
「居酒屋でも行こうかってなってるんだけど、お兄さんがちょっぴり奢ってくれるならいいよ~」
さっき大金を渡したってのに、まだタカるんかい! まぁこのまま一人でテレクラに戻るのも寂しいし、ご一緒させてもらいますか…。
「私もテレクラに電話かけてばっかりだったな~」
2人でホテルを出たのは、夜の7時。この時間になると、繁華街もカウントダウンに向けて賑わっている。大学生のような集団がワイワイと歩いていて楽しそうだ。
ああ、俺も以前はあっち側だったんだよな~。
友達と酒を飲んで、そのまま初詣に行ったりして。
2年連続で大晦日をドブに捨てると、普通に過ごしていた日々がずいぶん昔に感じるよ…。
感傷に浸りながら、再び駅前のロータリーに戻ってきた。2人で何分か待っていたところ、友達とやらがやってきた。
「初めまして~」
30代後半くらいの女だ。髪の毛はボサボサで、プリンのような汚い色をしている。まるで場末のストリップ嬢のような、陰鬱としたオーラがプンプンだ。
こちらも挨拶しようとしたところで、山川が割りこんできた。
「この人さっきテレクラで会った人なんだけど、奢ってくれるんだってさ~」
うわ、よくそんなこと友達に言えるな。ワリキリしていることを一切隠そうともしない。
「へ~、ありがとうございます。じゃあ居酒屋入りましょうか~」
友達も一切スルーだし、こいつらの関係性は一体どうなってんだ?
居酒屋の席に腰を下ろしたところで、思い切って聞いてみることにした。
「あの、2人はどこで知り合ったんですか?」
注文のタッチパネルをイジりながら、山川が口を開く。
「フーゾクのスカウトだよ~」
は? 全然わからん。一体どういう意味?
「私が友達欲しいって頼んだら、この子を紹介してくれたんだよね~」
スカウトに声をかけられて、体験入店する代わりに友達を紹介してもらった結果が、隣にいる彼女だったという。
そんな最悪の出会い方が、この世に存在するのか…。
友達も会話に混ざってきた。
「でも私、もうあのスカウトの人とは連絡取れないんです…」
長年に渡り、都内のデリヘルを紹介してもらっていたというが、一切連絡が途絶えたらしい。
そのため最近は、色々な日雇い派遣に行っているというが、なかなか大変なようで…。
「昨日、倉庫バイトに行ってきたんですけど、クビになったんですよ~」
「何か大きなミスでもやらかしちゃったんですか?」
「いや、そんなことしてません。集合に3日連続で遅れただけですし」
いや、完全にそれだよ! 遅刻する上に罪の自覚もないってやばすぎだろ…。
そうしている間に、続々と料理が運ばれてきた。チャーハンや寿司など、3人で食べるなら十分な量だ。
一度席を外して、喫煙所から帰ってきたところで絶句した。
なんせ先ほどまでの料理が、全て食われていたのだ。
「もう~、全然帰ってこないから全部食べちゃったよ~」
は? あり得ないだろ。こんな5分足らずで、奢ってくれる人のぶんまでよく食べれたな。
若干イラつきながら、寿司の皿に残ったガリをつまみに、酒を飲んでいく。
「そういえばお兄さんはこの一年、どんな年だったの~?」
無口の俺に精一杯の気を使ってか、山川が尋ねてきた。
「まぁ、特に何も起きませんでしたね。お姉さんは?」
「私もテレクラに電話かけてばっかりだったな~。彼氏もできなかったし」
なかなか大変な一年をお過ごしのようで。
「じゃあ、お二人の来年の目標は?」
こう切り出してみたところ、2人で目を合わせてこう言った。
「ウーバーイーツ! あれ楽しそうだからやってみたいんだよね~」
はぁ、左様でございますか。
たぶんあんたらは料理を運ぶ前に、全部食べるのがオチだろ。
その言葉どおり、この後も女たちは料理を頼んでは飲み続け、手元のタッチパネルの会計は1万円を超えていた。
うーん、さすがに高すぎる…。
ほぼあいつらが飲み食いしてるってのに、なんで全部奢らなきゃいけないんだ。なんだか急に腹が立ってきたぞ。
これ以上一緒にいても、ATMにされるのがオチだ。席に5千円だけ置き、トイレに行くフリをして店を後にした。
「年の終わりにチンチン納めに来たのよ~」
一人寂しくテレクラに戻ったのは、夜の9時くらいだった。
テレビでは、毎年恒例のNHK教育のクラシックコンサートが放送中だ。
ああ、確か昔に一度、家族で聞きに行ったっけ。あの頃は途中で飽きて寝てしまい、親父におぶわれて帰ったんだよな。実家の両親は今ごろ、何してるんだろう。
うす暗い部屋の中から故郷に思いを馳せていたところ、オーケストラの音とは似ても似つかぬ、悪魔のようなコール音が。一気に現実に引き戻される。
「こんばんは~もしもし~?」
やけに低い声だな。この時点でババア確定だろう。
「お兄さんいくつ?」
「24ですけど、お姉さんは?」
「私は45だよ~」
ほらやっぱり。嫌な予感は的中するもんだ。
「お兄さんはさ~、今ムラムラしてる?」
「ええ、まあ」
「じゃあ、私とエッチなことしたいんだ~?」
なんだこの誘導尋問は。誰もあんたとセックスしたいとは言ってないぞ。
「今テレクラの横にいるんだけど、会ってエッチなことしようよ~」
「はぁ、まぁ大丈夫ですけど」
「じゃあすぐに集合ね~。楽しみに待ってるからね~」
…切られた。なんだったんだ今のは。しかも金額については一切触れなかったし、これはタダマンの可能性もあるのでは?
急いでダウンを着て、テレクラを出ることに。と、開いた自動ドアの横に一人、黒いコートの女が立っていた。
後ろ姿しか見えないが、スリムな体型に長い黒髪。もしかしたら上玉では?
「あの、テレクラで話したお姉さんですか?」
「あら、そうよ~。よろしくね~」
振り返ったのは、平安貴族のような眉毛をしたオバちゃんだった。小さな一重の目も相まって、なんだか男子スケートの織田信成に似ているな。
「じゃ、さっそく行きましょうか」
「そうね~。でもちょっと小腹が空いてきたから、コンビニでご飯買ってもいいかしら?」
ちょうどいい。どうせなら二人で年越しそばでも食べよう。近くのファミリーマートにゴーだ。
「大晦日ですし、一緒に年越しそばでも食べませんか?」
「あら、いいわね~。じゃあそうしましょうか~」
2パックのざるそばを買って、ホテルに着いた。部屋のテレビを付けると、紅白ではパフュームが歌っていた。
2人してざるそばをすする。
これぞ日本の正月だな。ちょっと違う気もするけど。
「そういえば、どうして大晦日なんかにテレクラに電話してきたんですか?」
ふと気になったので尋ねてみたところ、信成の持つ箸がピタッと止まった。
「恥ずかしい話なんだけど、年の終わりにチンチン納めに来たのよ~」
ん? チンチン納め? なにそれ?
「大晦日には絶対にエッチするって決めてるの。そうしないと新年に向けて気持ちが切り替わらないのよ~」
なんだその恒例行事! 大掃除みたいに言うなよ。
「だからお兄さんのような若い人に会えて、今日は本当にツイてるわ~。やっぱり日ごろの行いが良かったのかしらね~」
そう言いながら、嬉しそうにそばをすする信成。世の中には変わった年の瀬の過ごし方もあるもんだ。
「美味しいチンチンありがとね~」
年越しそばを食べ終わり、信成はひょいっと腰を上げた。その瞬間、険しそうな表情をして口を開く。
「あのね、実はさっき言い忘れたことがあるんだけど~…」
ん? いきなりなんだ?
「今月ちょっとピンチなのよね~。だから少しだけお金いただいてもいいかしら?」
うわ、マジか! チンチン納めに来たって言うから、てっきりタダマンできると思ってたよ。
やっぱりこいつもただのエンコー女だったか。
「別に大丈夫ですよ。おいくらですか?」
「できれば1万円ほどもらえると助かるわ~」
しぶしぶ財布から金を差し出す。それを大事そうに上着のポケットに入れると、笑顔で服を脱ぎ始めた。
ふむ、おっぱいはゼロカップに等しいが、スタイル自体は悪くない。2人でベッドに腰かけて、プレイスタートだ。
「じゃあ始めましょうか~」
耳元でそう囁いて、俺のチンコをパックンチョ。ジュボジュボといやらしい音が響き渡る。
おお、めっちゃ気持ちいい~。
さすがはチンチン納めに来ただけはある。気合の入った闘魂フェラに、早くもチンコはバキバキだ。もう入れたいな~。
素早くゴムの封を切り、チンポに装着していく。信成は、恥ずかしそうに口を開いた。
「あの、正常位でガンガン突いてもらってもいいかしら~」
「え、なんかこだわりでもあるんです?」
「一番エッチな気持ちになれるからよ~。ほら、早く入れてちょうだ~い」
今年最後のチンポを目の前にして、信成の目はトロンとしている。うわ、完全にメスの顔になってますやん。
仕方ない。リクエストに応えてやるとしますか。正常位のポジションを取り、ゆっくりとチンポを挿入していく。
「ああ、いい~~!!入ってくる~~!!」
まるで何かに取り憑かれたかのように、カッと目を開いてアエぎだす。そのままガンガンと腰を打ち付ける度に、声は大きくなっていく。
「ブア~~~!!ブア~~~!!」
なんだこの音! まるでトドの鳴き声じゃん!
両手で耳を塞ぎ、音を遮断する。謎のアエギ声に耐えながらピストンを続けるうちに、ようやく射精感がやってきた。
「あっ、イキそう!」
「出して!!精子出して~~!!」
ドピュドピュドピュ~~。はぁ、気持ち良かった~。
事後、ベッドに寝そべりながらタバコをふかす。とりあえず今日はこの人と年越しかな~、
なんてことを考えていると、突然、信成はスマホを見て慌てだした。
「あら! こんな時間! もう帰らないといけないわ~」
「え、これから何か予定でもあるんですか?」
「いやね~、もう私おばさんよ? 帰って寝ないと体が持たないわよ~」
どうやら年越しは、家でテレビを見ながら迎えるらしい。部屋を出ていくとき、振り返ってこう言った。
「美味しいチンチンありがとね~。いい年が迎えられそうだわ~」
テレクラで迎えてテレクラで終えるとは一人ホテルを出るころには、時刻は夜の11時を回っていた。
今からでは、急いでテレクラに戻っても電話はかかってこないだろう。ということは、今年も一人で年越しか。なんだか悲惨すぎて笑えてきた。
気分転換に、駅の周りをトボトボと歩く。コロナ禍といえど、カウントダウンに向けて街は浮足立っている。
東口のロータリーでは、若者が缶チューハイ片手に騒いでいたり、酔っ払った男女がイチャイチャ抱き合っていたり、みんな楽しそうで羨ましいな~。
ふと、デパートの入り口に目がいった。大きな門松が置かれていて、その横のショーウィンドーには、来年の干支をモチーフにしたガラス細工が飾られている。
ああ、そういや俺は丑うし年だから、今年は年男だったのか。まさか12年に一度の幸運な年を、テレクラで迎えてテレクラで終えるとは夢にも思ってなかった。
少年のころの俺にこんな事を伝えたら、確実に泣くだろうな。
行くところもなく、肩を落としてテレクラに戻ると、メガネ店員が大きな声で出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ~!」
元気の良さに頭が下がる。ペコリと挨拶して、洞窟のような暗い部屋で新年を迎えることに。2発も出した疲労からか、すぐに泥のように眠りについた。
朝、目覚めたら腹が減っていたので、近くのコンビニで弁当を買い、部屋で食うことに。テレビでは、どのチャンネルもバラエティ番組ばかりだ。
正午を過ぎたとき、一件のコールが。すぐさま受話器を取る。
「はい、もしもし!」
「もしもし? お兄さん会える人?」
よしよし、姫始めチャンスだ。もうこの際、ババアでもブタでも会えればいいや。
「私、けっこう年上だけど大丈夫かな?」
「全然構いませんよ。今は池袋ですか?」
「ううん、ちょうど起きたところ。●●駅ってとこなんだけど、お兄さん来れたりする?」
●●駅とは、東京から埼玉に伸びる路線の駅だ。
「大丈夫ですけど、近くにホテルとかありますか?」
「いや、家でヤレばいいじゃん。じゃあ待ってるから、駅まで来たら電話ちょうだいね~」
なんと! まさかの自宅アポ! 新年早々、これはツイてるぞ!
急いで指定された駅へ向かう。山手線から私鉄に乗り換えて数駅。改札を下りたところで電話をかけると、「今から向かう」との返答が。
ドキドキしながら待っていたところ、それらしき女が手を振って近づいてきた。
「悪いね~、こんなとこまで来てもらっちゃって」
フリースにサンダルといったラフな格好で、正月感は1ミリも感じない。むしろ深夜にコンビニに行くときの服装だ。おまけに年は50オーバーと見て間違いない。髪の毛の長さも含めて、ハイキングウォーキングの鈴木Q太郎にそっくりだ。
「じゃあ、さっそく行こっか~」
一軒家が立ち並ぶ住宅街を抜け、5分ほどかけて自宅へ。外観は綺麗なアパートだ。
「おじゃましま~す」
恐るおそる玄関に足を踏み入れ、すぐに異変に気づいた。
あれ? なんでこんな玄関の近くに布団が敷いてあるんだ?
「あの、布団すごいところに置いてますね」
「そうかな? いちいち動かなくていいから、けっこう便利だよ」
そう言いながら、布団の上にドスンと座るQ太郎。どうやらここが定位置っぽいな。
「お兄さんも座りなよ~」
促されるように近くに腰を下ろす。その瞬間、ふとデジャヴのようなものに襲われた。
6帖ほどのワンルームに、物で散らかった床。おまけにこのテーブルと冷蔵庫の配置って…。
あ! これって裏モノの1月号に載ってた、テレクラ女の部屋じゃん! 確か8円しか持ってなくて、ヘルニアで糖尿病も患っていた気が…。
「あの、もしかしてお姉さん、腰痛持ちだったりします?」
「え~、どうしてわかったの?ヘルニアの注射打ってるよ」
うわ、絶対にあの女じゃん!
ということは、新年早々、格付け委員長の虫象さんと穴兄弟になるってことか! どうせブラザーになるなら、もう少しマシな女に当たりたかったな…。
「あのさ、先にお金もらってもいいかな?」
「あ、はい」
約束の1万円を渡す。それを丁寧に財布にしまったQ太郎は、あろうことか、その財布を床にポイっと投げた。
「それじゃ、服脱ごっか~」
立ち上がり、メンズサイズの服を脱ぐQ太郎。現れたのは、想像どおりの垂れ乳に加えて、肉でコーティングされたブヨブヨの腹。おまけに太ももには大きな刺青まで入っている。こんなモンスターで興奮するなんて、不可能に近いぞ…。
「とにかく死にたくないよね~」
黄ばんだ布団に横たわり、姫始めのスタートだ。
グッポグッポとチンコを舐めてもらいつつ、おっぱいを揉みしだいていく。Q太郎の裸を見ても確実に勃起しそうにないので、目を瞑って視覚情報をシャットダウン。脳内でAVを再生させる。
その甲斐あってか、ものの数分でチンポは風船のように膨らんできた。
「そのまま入れて~」
指示に従い、ゴムを付けて正常位の体勢へ。挿入口を探そうとしたけど、あまりのグロマンに思わず悲鳴が出そうになった。
「早く入れて入れて~」
天井を見つめて、フーっと息を吐く。覚悟を決めて、一気にチンポを差し込んでいく。あれ? 見た目に反して締まりはいい。チンコもみるみる元気になっていくぞ。
「ああっ! ああっ! いい~~!」
プレイ中も視覚情報を入れてしまうと中折れするリスクが高い。目を閉じて腰を振っていく。あまりの締まりの良さに、ものの数分で射精感はやってきた。
「お兄さんいっぱい出たね~」
事後、2人で換気扇の下でタバコをふかす。せっかくの正月だし、初詣にでも行きたいところだ。
「今日はもう予定ないんですか?」
「うん。後はゲーセンでメダルゲームするくらいかな~」
「へぇ、じゃあよかったら初詣にでも行きません? おみくじ引きましょうよ」
「いいね~。じゃあ近所の神社にでも行こうか~」
新年にふさわしい青空の下、神社に向けて出発だ。
「どんなことをお願いするんです?」
「うーん、私ヘルニアの他に糖尿病もやってるから、とにかく死にたくないよね~」
なんだそのお願いは。もう少し夢のあることを頼んでくれよ。
そうしている間にも、神社に到着。参拝の列を抜けて、お目当てのおみくじを引くことに。
俺の結果は小吉だ。大したことは書かれておらず、しょーもない一年になりそうだ。
「そちらはどうでしたか?」
「末吉だってさ。まぁ病気が治るって書いてあるから嬉しいわ~」
満足しているようで良かった。
体にはくれぐれも気を付けてください。
そのまま神社の前で解散。一人缶コーヒーを飲みながら、空を見上げる。2022年こそは、こんな風に晴れやかに過ごしたいものだ。
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