








今月号からいよいよ『諭吉っ つぁん』から『栄一っつぁん』 にタイトル変更となる。 渋沢栄一は、妾を自宅に同居 させ、複数の愛人がいる女好き だったらしい。それでいてお札 の顔になったのだから、誰より も当連載の名前にふさわしい。 俺も栄一先生の恩恵にあずか りたいところだが、使える予算 は変わらず1万円。リニューア ルしたのはタイトルのみだ。 ダンディな紳士、 この指止まれ! 愛用の出会い系サイトPC・ MAXで女探しを始める。例に よって2、3万円はかかりそう な女からのメッセージばっかり が届く中、ひとつ気になる連絡 があった。 メッセージには〈今日、2人で 秘密のデートをしませんか?〉 と書かれている。なんとなく苦 手な言い回しだ。何が秘密のデ ートだ。 お相手のプロフィールを確認 すると、 52 才の痩せ型らしい。 画像は口元だけをアップで撮っ たもののみで、よくわからない。 自己紹介文には、 〈ちょっぴりワガママだけど根 はやさしい性格。レディーとし て大切に接してくれるダンディ な紳士、この指止まれ!〉 とある。おばちゃんの分際で キッツイな。でも面白そうでは ある。 〈ぜひ会いたいです。デートしましょう。条件などあります か?〉 もちろんワリキリ金額の話だ。 〈ホテルで秘密のデートのお手 当はイチ万お願いします〉 「秘密のデート」だの「レディ ー」だの書いてるくせに、要は ただの売春だ。とはいえ早々に 1万円以下で会える女「栄一っ つあん」候補が見つかってうれ しい限りだ。 ただし、「秘密のデート」と いう妙なワードを使う女は、会 ってから「セックスは別料金」 と言ってくる可能性もありえる。 念のため確認しておこう。 〈お手当、OKです。一応確認 ですけど、秘密のデートでは最 後までできますよね?〉 〈もちろん。大人の男女がホテ ルに入ったらエッチするに決ま っているでしょう。アソコも舐 めてもいいよ〉 おばちゃんにクンニはしたく ないが、会いましょう。 〈わかりました。何時にどこに いけばいいですか?〉 〈午後3時に車で迎えに来て〉 自宅らしき東京都足立区の住 所が記載されている。「〇号 棟」と書かれているのが気にな ってネットで住所を検索してみ ると、公営住宅の団地だった。 〈わかりました。到着したら連 絡します〉 史上最速級の即アポだ。女の 質はあまり期待できないが、急 いでいつも使っているカーシェ アの駐車場へと向かった。 「金がないからしょう がねーだろよ!」 住宅が何棟も林立する団地に 到着した。案内看板を頼りに、 指定の号棟の近くに車をつける。こんなピンポイントで自宅住所 を教えていいのだろうか。近隣 住民の目が気になりそうなもの だが。 〈〇号棟あたりに到着しました。 シルバーの車です〉 〈いまから行くわ〉 ほどなくして、ゆっくりと歩 いてくる女が見えた。遠目には 細めで肩を丸めた貧相なおばあ ちゃんっぽさを感じる。ヤバい な。 女は立ち止まってスマホをい じり始めた。すぐに通知が届く。 〈疲れるから、こっちまで車で 来て〉 わずか100メートル程度の 距離を歩きたくないらしい。 車を動かして彼女の近くに着 けると、外からドアを開けられ た。マスクをしているが、 50 代 前半とはとても思えない。明ら かに還暦は過ぎている。下手す ると 70 近くかもしれない。眉間 にシワが寄っており不機嫌な様 子だ。 「足が痛くて、歩きたくないん だわ」 「そうなんですか。ここまで車 で来ればよかったですね。すみ ません」 「じゃあ、行こうか。ラブホは 近くて高い方がいい? 遠くて 安い方がいい?」 「できれば安い方でお願いしま す」 「そうだと思った」 気持ち小馬鹿にしたトゲのあ る言い方だ。 「このラブホにカーナビで行っ て。私に道聞かれてもさっぱり わかんないから」 彼女はラブホの会員証を出し てきた。ポイントを貯めればホ テル代が無料になるアレだ。記 載されている店舗名から住所を調べて、いざ出発。 「いまさらながら、家の近くま で来て問題なかったんですか?」 「全然問題ない。外人とジジバ バと空き家ばっかりで近所づき あいもないし」 「一人暮らしなんですか?」 「旦那と娘と3人暮らし」 驚いた。既婚者で子供までい るのに、売春相手を家の前まで 呼んだのか。 「ご家族に見られるとまずいん じゃないですか?」 「別に大丈夫だって。旦那も娘 もウリやっていること知ってい るんじゃない? 奴らと話すこ とは、ほとんどないから知らな いけど」 ずいぶん仲が悪いようだ。彼 女は家事もあまりせず、主に旦那にやらせているらしい。ちな みに旦那とは会話がない程度だ が、引きこもりの娘とは全く反 りが合わず、今朝も怒鳴りあっ たそうな。 「それでよく一緒に暮らしてい ますね」 「あんた馬鹿? 金がないから しょうがねーだろよ!」 おー、怖い。いきなり大声で怒 鳴られて驚いた。プロフィール欄 には「ちょっぴりワガママ」と書 いてあったが、短気で性格が悪い だけの気がする。あんまり余計 なことは言わないようにしよう。 「しょうがないから 肩揉んで」 ホテルに入ると彼女は真っ先に風呂に湯を溜め始めた。 「あー、疲れた。足は痛いし、身 体はダルいし調子悪いわ。私が 風呂入れたから、お兄さんコー ヒーいれて。あと、冷蔵庫に無 料の水が入ってるから取って」 蛇口をひねるだけの作業で、 そんなに恩に着せる言い方をし なくていいのに。 彼女がようやくマスクを外し たので、コーヒードリップの準 備をしながら、横目で顔面を確認する。歯が何本か欠けていて、 ほうれい線も目立つ。一応化粧 はしているし白髪も染めている が、菅井きんのような印象だ。 「先にお金ちょうだい」 今度は金の要求だ。 「はい、どうぞ」 「明日病院行きたいから、あと 2千円くれない?」 転倒してヒザ周りを痛めてか ら一週間近く我慢しているが、一 向に良くならないらしい。しかし、身体が悪いことと売春金額 とは全く関係のない話。「知らん がな」としか言いようがない。 「俺も1万円が限界なんで勘弁 してください」 「ケチだねぇ」 後から追加請求してきといて ケチはないだろう。こいつは想 像以上のクセ者だぞ。 「じゃあ、しょうがないから肩 揉んで」 「足じゃなくて肩ですか」「足は素人に揉まれると逆に痛 くなるから肩ね」 イチイチ人を不快にする物言 いだ。仕方なく軽く肩をマッサ ージしてやる。 「痛い! 力入れすぎ。もう少 し優しくやって」 「はいはい、すみません」 きんさんは俺が淹れたコーヒ ーをすすりながら、肩を揉まれ つつテレビを眺めている。金を 払っているのに、なんで奉仕さ せられねばならないんだ。しか も、歯抜け老婆相手に。 想像するに、恐らく彼女は周 囲の人間に高圧的に接して支配 下に置こうとするタイプなのだ ろう。俺もいじめられていた経験があるのでわかるが、コイツ は従順な性質の人間だけを周り に揃えているに違いない。絶対 に二度と会いたくないタイプだ。 「乳がんで取ったのよ。 なんか文句ある?」 俺が一足先にシャワーで身体 を洗っていると、遅れて彼女が 入ってきた。瞬間的に、思わず 息をのんだ。あるべきものが片 方ないのだ。 「乳がんで取ったのよ。なんか 文句ある?」 「すみません。ちょっとビック リしちゃいました」 そう、左の乳房が切除されているのだ。手術は4年前だそう だが、傷跡も生々しい。裸にな るのだから、片乳がないことは 事前に伝えておくべき情報だと 思うが。 「ビックリっていうより、嫌そ うな顔ね。レディーに対して失 礼よ」 とっくに閉経してるババァの くせに、レディーとくるか。肌 はしわしわにくたびれているし、 足も細くなって老人らしさ全開 なのに恥ずかしくないのだろう か。面倒くさいが、大げさにで もお世辞を言っておくか。 「嫌なんて思ってないですよ。 陰毛もきれいに剃ってあるし、 マニキュアもしているんですね。 美容に気をつかっているのがわ かりますよ。セクシーだなって 思いましたもん」 「そりゃそうよ。やっぱり女を 忘れたら終わりだからね」うれしそうにニヤついてる。 本気でまだまだ女として価値が あると思っているらしい。 「お姉さんは、風俗経験あるん ですか?」 「なに? 私が売春婦っぽいっ て言う気?」 明らかにベテラン売春婦だろ うから風俗でも働いていたのか 聞いただけだが、イチイチつっ かかってくるのが疲れる。 「いや、深い意味もなく聞いた だけですけど」 「昔、熟女デリヘルで働いていたけど4、5年くらいよ」 4、5年も働いていたのかよ。 曰く、結婚後数年で、一人社 長だった旦那の建築会社が倒産。 それから旦那は建築現場のバイ トを始めたが、以前のように贅 沢はできなくなった。おかげで 彼女は風俗を始めたらしい。 「貧乏は絶対イヤだったのに騙 されたようなもんよ。それから もう全然話もしない」 彼女は風俗で稼いだ金をすべ て自分の服や宝飾品に使ったそ うな。旦那さんに同情せざるを 得ない話だ。 「レディーを気持ち よくするほうが優先」 「お兄さん、レディーがいる前 でAVは観ないでね。いくらな んでも失礼でしょ」 ベッドにて、これからセックス する段になりAVを観ながら気 持ちを鼓舞しようとリモコン操 作していたが、ダメ出しが入っ た。干上がった歯抜け菅井きん 相手では勃起できそうにないぞ。 「あんた、全然女ゴコロをわかっ てないよね。彼女いないでしょ?」 「いないですけど」 「モテなそうだと思ったわ」 グウの音も出ないが、性根の 歪んだ意地悪婆さんに言われた くはないぞ。 「ほら、見て」 ベッドの上で全裸になり女豹 のポーズで誘惑している。年寄 りの女豹とか、見るに耐えない んですけど。 「とりあえずフェラチオしても らっていいですか」 「まずはクンニして」 「いや、俺あんまり舐めるの得 意じゃなくて」 「は? なに言ってるの? フェラしてもらいたいならクンニ でしょ。レディーを気持ちよく するほうが優先」 マジかよ。彼女はベッドで仰 向けに寝っ転がった。大股開き の股間を見ると、マンコ部分は きれいに剃毛されているが、肛 門の周囲にはケツ毛がボサボサ 生えており、大半が白髪だ。 「アソコをぼーっと眺めてない で早く舐めてよ!」 「はいはい」 意を決して、舌先を伸ばして クリトリスを舐める。幸いニオ イはほとんどないので助かった。 「ワンパターンだね。クリだけ じゃなくて、アソコの入口の方 も舐めるのよ。これから入れる んでしょ?」 息を止めて膣口に舌を這わす と、ほんのり苦味を感じた。オ エー! 「もうそろそろフェラしてください」 「わかったよ。女をイかすには、 まだまだ練習が必要だね」 コーチのつもりらしい。攻守 交代してもらうと、デカい口を 叩くだけあってフェラはなかな か気持ちよかった。芯が入った 硬い勃起状態となっている。 「もう入れていいですか」 「いいよ。ちゃんとイカせてよ」 コンドームを着けて正常位で 挿入する。ユルめの膣に出し入 れしていると、目に入ったのは 左胸の手術痕だ。よく見ると、 皮膚のすぐ下で心臓がドクドク 動いているのがハッキリとわか る。どうしてもグロテスクに見 え、即座に中折れしてしまった。 「若いのに弱いのね」 またダメ出しだ。うるさいなぁ。 「弱いとか言われると余計に萎 えちゃうんで、あんまり言わな いでもらえますか」「弱いんだから、しょうがない でしょ。まだ私、一回もイケて ないんだけど」 「イカせられなそうですね」 「何? じゃあ、もうやめよっか」 「別にいいですけど」 「じゃあ、もう帰ろ!」 完全に空気が悪くなり、その まま終了となった。
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