
午後3時。俺は駅からほど近いフィットネスクラブの前にいた。
知人によれば、昼のスポーツクラブにはヒマをもてあました人妻がごったがえしているらしい。いかにもべタな話だが、チャレンジするのもよかろう。
人妻を見分けるポイントはずばり、乳の位置と腕の血管だ。特に子持ちの場合は、否応無しに乳は下がり、腕には血管が浮き出てくるのだ。
待つこと10分、エントランスから赤ら顔のオナゴが乳母車を押して出てきた。年の頃なら20代前半。実にわかりやすい。
「(子供に手を振りながら)何歳でしゅか?僕の子供は3才ですよ〜」
「ちょっと、何するんですか」
「すいません.実はボク、子供が大好きで。あんまりカワイイお子さんだったから、つい」
「へんなこと言わないでください.警察にいいますよ!」
そんなに怒らなくても。これでもオレ、子供の面倒見は良い方なのよ。
さらに10分。今度はタオルを首にかけた下パイ女が現れた。これまた、正真正銘の主婦だ。
「あのぉ、さっきジムで会いましたよね?」
「え、そうでしたつけ…」
「あれ、間違ったかな.地元の奥さん?」
「地元ですけど…」
キョトンとする女の腕を引き寄せた
途端、彼女がわめきだした。
「ちよ、ちょっと触らないでくれます」
「さすが筋肉が張ってますねえ」
「バカじゃないの!誰が見ているかわからないじゃないのよ」
オレの手を振り払い、女が入ごみに消えていく。ご無礼つかまつりました。
翌日は矛先を変え、料理教室『クッキングスタジオ』を訪れた。
料理教室というと、OLや独身の女が多そうだが、ネットを調べた限り、昼間は人妻が多いらしい。
入り口のところに、エプロン姿の案内役らしき20代のオナゴが2人見える。
イッときますか。
「いま授業中?体験入学したいんだけど」
「今日の授業はもう閉め切られているので・・・」
「人妻って多いよね?」
「ええ、結婚されている方も多いですよ」
「ふ〜ん。で、キミも人妻?」
「いえ、ワタシは学生のアルバイトなので・・・」
なんだよ、紛らわしい恰好すんなって。
鏡越しに見える教室の中では、総勢20人以上のエプロン女が大集結していた。アップにした髪を解けば、スプーンをペロペロ…いい、いいんじゃないの!
「おつかれさまです〜。美味しかったぁ」
「アタシもシナモン買いますよ〜」
1時間後、帰り支度を整えた面々が、ノンキな会話を交わしながら、続々と教室の中から出てきた。先程の…きたきた。
「今日のメニューはど一つよ?」
「えつ?」
「旦那さんに何作ってあげるの?」
「ま、麻婆豆腐…」
目を丸くする彼女は美佐枝(36才)。
何でも、1年前に結婚したのだが、ヒマを持て余し、この料理教室に通い始めたらしい。ふむ、実に格好なターゲットだねえ。
「奥さん、オレ、カレーが大好きなんだよね。今度、作ってよ」
「あははは。冗談ばっかり」
「じゃあ、カレーを食べに行こうか?良い店を知ってんのよ」
「ちょっと待って」
突然、彼女がカバンの中に手を入れ、分厚い書類を差し出してきた。なに?入会案内?
最後に20代前半と思しき色黒のオナゴが、ヨチヨチ歩きで出てきた。人妻かどうかは判断つかない。
「オマエ、人妻だよな?」
オナゴの行く手を遮って聞いた。
「ウソ、よくわかったね〜」
「マ、マン?.」
「ウン。子供もいるよん」
オナゴは百合子(20才)。2年前に結婚し、現在、1才になる男の子がいるという。
「ギャルママサークルも入ってるし。
明日、夜から地元でミーッ(ミーティング)だし」
「ってことは、これからの時間帯は何をするのかな?」
「う〜ん、暇人(笑)?」
今日はダンナが家にいない、子供も実家に預けてある。女はべらべらと話した。それが本当なら、あまりにできすぎってもんだぞ。
「ところでオマエ料理とかできるの?実はオレ、めつちや腹へってんだよね。今からウチに来て、メシでも作ってよ。マンション、この近くだからさ’」
「ははは、冗談やめてよ」
「マジだって。ここのところ手料理とか食ってないし、寂しいんだよな。助けると思ってさ’、な、頼むよ、このとおり」
大胆極まりないが、子持ちのオナゴの場合、家庭的なアピールにすこぶる弱いはず。もし嫌がられたら、居酒屋行きに切り替えればいいだけの話だ。
案の定、彼女は咳いた。
「お家、行こうかなぁ。でも、料理したら帰るから。
2人してカレーの具材を買い自宅に戻ると、彼女は慣れた手つきで調理を始めた。
テーブルに運ばれてきた皿の中から、カレーとご飯をスプーンで掬い、パクつと一口。うん、なかなかうまいじゃん。さすが人妻
あれ?どしたの?なんか暗い顔してるけど。
「ごめんね、実は私、あなたに言ってないことがあるの。さっき人妻で子供がいるって言ったでしよ。子供は本当にいるんだけど、結婚はしてないの」
「てことは、バッイチか?」
「ううん、未婚の母」
彼女は言った。3年前のヤンキー時代、地元の暴走族だった彼氏との間に男児が産まれ、本人は結婚したかったのだが、両親の反対で泣く泣く別れた
「いまは子供を育てながら、大学に通ってるの。もちろん、後悔なんかしてないし、子供もかわいいけど・・・ただ、未婚の母ってけつこうツラくって。やっぱり結婚はしたいのよれえ」
大変だねえ。ま、オレとしては、人妻でも未婚の母でも、どっちでもかまわんけど。
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