
先日届いた読者ハガキの1枚に、次のような一文が添えられていた。
埼玉県に◎◎温泉というところがある。ここの現状をリポートせよ
聞いたことのない温泉。何のことやら意味不明だが、ネットで調べたところ、驚くべき事実が明らかに。都心から最も近い混浴温泉の宿らしく、数年前から露出マニアや変態カップルたちが怪しげな行為を繰り拡げているというのだ。
マニア専用の掲示板には、そのときの様子を撮影した写真が数枚掲載されている。どうやら、女体鑑賞を目的とした大勢の男性客も詰めかけているようだ。
一方、何も知らずにそこを訪れた夫婦やカップルたちからは
『女性にはお勧めできない温泉』『迷惑、変態男のいる温泉」などと叩かれ、覗き目的の男どもは、水
辺に集まるワニに例え『バカワニ』、『キモワニ』などと棚撤されていた。
露出カップルと、変態ワニ男性の集まる混浴温泉。
実態を確かめに行ってきます。
幹線道路から脇の小道に入ったところに、その温泉はあった。
畑と林に囲まれた殺風景なロケーションで、広い駐車場には、すでに数台の乗用車とバイクが停まっている。ナンバーは、やはり地元が一番多いが、関東近県から遠征してきた車も何台かあった。
温泉の建物の玄関をくぐると、目の前に長い廊下が伸び、左手には無人の受付。料金表には、入浴や宿泊料金の他にご休憩料として個室2時間1200円と言かれていた。ここをラブホ代わりに使うカップルもいるんだろうか。
「すみません!……ごめんください!」
何度か叫んだ後、奥から子連れの若いお母さんが出てきた
「はい、いらっしゃいませ。入浴ですね、1050円になります」
料金を支払い、彼女の案内で館内へ。廊下を奥に進むと、突き当たりにトイレと宿泊客用の食事部屋。客室に繋がる階段脇を曲がり、洗面所の先に温泉。
その隣には、広さ100畳ほどの大宴会場が休憩所として開放されていた。予想以上に大きい建物だ。
休憩所の一番奥のテーブルで、肉体労働者風の強面男性3人が酒を飲んでいる。入りづらい雰囲気。ひとまず風呂に行くか。
脱衣所の扉には、大量のスリッパが並んでいた。20人以上は入浴しているようだ。
かすかに女性の声が間こえてきた。早くも露出プレイが始まっているのか?急いで服を脱ぎ捨て、風呂場に突入する。
ドアを開けると、巨大な祁子の木が現われた。天井はプラスチック製で、至るところに穴が開き、棚子の木が天井を突き抜けている。オンボロ熱帯植物園といったところか。
その先へ進んだ瞬間、目の前に異様な光景が広がった。
奥の一段高い所に設置された幅5メートル、奥行き2メートルほどの湯船の中に、18人もの裸の男たちが、ギチギチに詰めて座っているのだ。数人でも狭そうな大きさなのに、男たちは2列で向かい合い、隣同士肩をくっつけて浸かっている。
年齢層は20代後半から40代前半ぐらい。重なり合ってよく見えなかったが、湯船の左端に30才前後の女性が2人確認できた
場内が一瞬静まり、全員こちらを一瞥。すぐにまたガヤガヤと会話に戻った。彼らが露出マニアなのか。温泉サークルの集いにも見える。
さらに手前にある広めの岩風呂には、男性3人が微妙な距離を保って浸かっていた。
裸目当てのワニさんか?
ひとまず洗い場で体を流し、手前の岩風呂に浸かってみると、お湯はかなりぬるめの設定で、少し生臭かった。
奥の湯船メンバーをよくよく観察してみると、左端に座る2人の女性を囲むよう、いかにもな皆さんが陣取っていらっしゃった。女性たちとイチャついたり会話してるのは彼らだけで、右側にいくにしたがって、ぽってり体型の中年サラリーマン風や、メガネをかけた細身のオタク風など、女性慣れしてなさそうな顔ぶれになっていく。
最初は皆で湯船に浸かっているので、よほど仲がいいのかと思ったが、それぞれ視線が合わないように女性の方を覗いたり、壁や天井を見たりと、どこかよそよそしい。ひょっとすると、右側の連中は単独ワニ男性かもしれない。
10分が経過しても、誰も動こうとしない。少しのぼせてきたので、岩の上に腰を下ろす。岩風呂の単独3名も、時折岩場に座っては浸かってを繰り返し、なかなか外に出ようとしない。
何かが起こるのを待っているのか。
さらに10分が過ぎたあたりで、軍団がガヤガヤと立ち上がり、我々のいる岩風呂の中を歩いて脱衣所へ向かった。
全裸の女性2人は、いかにもスレっ枯らしな三十路前といった風情で、体を隠すどころか恥ずかしがる素振りもない。腕や胸元、さらにはパイパン処理された恥丘部分にも小さいタトゥが入っていた。顔も可愛くないし、正直、萎えまくりである。
軍団が立ち上がると同時に、右側にいた謎の男性チームも立ち上がったが、脱衣所に向かったのはそのうちの数人だけで、半数以上が岩風呂に場所を移してきた。まだ粘るつもりか。
そんなに女体が見たいのか。
脱衣所でバッティングするのが恐いので、少し間を置いてから上がると、ワイシャツ姿のサラリーマン風が1人で着替えをしていた。話しかけてみるか。
「今日は温泉サークルか何かの会合でいらしたんですか?」
「いえ、僕は仕事終わって1人で来ただけですよ」
「そうなんですか?なんか大勢で湯船に入ってたんで全員お仲間かと思って」
「いや、なんか女の人が来たら、皆でドバドバって感じで。はは」
そういうことらしい。休憩室に戻ると、軍団が奥のテーブルを2つばかり陣取り談笑していた。
単独ワニ男性の中には何名か帰った者もいるようだが、休憩室に戻ったメンバーも数人いる。
ワニ組はそれぞれ1人ずつ離れて座り、無言のまま持参した漫画を読んだりジュースを飲んだり、思い思いの時間を過している。コンビニ弁当を持ち込むのはどうかと思うけど。次の混浴タイムを待っているんだろうか。
4時を過ぎた。唯一の女性連れである軍団も動きがなさそうなので、休憩室を出て、館内をブラついてみた。
入り口のロビーの椅子に太めのメガネ男性が1人で座っていた。新らしい女性客が来るのを待っているんだろうか。
車の台数でも確認しようと、下駄箱から靴を出そうとした瞬間、1台の乗用車が駐車場に入ってくるのが見えた。若いカップルだ。遠目に見た感じ女の子もカワイイっぽい。ロビーのメガネ男性も気づいたらしく、いそいそと荷物を持って風呂場の方へ戻っていく。テンションが一気に上がった。
ワニ組の気持ち、わからなくもないかも。
休憩所に戻り、カップルの到着を持ってみたが、なかなか姿を現さない。個室を借りたのかもしれない。少し時間を置いて風呂場に向かうことにした。静まり返った温泉に再び突入。と、すでに5名程のワニ男性が一定の距離を開けて、獲物の到着をまっていた。ひょっとして、一度も風呂から上がってないんじゃないか。凄まじい忍耐力だ。
まもなく、先ほど来たばかりのカップルの男性がキョロキョロしながら風呂場に入ってきた。ここに来たのは初めてといった様子だ。
彼女の姿が見えないのはなぜだろう。男性客の数が多いので、女風呂に行ったのだろうか。
結局、彼女は来ないまま、彼氏君だけが体を洗い、10分ほどで上がってしまった。
確かに普通の感覚なら、こんな場所に彼女は連れて来れないだろう。彼のリアクションからしたら、ここの内情を知らずに来た可能性も高い。
しはらくワニ組と共にお湯に浸かっていると、再びガヤガヤと軍団が入場し、奥の湯船に浸かった。
と、岩風呂にいたワニ組のうち3人が彼らの後を追って湯船に移動。ここの常連客らしく、軍団と和やかに会話を交わしている。
彼らは談笑しながら、ときに女性の腕や胸を触るなど、軽いスキンシップを楽しんでいた。
あれがしたくて、ここに通い続けているんだろう。
チームと常連風のワニ組は、10分ほど騒ぐと、あっさり脱衣所に消えてしまった。掲示板には本番をするカップルもいると書いてあったが、今日はそこまでの展開には発展しないようだ。
7時を過ぎたころ、休憩所に戻ると、単独男性の数もわずか2人に減っていた。
チームがゾロゾロ帰っていく途中、1人のワニ男性に「またな。もう待っても誰も来ないと思うよ」と声を掛けていたくあのワニ男性は、明日も来るんだろうか。そろそろ私もお暇しよう。お湯に浸かりすぎたせいで指先がふやけて気持ち悪い《帰り際、宿のおばさんを見つけたので声をかけてみた。
「いつもこんなに盛り上がってるんですか?」
「アハハ、週末はそんな感じですかね」
やっぱり、宿の従業員たちは全て知ってて黙認しているらしい。確信犯です。
ここを必要とする客がいて、宿にも利益が入る。混浴温泉として微妙なバランスを保っているのかもしれないが、何も知らずに来てしまった一般客は悲惨だ。いっそのこと、変態限定の温泉として宣伝した方が、集客率も上がり秩序もできて良さそうな気もする。
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