨念朗読が延々。
高橋さんの顔は青ざめ、司会役のスタッフも場を取り繕うのに必死です。が、結局、その努力もむなしく、会はお開きとなりました。
このときばかりは、会場のホテル営業マンも私に慰みの声をかけてくれましたが、逆に彼らを激怒させてしまうケースもあります。
同窓会サービスは何も学校の同窓生だけを対象にしたものだけではありません。趣味のサークルや団地の自治会にも開放しており、時にはそこにトンデモない団体が紛れ込むこともあるのです。
過去、最もキッかつたのは『日本芸能研究会(仮名)』という、一見、マジメそうなサークルの連中です。彼ら、趣味同様に性格が暗いのか、いざ飲み会が始まってもボソボソと談笑し、特別、盛り上がる様子もない。
あまりに見所がなく、喫煙ロビーでタバコを吹かしていたら、ホテルスタッフが血相を変えて飛んできました。
「ちょっと、弓場さん.あの人たち、何やってるんですか」
急いで会場に戻ると、スライドショーに気色悪い映像が映し出されておりました。全身に針を刺されたタトゥオンナにウンチを噴射するスカ婦人。どういうこっちゃねん『日本芸能研究会』の正体はSM愛好家の集まりでした。数年前に解散してから今までの作品を見せ合い、さらには実演ショーまで企てていたというのです。即刻、会の中止を申し出たのは言うまでもありません。
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