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給与欄には月収30万と書いてあるのだ。
この不景気な時期にそれだけの額がもらえるなら上等だろう。迷うことなく面接を希望したところ、意外な展開が待っていた。その場でバス会社に連絡を入れてくれたスタッフが言うのである。

「先方がすぐ事務所に来てくれと言ってますが、大丈夫ですか?」
「え、今から?履歴書も何も用意してないんですけど」
「履歴書の提出は後日でも構わないそうです」
ずいぶんといい加減だなと思いながらも、Xバスへ足を運ぶことにした。
が、教えられた住所には2階建てのプレハブが建っているだけでバスなど1台もない。そもそもバスを停める駐車スペースすら見当たらないのだ。はて、本当にここはバス会社なのか?
首を傾げつつ事務所のドアを開けると、どこか小ずるそうな目をしたオッチャンが出迎えてくれた。社長らしい。

「大型の路線バスを転がしてたんやて?ほな12メーター(大型の観光バスのサイズ)もラクショーで行けるやろ?」
私が乗っていた大型路線バスは10・5メーターサイズ。それよりやや大きいものの、基本的な運転方法は同じはずだし、車両感覚もさほどの違いはないだろう。もちろん免許は大型二種がそのまま使える。
「まあ、多少のブランクはありますが、大丈夫だと思います」
「よっしゃ、ほんなら決まりや。さっそく明日から来てもろて研修はじめよか」
「え、面接はもういいんですか」
「即戦力になる人材がやっと見つかったんや。十分やて」
社長によると、貸切バス業界は以前から慢性的な人手不足で、どの会社もバス運転士の経験者をノドから手が出るほど欲しがっているらしい。
「特にウチみたいな零細は、未経験者をイチから育てる余裕なんてあれへんからな」
Xバスが保有するバスは大型、中型合わせてせいぜい10台未満(ドライバーは13人)。大手の貸切バス会社なら50台、100台はザラというからたしかに規模は小さい。
「そういえばここ、駐車場もないようですけど」
「ここから1キロほど離れたところに借りてんねや。不便やけど適当な場所が見つからへんくてよ」
事務所と駐車場が別々になってるだなんて。同じバス業界でもインフラのきっちり整った路線バス会社とはいろいろと事情が違うようだ。 
そこでふと、社長が思いだしたように口を開く。
「そうそう。先に言っておくけど、ウチは基本給14万やで」
はあ!?聞いてた額の半分もないやんけ!
「でも求人票には30万って…」
「書類をよう読んでへんのかいな。あそこには『諸手当て含めて30万』と書いてあったはずや」
諸手当てとは、夜行運転手当ワンマン運行手当距離手当残業手当
などを指すらしい。つまりガンガンに体を酷使しまくってはじめて30万に届くというわけだ。なんじゃそりゃ…。 
憮然とする私を見て、社長が慌てたように付け足す。

「貸切バスは長距離運行とか夜行とか、そんな業務は当たり前のことや。当たり前のことをやって手当が付くんやからむしろラッキーと思ってくれな。最初はキツイかもしらんけど慣れてしもたらこんなええ仕事も他にないで」
それほどええ仕事なら人手不足になるハズなどないのに、アホな私はそんなものかと素直に信じ込んでしまった。
大阪|東京ルートの需要はうなぎ登り
続いて社長から業務内容の説明を受けた。 Xバスでは団体旅行の際のチャーターバス、旅行会社の下請けとしてのツアー客輸送などいろいろな仕事があるが、目下のところ、一番の主力は大阪‐東京間の高速ツアーバスであるらしい。 
少し説明が必要だろう。 
当時、世間には高速バスと呼ばれるものが2種類あった。
ひとつは阪急バスや近鉄バスといった、主に鉄道会社が母体のバス会社が運行する『高速乗り合いバス』で、町中の路線バスのように、決まった停留所で客が乗降し、ダイヤに従って運行されるタイプだ。 

もうひとつの『高速ツアーバス』は(現在は廃止。後述する)、旅行会社が企画&集客し、客の輸送を貸切バス会社に依頼して運行する。停留所のようなものはなく、客は旅行会社(あるいは貸切バス会社)によって定められた任意の場所に集合し、バスに乗り込むのが一般的なスタイルだ。  

これら2つの高速バスには、仕組み上の違いの他にもうひとつ、大きく異なる点がある。料金だ。
たとえば大阪‐東京間の場合、前者の高速乗り合いバスの運賃は7、8千円ほどなのに対し、高速ツアーバスはわずか3千円台で済むのだ。
格安の理由は、ツアーを主催する旅行会社が、そのつど採算の取れる範囲でギリギリの料金を設定できるためだ(高速乗り合いバスの運賃は、路線バスや電車と同じく公示料金なので変動がない)。
したがって高速ツアーバスの利用客は毎年増加の一途をたどり、特に人気の大阪‐東京ルートを走るバスの需要はうなぎ登りの状況らしい。社長が言う。
「というわけで当面、窪くんには大阪‐東京の便を中心に頑張ってもらうから、頼むで」 
高速ツアーバスは、基本、出発から終点まで1人のドライバーが運転する。責任は重大だ。頑張らねば。
「書類はねつ造すりゃええだけやがな」
5日間ほど研修(整備や駐車場での走行訓練など)を受けて、いよいよ貸切バス運転手としての生活が始まった。だが出勤初日、私はこの業界のデタラメっぷりをはやくも見せつけられることになる。

その日、バスに乗る前に事務所へ出向いた私は、ある人物の到着を今か今かと待ちわびていた。
バスの世界では路線、貸切に関係なく、出発前は必ず点呼を行う。ドライバーは運行管理係と対面し、健康状態や酒気帯びのチェックを受けて、はじめてバスに乗り込むことが許されるわけだ。
ところがその運行管理係がいっこうに姿を現さない。出発時間は目前に迫っており、このままでは集合場所(東京行きの乗客をピックアップする場所)に遅刻してしまう。もう何やっとんのよ。
しびれを切らし、電話をかけようとしたところで、その場に居合わせた先輩ドライバーのオッサンが声をかけてきた。
「おーい、もう時間ちゃうん? なんで出発せえへんの?」
「いや、行きたいんですけど、運行の人が来はらへんのですわ」
「え、何で運行待っとんの?」
「何でって、まだ点呼も終わってないし」
「はは、点呼なんて要らんから、はよバス出し」 
意味がわからず聞き返して呆れ果てた。Xバスでは出発前点呼など一切やってないというのだ。ならば監査(国交省が定期的に行う)が入る際はどうしているのかと尋ねれば、
「そんなもん書類をねつ造すりゃええだけやがな」
こうした法令違反はXバスだけのことではなく、他の貸切バスでも常態化しているとオッサンはマジメ顔で説明する。
「ワシ、今まで6社くらいバス会社を転々としてきたけど、まともに点呼やっとるとこなんか1社くらいのもんやったで。しかもその1社にしても毎回乗務のたびにやっとったわけやないしなぁ。もっと気楽に行こうや」
遵法精神というものがカケラもないらしい。タクシーの激務が天国のよう  業務が始まって1カ月も経たないうちに、私の体ははやくも悲鳴を上げ始めた。仕事のキツさがハンパないのだ。
まずは高速ツアーバスの大まかな流れを見てほしい。
夜10時に大阪を出発し、時間にしてざっと9時間、500キロちょっとの行程を経て東京に到着。
客を降ろした後は車内掃除や給油を行ってから仮眠所(提携のビジネスホテル)で休憩し、同日夜、新たな客を乗せて再び大阪へ。
以上で1運行と数えるのだが、体にかかる負担は大阪から東京に着いた時点ですでに相当なものだ。当然だろう。長時間運転による単純な疲労の他に、大勢の客の命を預かっているというプレッシャーが終始つきまとうのだから。 
その疲れは、仮眠所に転がり込んでも簡単には取れない。夜通しの運転で脳が興奮状態にあるため、なかなか寝付くことができないのだ。ときには夕方まで目がさえまくってボーッとテレビを眺めている日も珍しくなく、そうなればロクに体を休めないまま大阪に戻るハメになるわけだ。

しかもこういう運行スタイルを休みも挟まず連続で3回、4回も繰りかえすのだから、根を上げたくなる気持ちもわかるだろう。無理を通したおかげで様々な手当てが付き、初月給は27万になったが、こんなハードな業務なら30万でも安いくらいだ(以降、月給は26万〜35万の範囲で上下を繰りかえす)。
ちなみに以前やっていたタクシー運転手35も、1日に20時間もハンドルを握るキツい仕事ではあったものの、勤務明けには丸1日の休憩が与えられるため、これほどの消耗は感じなかった。いま思えば天国のようである。

どこそこの会社の運転手はシャブ中
しかも貸切バス運転手の過酷さはこれでマックスではない。紅葉の季節やスキーシーズンがやってくると、激務の度合いは2倍にも3倍にも増すのだ。旅行会社からXバスに日帰りツアー客の輸送依頼が殺到し、結果、そのしわ寄せが私たちドライバーに及ぶからだ。それも、高速バスの運行は今までどおり受け持ちながら。
そうなった場合、どのような業務内容になるのか、一例を挙げてみよう。
夜、大阪から8時間かけ、翌早朝、白馬に到着。スキー客を降ろしてから2時間ほど車内で仮眠をとり、すぐに大阪へトンボ帰りする。で、夜が来るまでまた仮眠して、今度は高速バスの運転手として東京へ。翌日夜、再び大阪を目指す。驚くべきことにこんな恐ろしい運行が何回にもわたって続くのだ。諸悪の根源は、旅行会社と貸切バス会社の力関係にある。
舞い込む仕事の大半を旅行会社に頼っている状況下では、貸切バス会社は先方の要求を飲むしかないのだ。たとえそれがどれだけ厳しい条件だったとしても。慢性的な寝不足と疲労を抱えて、バスに乗る日々。こんな状況下では運転中、たびたび強烈な睡魔が襲ってくるのは当たり前であり、いつごろからか私は、制服のポケットに押しピンを常備するようになっていた。そいつを太ももにブスリと刺し、ふいにやってくる眠気を追い払うためだ。しかし、そこまでやっても睡魔は完全には抑えられない。貸切バス運転手になって2年目の冬、白馬から大阪に戻る日帰りスキー客を乗せ、中央道をひた走っていたときもそうだった。
その晩はいつにもましてまぶたが重く、数分おきに押しピンを太ももや指に刺してこらえていたものの、恵那インター(愛知県)に差しかかったあたりでついに限界が。突然、意識がスーッと遠のき、ヤバイと思う間もなく気を失ってしまったのだ。 その間、スピードは100キロ前後出ていたハズだが、バスの走っていた場所が下りの急勾配だったことが幸いした。ビー!ビー!ビー! エンジン回転がオーバーランを起こしたため、けたたましい警告ブザーが鳴り、間一髪、ハッと目を覚ますことができたのだ。これがなかったら、十中八九、バスはガードレールに激突、下手すれば死者を出す大
惨事になっていたことだろう。
笑えない話ではあるが、貸切バス運転手なら誰でも一度や二度、似たような経験はつきものだ。そしてまたこの劣悪な労働環境は、新たな問題を引き起こす原因にもなっている。覚せい剤だ。
ご存じ、覚せい剤は眠気や疲れを一瞬で取りのぞいてくれる薬物。
それだけに、どこそこの会社の運転手はシャブ中だの、誰それが覚せい剤の手配をしてくれるだの、そんな噂は何度も聞いたことがあるし、実際、現役の運転手がシャブでパクられたなんて事件もぽつぽつと起きているのだ。人の命を預かる身でありながら違法薬物に手を出すなど言語道断である。が、そう思う一方で、クスリに手を出したい気持ちも痛いほど理解できるのは、この業界に致命的な欠陥があるからに他ならないのだ。
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