俺は都内で床屋を営んでいるが、休日（大半が月曜）の過ごし方が、少し独特だ。
午前中に自宅を出て、地元からちょっと離れた激安中華チェーンへ。やることは変わらない。
飲酒だ。本当は自宅で録画番組でも観ながらのんびり飲みたいところだが、それをやると嫁がガミガミとうるさいのだ。
「昼間からお酒なんか飲んで！」と。
だからわざわざ店までやって来て、ラジオを聴きつつ、ちびちびと日本酒を舐めているのだ。これが楽しいのなんの！
しかし、昼飲む理由はそれだけじゃない。
こういうところで平日の昼間から飲んでいると、女の１人客を見かけることがままある。しかも彼女らのなかには俺と同じように、酒を飲む者も少なくない。
これまで俺は、そういった女に声をかけ、お持ち帰りしたことが５、６回ある。
ひとつ断っておきたいのは、俺は決してナンパが得意じゃないということだ。
ついでにいえば、男前でもない。学生時代の友人に「床屋のくせにハゲてどうすんだよ！」とイジられるようなルックスだ。
そんな俺でもちゃんと結果を出している。つまり、それだけ日高屋王将ナンパの打率が高いということに他ならないのだ。では、俺はどのように女たちをモノにしていったのか。
まず言えるのは、女に声をかける際、俺自身も酔っていたということだ。
言うまでもなく、見知らぬ女に話しかけるには相当な勇気が要る。ましてナンパ慣れしてない俺のようなオッサンには至難のわざだ。
しかし、アルコールの力を借りれば自分でも驚くほど大胆な行動に出れるのはご存知のとおり。シラフであれば、到底、声などかけられなかっただろう。
そして何より、ターゲット対象の女がイージーすぎるというのが最大の勝因だろう。
そもそも、彼女たちはなにゆえ平日の昼間にひとりで酒を飲んでいるのか。
答えはアル中だ。知っていると思うが、アル中は酒を水のように飲み続ける。
ひどい場合は、数日間、ほとんど睡眠を取らずに連続飲酒するほどだ。
もはや精神が病んでるのは明らかだが、安く酒が飲める店に、そういう連中は吸い寄せられてくるのだ。
もちろん、昼飲み女のなかにはアル中とまではいかない、単なる酒好きもいる。遭遇率でいえばむしろこっちの方が高いが、このナンパの成功のカギは、アル中を見つけだすことにかかっている。ただの酒好きを相手にしたところで虚しい結果に終わるだけだ。
アル中と酒好きを見分けるコツは飲み方に注目することだ。
アル中はとにかくピッチが速く、日本酒だろうが焼酎だろうが、またたく間に杯を空にする。
そんな女はザラにいない。いればすぐに気づくはずだ。直近の体験を例として、アル中の攻略法を解説しよう。直近といっても、まだコロナ前のことだから、すでに３年ほど経っているが、十分、参考になるはずだ。
その女に注目したのは、やはり飲み方だった。
日本酒「大関」の小ボトルを次から次へと空にしている。
尋常じゃない飲みっぷりだ。スリム体型でぱっちりお目目と見
た目は悪くない。歳は20代半ばといったところか。
久しぶりの獲物を見つけ、興奮を抑えるのに難儀したが、店内での声かけは店員にとがめられる可能性がある。ホームグラウンドで悪評が立つのはよろしくない。彼女が会計を終え、店を出るまで待つことに。
１時間ほどで、そのタイミングは来た。すぐさま俺も会計を済まし、あとを追う。
「ねえねえ、俺もいたんだけどすごい飲みっぷりだったね。よかったら一緒に飲もうよ」
どんよりした目がこちらに向く。
「へ？ おごりならいいよぉ～」
ナンパ的な要素はたったのこれだけだ。アル中は精神疾患を持つ〝メンヘラ〟と共通項が多いらしい。つまりヤリマン体質なので、オッサンの下手なナンパにも乗ってきやすいのだ。
彼女と入ったのは、某カラオケチェーンだ。理由は、安く飲み放題プランが利用できるというのがひとつ。もうひとつは、もしヤレそうな雰囲気になった場合（ほぼヤレると確信してるが）、そのまま実行可能だからだ。
早い話、ホテル代を浮かせようというわけだ。
女は驚異的なスピードでハイボールを飲み続け、その合間に、俺のよく知らない歌手の曲を熱唱している。
「おじさんも歌いなよ」
「いや、俺はカラオケよりイチャイチャしたいかな」
女はニタニタと笑みを浮かべ、体を擦り寄せてきた。
「こんな感じで？」
「そうそう」
「こんな感じは？」
今度は勝手にチャックを開け、勃起したチンコをニギニギしてくる。ああ、これだから昼飲みは止められない！
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