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EDが続いている。手コキ付きのマッサージ店に行っても、しっかりとは勃たないし、さらに問題なのはオグが相手のときだ。そもそもコトを始めようという気にすらならない。おそらくゴムさえ使わなければなんとかなると思うのだが、あのオグの頑なな拒み方からして今後もナマを許すとも思えず、かといってピル服用を提案できるような仲でもない。
最近のデートでは、オグも夜7時ぐらいになると気遣って家に帰るようになった。男女の付き合いとはこんなものなんだろうか。ただ普通にご飯を食べて、ときどき映画などを見て、それでバイバイ。特にオレたちの場合、深い話などはしたことがないので、まるで学生の交際のようだ(経験がないのでどんなものなのかよく知らないが)。


某日、オグの誕生日がやってきた。さすがにこの日ぐらいは合体せねばならぬと、いざ約束のレストランへ。
オレも気合いが入っている。その場でプレゼントしたのはプラダの8万円もする財布だ。以前から何度も下見し、思い切って購入しておいたのだ。
「ありがとうございます」
礼を言うオグだが、さほど驚いた様子はない。8万円もしたことをわかってないのだろう。この笑顔はせいぜい2万円ぐらいの喜び方だ。野暮なのでもちろん値段に触れる
わけにはいかない。いつか商品検索して、この思いに気づいてくれればいいだろう。
ごちそうさまの後はスマートにオレの部屋へ向かい、こっそり隠れてバイアグラを飲む。が…立たない。やっぱり立たないではないか。これは非常にヤバイ気がする。こんな特別な日にすら勃起しないなんて、さすがにマズイのでは。仕方なく、セックスのセの字も出さないまま、アマゾンプライムで松本人志のドキュメンタルを見てオグの気をそらし、そのまま解散となった。
誕生日にセックスもせず、一人で家に帰るオグはどんな気持ちだったろうか。そして不思議なのはその後だ。次の週のデートで喫茶店の会計のとき、オグの財布をチラッと見たら、まだ8万円のプラダを使っていないのだ。これはどうなんだろう。財布なんて普通はプレゼントされたら、その日のうちにカードだなんだを移し替えて使い始めるものじゃないのか。まさか大黒屋(質屋)に流してないだろうな!徐々に2人の間にすきまのようなものが生まれてきた気がする。ここで、最近に起きたいくつかの言い争いについて、どちらが正しいか読者のみなさんにお尋ねしてみたい。
①ラインの返事が遅すぎる問題
ラインを送ってから半日ずっと未読だったり、既読になってから何時間も放置されたりすることがやけに多いので、「なんでこんなに遅いんや」となじったことがある。「忙しくて」と言い訳していたが、休日でもこの調子なのはオカシイだろう。
②会社の飲み会で3次会まで参加する問題
オグはときどき会社の飲み会だと言って夜遅くまで飲みまくっている。帰りが深夜0時を過ぎることだってある。
理由を聞けば「3次会まで行ってたから」と答えるのだが、なぜ会社の飲み会ごときで3次会まで付き合う必要があるのか。普通、どこの会社でも女子社員は適当なところで切り上げて、最後までグダグダやってるのは若手の男だけのはずだ。当然、非難してやったが、納得いってないようだった。
③コンサート終わってすぐ帰る問題
せっかくコンサートに行っても、オグはすぐに帰りたがる。オレからすれば、喫茶店などで感想を語り合うところまでがコンサートだと思うのだが。わざわざ高いチケットを買ってるというのに。
その旨を伝え、さらに「イヤイヤ来てるなら、最初から来ないでくれ」と吐き捨てたら、かなり困惑した顔をしていた。
とりあえず以上の3つについて、みなさんの考えを聞いてみたい。オレは常識的なことを言ってると思うのだが、どうなんだろう。あるいは勃起もしない男の言い分など、無視されても仕方ないのか?
そんな付き合いの中、ついにXデイがやってきた。オグからこんなラインが来たのだ。
『お話があるので電話していいですか』
 どこかで見たことのある文言だ。そう、アイドル好きを非難されたときにもこんなラインが来たのだった。今回も何かしら批判されるのだろう。たぶんアノことだろうが…。ブルーな気分で電話してみる。
●もしもし、話って?
○単刀直入に言います。
●はい。
○私に飽きたのかと思いまして。
●え、飽きてないよ。
○じゃあどうしてできないんですか。
●できないって…。
○ずっとできないですよね。
●ああ、オヤジの入院のこととか気になってて…。
○それはそうだと思いますけど、でもずっとできないですよね。そういう気持ちにならないってことですか?
●うん、まあ最近、頭痛とかもするし…。
○そうですか。わかりました。大丈夫です。
 

電話は終わった。大丈夫とはいったい何が大丈夫なのだろう。

勃起不全のことは棚上げにしたまま、時は過ぎた。EDの原因を父親の病気のせいにしながら、あいかわらずセックス抜きのデートを繰り返し、そしてある日、いてもたってもいられず、ついにある行動に移してしまった。
金曜の夜、またオグからラインの返事が来なかったので、翌日、我慢できずに怒りの電話をかけたのだ。
その電話の模様をお届けすることにする。なんだか最近、痴話喧嘩のような報告ばっかりになって申し訳ないが、これも長年モテなかった男に彼女ができたときのサンプル例として、なにかの役に立てていただきたい。
●=赤澤 ○=オグ
●あ、もしもし。
○あ、はい……。
●またライン戻ってきてないんやけど。
○あ、すみません…。
●既読にもならへんっておかしいやん。
○スマホ見てなかったので。
●そんなことってある? 普通見るもんやん。
○はい…。
●なんで? ずっと未読のままなんやけど。
○飲み会があって…。
●飲み会? 会社の?
○はい。
●また行ってたん?
○ええ、誘われたので。
●そんなん断ったらええやん。
○いや、そういうわけにもいかなくて。上司の誘いなんで。
●上司とか関係あらへんやん。週に2回も3回も飲み会行ってるやん。オレはそんなん断れないヤツがイヤやねん。
○…はい。
●で、飲み会やから返事できひんってのもオカシイと思うんやけど。
○え、でも…。
●スマホそばにあるんやし。
○そんな…。1時間ごとにチェックするんですか?
●1時間どころか5分ごとにでも見たらええねん。
○帰りたがってると思われてしまって、上司に失礼じゃないですか。
●そんなずっと文字打ってるわけちゃうんやから、誰も気にしーひんし。
○でも飲み会でスマホ気にしてる人がいたら、気分悪くないですか?
●返事しなくてオレが気分悪くするのはええん?
○……。
●オレのこと軽視してるとしか思えへんねんけど。
○もう飲み会に行ったらダメってことですか。
●ダメとは言ってないけど、ウーロン茶しか飲まんかったらええねん。それならすぐ帰れるし。
○ウ、ウーロン茶ですか…。
●ビール飲むから、ずるずるもう一杯もう一杯ってなるねん。
○それが飲み会じゃないですか。
●そもそも飲み会をする目的もわからんねんけど。
○目的って…。
●会話したいなら喫茶店でええやん。
○飲みながらしかしゃべれないこともありますよ。
●そう思い込んでるだけやねん。ほんまは理由つけて酔っぱらいたいだけやねん。
○そういうのもあるでしょうけど…。
●酔いたいなら家で飲めばええのに、そうやって大勢で群れて甘えてるだけやねん。
○……。
オグは会社で事務員をしている。おそらく、女だし、付き合いもいいし、酒量も多いし、ということで飲み会要員として重宝されているのだろう。しかし、その〝利用されてる感〞がオレとしてはたまらなくイヤなのだ。
●そんな飲み会ばっかりやってる会社、辞めたらええのに。
○辞めてどうやって生活するんですか?
●だいたい飲み会が週に何回もあるなんておかしいやん。アホばっかりやん。スティーブジョブスも、会社にアホがいるとアホを呼ぶって言ってるねん。
○……。
●それに、帰りの電車とかでも返事できるはずやし。
○できないときもあるんですよ。
●また三次会まで行ったん?
○三次会が終わって、友達が酔っぱらったので、家まで送っていったんです。
●はあ? そんなん捨てていったらええのに。
○女の子なんですけど。
●男でも女でも、泥酔するのは自己管理ができてないからや
○酔った女の子、ほっておくんですか?
●ほっといたらええやん。自分の責任なんやし。
○……。
●酔ってても責任は問われるねん。小出恵介を見たらわかるやん。
○……。
●酒なんてコミュニケーションの手段やねん。泥酔するようなヤツは酒が目的になってるわけで、そんなんは甘いもんに群がるアリと一緒で下等生物やねん。
○じゃあ私が酔っぱらってたらどうしますか?
●家の中なら、場合によっては認めるけど。それも3年に1回とかなら。
○3年……。
●家の外なら厳しいわ。あきれてしまうかも。
○あきれて、ほって帰るんですか。
●泥酔してたらあきれて帰るかも。
○……。
●そこまで飲む人の気持ちがまったくわからへんし。
○それは赤澤さんがお酒を飲まないからですよ。
●まあ、わかりたいとも思わへんけど。
○……。
だいたい、オレは酔っ払いという連中が大嫌いなのだ。迷惑ばかりかけて反省もせず、むしろ酒のうえの出来事だからと、武勇伝のように誇る連中が。
どうせオグの会社の人間もその類なのだろう。そんな連中とは交わってほしくないものだ。
●とにかくずっと未読なんもイライラするし、既読で返事ないのもイライラするんやけど。
○未読はしかたないじゃないですか。
●しかたなくないね。こまめにチェックすれば気づくはずやし。
○そんなにスマホ見れないですよ。
●それでも定期的に見る機会はあるはずやん。昼休みとか、会社帰りとか、寝る前とか。
○そうですけど…。
●なんでそれやのに未読なん?
○来てるのわかってても、後で見ようってこともあるんですよ。既読にすると、すぐ返事しなきゃいけないとか思うので。
●え、既読になっても返事こーへん
○それはどう返事していいかわからなくて、そのままになったり…。
●どういうこと?
○だからまだ予定が見えないときのこととか聞かれても、すぐに返事できなくてそのままになったりとか。
●それなら、まだ予定見えないって返事したらええやん。
○そうなんですけど…。
●とにかくすぐに返事ほしいんやけど。
○わかりました……。
●スタンプだけとか、そんなんあかんし。
○え……。
●ある程度の長文じゃないと、なにも伝わらんやん。
○はい…。
●それじゃ。
○はい。
この電話から2週間ほどが経つが、オグの仕事が忙しいため、まだ会ってはいない。肝心のラインの返事だが、さすがに既読スルーはなくなったものの、数時間以上未読のままのことはあいかわらず多い。
ここまで書いたところで、オグと出会ったころ、過去に付き合った男性について聞いたときのことをふと思い出した。そのときオグはこう言っていた。
「前彼はすごい束縛系だったから別れたんですよ」
ちょっとドキッとした。世の中では、飲み会に行くなとか、返事をすぐしろとか、そんなことを言う男のことを束縛系と呼ぶのでは…。まったく意識していなかった。昔からオレはこんなにうるさかっただろうか。そんな記憶はないのだが。これはオグという女性に、男をそうさせてしまう何かがあるからなのかも…

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