業界を「ギョーカイ」と力タ力ナで表記したとたん、マスコミひいては放送業界を指す意味になうてしまったのはいつ頃からだろうか
今や《ギョーカイ用語》といえは、テレヒ関係者や芸能界の言葉との認識がまかりとおっている。だが、周知のようにいくつかの芸能界のギョーカイ用語は今やすっかり非ギョーカイ人の間に定着し、またすでに死語と化したものもある。
「昨日、ルーギャーとシーメ食うてたらさあ」
某タレント事務所に勤務する筆者の知人は平気でそんなフレーズを口にするまあ半分、自虐的なギャグのつもりなんだろうなと思っていたら、これが結構《マジ》なのだからかなわない。
芸能界の隠語といって誰もが先に思い浮かべるのは、逆さ言葉である。例えばこれ。「ラーハがリーへだからさ、シーメ食おうぜ」
「外はメーアー」なぜ「腹が減うたからメン食おうぜ」や「外、雨が降っている」と素直に言えないのかはさておき、とりあえずことばを逆さにすりゃ意味が通じるかといえば、そう単純でもない「君の力レシ、外人なんだ。もしかして口イクー?」
ロイクー←クロイ(黒い)←黒人。
キャリアの長いミュージシャンなどは《逆さグセ》がつきすぎて「クイロー」などとワケのわからない表現を使うこともある。
次は、最近あまり耳にしなくなったものの、オンガク関係者の間ではまだまだ現役のこんな表現を。
「アゴアシマクラ、コミでいくらよ?」
「ゲーマンです」
意味は以下のとおり.
「食費、交通費、宿泊費、合わせていくら?」
「5万です」
芸能界における金額の表し方は独特だ。これはドレミファソラシドをドイツ語読みに
したC(ツエー),(デー)E(工I)F(エフ)G(ゲー)A(アー)B(ベI)をそれぞれ1〜7の数字に当てはめたもの。例えば「ツェーマンゲーセンデヒャクエン」
は1万5200円となる。もともとはミュージシャンが和音コードをアルファベットで
表す習慣から来たものだが、なぜかツエーとゲーだけ妙に使用頻度が高いらしい・
では、テレビ番組の収録で、スタッフから次のような指示が来たらどう振る舞えばいい
か。自分がタレントになったつもりで考えてみてほしい。
「カミからシモ談で歩いてみてください」
カミ(上)はカメラから見て右。つまり自分から見て、左から右へという意味。
「1回バミって、着、ナメた後にワラつちやいますから」
実際にはこんな言い方はまずあり得ないが、どれもギョーカイ独特の用語。「なぐる」は、大道具をトンカチで調整すること。また、演者の立ち位置などをガムテーブ(ガバ
チョともいう)であらかじめ決めておくのが「バミる」。さらに「ナメる」は被写体の手前にモノを置いて撮影する手法で、セットを片づけることを「ワラう」と言う。
さて、なにかと裏社会とかかわり合いのある芸能界。当然、ソレに絡んだ隠語も存在する。
「蛇口」言葉の意味は、ケツモチつまりバックのヤクザへ令流す役目のこと。ヘビの口はいかにもな表現だ
「あそこの事務所、最近、蛇口取り替えたんだってよ」
意味は言わずもがなだろ。特にドサ回り(地方公演)は、どうしでも地元の稼業に金を渡す必要が出てく。そこでしくじった者は必ず《取り替え》の憂き目遭うのだ
その他の用語・隠語
寝技で一本……売り出し中の女性タレントが、番組プロデューサーなどと寝て仕事を取ること
銭湯通い……人気男性タレントがお忍びでソープランドへ通い詰めること
内トラ……内輪(スタッフやその近親者)のエキストラ
カキワリ……背景のセット。窓の外に見える町並みの絵や写真パネルなど
テレコ……順番や位置を入れ替えること
尺(シャク)……番組やVTRの時間の長さ
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