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女性の目元だけを見て、美人かどうか判断するのはやっぱり難しいです。目がキレイだったとしても、口元で大きく印象が変わるんですよね。どなたか手紙を渡す直前に、店員さんにうまいことマスクを外してもらうセリフ、ご存知ないでしょうか? というわけで、今月もマスク姿の店員さんにお手紙配ってきました。
11月に入り、寒さも一段と増してきた平日の夜、香織さんをJRの某駅改札で待つ。
と、改札を出たところの壁際に、それらしき子を発見! 近づいて声をかける。
「どうも香織さんですよね?みのやです!」
「こんばんは~。どうもどうも!」
おぉ! マスクの上からでも可愛い笑顔がわかるぞ。彼女はたしか…1番の子だったかな?
まだ喜ぶのは早いけど、かなりの美人じゃないか? パンツスタイルに薄手のベージュのコートが似合っている。ミディアムヘアーもいい感じだ。バストはあまり期待できなさそうだが、スタイルもいいですよ。
「近くに美味しい店あるので、そこでもいいですか?」
「あっはい、お任せします!」
小雨も降ってきたので、早速お店へ入ろう。
エレベータに乗り、ビルの5階のお店へ。
「香織さん、いつもは何飲まれ
るんですか?」
「私はいつもビールですね、飲むぞってときは日本酒とかも飲みますけど…」
かなりイケるくちなのね。そうかぁ~ちゃんと聞いておけばよかった。ここはどっちかというとワイン主体のお店。知ってればクラフトビールのお店とかもあったのに…。
「じゃあ最初は生ビールにしましょっか!」
タコとアボカドの和え物、イカのフリッター、生ハムのサラダをオーダー。
そして、ここでようやくお互いマスクを外して乾杯だ。少し照れ笑いしながら、お互いの顔を見合わせる。予想どおりの美人で良かった。年齢は30代半ばくらいかな。これはど真ん中のストライクゾーン。あと5才若ければかなりモテたんじゃないか? 
「マスクないの初めて見たけど、香織さん、めっちゃ美人じゃないですかぁ~!」
手紙を配るときも、最近はマスクのせいで、なかなか自分の好みを見つけにくいのだが、今回は大成功だ。
「そんなことないですよー! もう若くないし…」
確かに若くはないけど、いい女なのは違いない。
「え~全然若く見えますよ~。お幾つなんですかぁ~?」
「いきなり聞くんですね!? え~と35才です…。すみません」
おぉ、まぁそれぐらいかと思ってたよ。
「なんで謝るんですか! でも若く見えますよね、30才くらいかと思ってました」
とりあえず、これくらいのことは言っておかないとね。
「また~、みのやさん気を使って~! まぁまあ、飲んでくださいよぉ~!」
嬉しそうな表情だ。その流れでオレの年齢も言ったら、みのやさんの方が若く見えますよ~! 
とお互い社交辞令に。いつものお約束だね。
さて、これからが本番。色々聞いていこう。
「香織さん出身は?」
「東京です。○○区ですね」
「そうですか~。住みやすいですよね! 僕も一時期○○に住んでましたよ」
「そうなんですねぇ~。じゃご近所さんでしたね! もしかしたらすれ違ってるかも…!」
大した話題じゃないけど、楽しそうに返答してくれる。優しい人だ。
「香織さんって、今は彼氏とかはいないんですかぁ~?」
とりあえず確認しておきたい。
「もちろんいたら、ここ来てませんし、いないですよぉ~」
やっぱりそうだよね。
「でもモテそうだし、会ってる男の人くらいはいるでしょ?」
「本っ当に、今は全然なんですよ~。後輩も心配してくれちゃってますし。ヤバイですよね…ハハハ」
「でもそれはもったいないなぁ。やっぱりオレが口説いちゃおうかな~!」
「なんですかそれは! 私なんてやめた方がいいですよ~!」
とは言っているが少し嬉しそうだぞ。
と、何か思い出したように香織さんが目を見開いた。
「あっ、そーだ。この前みのやさんに手紙もらった何日か後ですけど、駅でナンパされたんですよー! 絶対年下だと思うんですけど…これからお茶でもどうですかぁ~って!」
「おお、すごい。ナンパっぽいナンパだね」
「そうなんですよ~。なんか短期間にこういうことが続くなんてびっくりですよ! なんかドッキリですかぁ~みたいな! フフフ!」
例えが古いぞ。でも美人だし、ナンパぐらい普通にされそうだと思うぞ。
「それは香織さんからフェロモンが出てるからじゃないですか~! すごく色っぽいもん!」
「えぇ~! ひょっとして、モテ期、来てますぅ~? 遅いって…!」
「じゃあ前の彼氏はどれくらい前に別れたの?」
「2年前ですかねー」
ふ~ん。2年も一人きりだとは本当にもったいない。
「ちなみにどんな人だったんですか?」
「う~ん、まぁちょっと変わってましたかね…ハハハ。2才くらい年上で。職人さんでしたけど」
「職人って?」
「あ、左官屋さんです」
なぜ販売員と左官職人が出会えたんだろう。
「え、どうやって知り合ったんですか?」
「地元の友達の紹介で知り合ったんですが…あんまりうまくいきませんでしたね。今考えるとアル中だったかも…ハハハ」
アル中か。あんま笑えない。
「半同棲みたいな感じになってたんですが、会うときはだいたいお酒が入ってて」
「まさか暴力とかも?」
「それはなかったですけど、機嫌いいときはいいんですけど、悪いときはちょっと怖かったですね…」
その彼は、いつも仕事が終わって彼女と会うまでの時間に完全に出来上がってしまっていたらしい。
そんなこと続けてたらフラれるのは当たり前だ。
「一度喧嘩した時、メーカーズマークの瓶が飛んできましたよ…」
 全然暴力ふるってんじゃん!
「まあ、わざと外して投げてきましたけどね。フフフ」
この子もなかなか手強そうだな。あんまり楽しい話じゃなくなってきたので、話題を変えましょうか。
「香織さん、ご趣味は?」
「趣味ですか? う~ん、最近コロナで家時間たくさんあるじゃないですかぁ。だから料理始めたんですよー!」
「へ~いいね! 料理上手はモテるらしいよ!」
先月会った子も同じこと言ってたな。コロナで料理始めた人って多いのかも。
「ですかねー? あんまりやってこなっかったから、色々道具買うところからやってますよ!」
「じゃあ最近買ったものは?」
「それはですねー、これです!」
と言いながら嬉しそうにスマホの画面を見せてくれた。
美味しそうにふっくら焼けたパンが写っていた。
「これマジ美味しいんですよぉー!!」
うん、確かに美味しそうだけど…パンかよ。
「でもこれを友達に送ったら…病んでるの? って言われて。ハハハ」
「そう取られたんだね…オレはすごい食べたいけど…! 今度食べさせてくれない?」
「う~んそれは難しいですね…」
え? えぇ~!?そこは冗談でも﹃じゃあまた今度作りますね﹄とか言って欲しかった~~~!
「香織さん実家なの?」
「いえ、一人暮らしですよー!でも男の人は入れないようにしたんです! フフフ」
三十半ばで今の発言はナシでしょ~! そんなこと言ってたらなかなか相手見つからないよ? 
女の子も適齢期をすぎるとなんか変に凝り固まってくるよね。まぁ四十も近づいてくると慎重になっちゃうのはわかるが、そういうときこそケツを軽くしないと!
「それで、マッシャーも買ったんですよーー!!」
何を言ってるのかわからなかったが…最近買った調理器具の名前らしい。
「ふ~ん、じゃあそれでマッシュポテトを作ってるんだね?」
「そうなんですよ~粗めに潰してスモークサーモンに添えて…それで韓国ドラマ見てたらお酒止まらなくなりました、ハハハ」
ちょっぴりお酒が回ってきたのかテンションも上がってきたみたいだ。
「オレもトッケビ見てましたよ!面白かったよね!」
「あれは名作です! ゴウンちゃんがすごく可愛い! 梨泰院クラスも見ました?」
それはよくわからないけど…。
「うん、うん、見た見た。あれもいいよねー!!」
よく知らない韓国ドラマの話である程度盛り上がり、お酒もレモンサワーに変えた。この調子でガンガン酒を飲んでくれたらな。
もう一度あらためて、いままでの恋愛の話を聞いていこうか。
「さっきの前カレ以外には、どんな人がいたの…?」
「そうですね、結構自分勝手な人が多かったですね!最初は自分を持ってる人がいいなと思って付き合うんですが、自分を持っている人って、結局わがままな人が多いんですよ!なので難しいですよね」
ふ~ん、結構、豊富に経験してきた人から出る言葉だね…。ちゃんと聞こう。
「それで、あんまり続かないの?」
「最初は合わせていくので、まぁうまくいくのですが、それもだんだん疲れてきてしまうんですよね~」
ひょっとしたら、根本的に選ぶ相手を間違えてきた人なのかな?
「で、最近気づいたんですよ! やっぱり自然体でいれる人がいいって!」
ちょっと遠くを見つめながら満足げに言い放った。気づいたのそんだけかよ!さぁて、これからどうやって口説こうかな? もう一軒行くか? と思っていると、香織さんが急に時計を気にしだした。アレ? なんか帰りたがってる?
「香織さん、ひょっとして、明日仕事早いんですか?」
「いえ、仕事は休みなんですけど、実は予定があって…」
「早いの?」
「早いです………」
マジで? オレ、今日の会話で地雷でも踏んじゃった? まだ飲み始めて2時間くらいしか経ってないのに……。
「予定って…、何なの~?」
「……ディズニーです。友達と」
うえ~、本当に完璧な遊びだな。早起きして友達とディズニーに行くから、早めに帰りたいってこと? なんか…、ものすごい敗北感…。
「コロナでずっと我慢していたんですが、そろそろ友達が行ってみようかって!」
「へぇ~…、そうなんだ~」
う、うん。その気持ち、わかるよ。でも、オレの気持ちもわかってよ~!
なんとか説得して、このお店で追加のもう一杯だけは付き合ってもらえたが、飲み終わったタイミングで、2軒目を打診してみたら、やっぱりもう難しそうな雰囲気…。
うーん、特に地雷を踏んだというわけではないみたいだけど、彼女の口調がずっとデスマス調のままだったし、なんとなく心を開いてくれてない感じはしていたんだよな…。
会う前はそれなりに前向きだったけど、いざ会ってしゃべってみたらなんか違った、的なことだろうか。それとも、いざマスクを取って俺の顔を近くで見たら、意外とおっさんだったので引いたとか…。うん、その可能性はけっこう高いかも。なんだよ! 久々の男との飲みだろ、抱かれる覚悟でこいって言うのっ!
なんて考えてるうちに、彼女が上着を着始めてしまった。あ~あ、なんかもう今日は無理っぽいね。
素直に会計を済ませ、エレベータに乗り込む。とてもじゃないが、いつものようにキスを迫れるムードじゃない。
「じゃあ、また今度、ゆっくり飲めるときに飲みに行こうよ!」
「あっ、はい。必ず! 次回は私が払いますねっ!」
本当かね。世間話をしながら駅まで送り、そこで別れた。あ~あ、2軒目に行って、もっと本腰を入れて口説いていくつもりだったのになぁ。なんとも消化不良な夜だ。 
30半ばにもなって朝からディズニーに行ってる場合じゃないだろう! 
…と一人心の中でグチグチ言いながら、帰りの電車に。
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