



ストーカー作戦が成功をおさめ、無 事に喜多田さんとの接触に成功した。 感触は非常にいい。彼女からSNS を教えてもらったってことは、こちら からDMを送っても不自然じゃないっ てことだ。いや、彼女自身、連絡して 欲しいって望んでるんじゃないか。よ し、ここは一気に攻めるぞ! 61 才の俺が今、地獄の底まで追いかけてでも絶対にヤリたい女のファイル。 そう思って気合いを入れた矢先、 39 度を超える高熱にみまわれた。解熱剤 を飲んでも全く熱が下がらないし足の 付け根も腫れて痛い。 すぐに受診し血液検査を受ける。 ﹁何かの感染症であることは間違いな いけど、性病の可能性も少しはあるな。 最近、身に覚えはないですか?﹂ えっ、チナッちゃんしかいないやん。 もしかして彼女から病気をうつされた のか? 長いこと男性とはヤッてない って言ってたのに…。 チナッちゃんとの素敵な思い出がガ ラガラと崩れていく。熱とのダブルパ ンチで頭がクラクラして倒れそうだ。 抗生物質を注射されて帰宅したが、 今度はペニスがめちゃくちゃ腫れてき た。通常の倍ぐらいの太さにまでなっ ている。これはヤバい。性病間違いな しやん。チナッちゃん、堪忍してくれ よ。 翌日、再び病院を訪れると、医者から驚きの検査結果が告げられた。 ﹁人喰いバクテリアって聞いたことあ りますか? 正式には劇症型溶血性レ ンサ球菌感染症って言うんやけど、た ぶんそれに間違いないですね﹂ なんかテレビで観たことあるぞ。め ちゃくちゃヤバい奴やん。 ﹁そう、下手したら手足や陰部が壊死 したり、死ぬこともあるんですよ。ま あ、昨日も抗生物質注射したし、大丈 夫やと思いますけど。2週間ほど抗生 物質で治療しましょう﹂ 本当に危なかった。ペニスが壊死す る可能性もあったってことじゃないか。 そんなん死ぬよりツライやん。セック スできない人生なんて考えられない。 そして、チナッちゃん、疑ってごめん。 こんな非常事態もあったので、2、 3日は喜多田さんにアプローチする気 にもなれなかったのだが、しばらくす ると熱はすっかり下がり、徐々にペニ スも元に戻ってきた。 よし、そろそろ行動開始だ。会えなくてもやれることはある。まずはSN Sのメッセージを送ろう。最初は簡単 に感想を伝えるくらいから始めるのが いいだろう。 『インスタ、見ましたよ。フォロワー 数もすごいですね。美容系のインスタ 見たことなかったのでちょっとドキド キしてしまいました』 1時間くらいで喜多田さんから返信 があった。早いな。SNSではレスポ ンスの早さが大事なんだろうな。 『ありがとうございます! なんか恥 ずかしいですね。お教えしない方がよ かったかななんてちょっと思ったりし ましたが、連絡いただいてやっぱり嬉 しいです。貴重な男性の感想、待って ますね』 うん、やっぱり脈ありそうだな。互 いに踏み込みはしないが、いいジャブ を打ち合ったような感触だ。これから もメッセージで少しずつ距離を詰めて いこう。 ただ気を付けないといけないのは、 頻度と内容だ。 喜多田さんとの関係性(子供同士が 同級生、嫁さんとも顔見知り、隣町と いう比較的近い場所に住んでいる)を 考えると、リスクを考えて節度を持っ てアプローチすることが重要だ。あま りガツガツと踏み込んでいくと、喜多 田さんの腰がひけてしまう可能性があ るし、逆にのめりこまれても困る。 週1回くらいで、サイトそのものの 感想から徐々に、喜多田さん自身への コメントを増やしていくのがいいだろ う。時間はかかるが、ここは焦りは禁 物だ。 2回目のメッセージ。 『最初は美容なんて何のことかよくわ からなかったけど、だんだん面白くな ってきました。説明わかりやすいです ね』 『河内さん、ありがとうございます!できるだけ丁寧に説明しようと思って います。最初の方はボロボロだったん ですけどね。恥ずかしくて見返せませ ん』 3回目のメッセージ。 『コメント読んでると、みなさんすご い反応ですね。美容のカリスマですや ん。あと、インスタって加工した画像 ばっかりですけど、喜多田さんは全然 加工とかされないんですね』 『河内さん、ありがとうございます! 美容については、ビフォーアフターなど リアルに伝えないと参考にならないし、 説得力がないので、加工はしません。照 明はしっかり当てますけどね(笑)。や っぱり、知ってる人に素顔を見られる のは恥ずかしいなぁ』 少しずつではあるが、いい感じで距 離が詰まってきている。体調も万全に 戻ったし、そろそろSNSだけではな く、リアルでのアプローチもしていく か。再びストーカー作戦の実施だ。 そんなことを考えていたら、彼女か らメッセージが届いた。 『河内さん、お忙しいなか申し訳あり ませんが、一度お時間いただけません か。色々とお訊きしたいことや、相談 したいことがありまして。急なお願い ですいません!』 なんと、喜多田さんから会いたいと 申し出があるなんて! やったー! と一度は喜んだのだが、 いや待てよ。いくら何でも急に会いた いってちょっと唐突というか、不自然 だよな。 もしかして、これはマルチ商法か何 かの勧誘なんじゃないか。マルチも美 容関連のものが多いだろうし。 浮かれていた気持ちが一瞬で醒めた。 どう考えても純粋に俺に会いたがって るとは思えないし、仮にそうだったと してもこんな誘い方はしないだろう。 さて、どうする。もし勧誘か何かだ ったらキッパリと断るか? もしくは 少しは関心があるふりして、もっと距 離を詰めていく? どちらにせよ、まずは会ってみよう。 考えるのはそれからだ。 『やましいことなくても、河内さんと 私が二人でいるとこ見られて誤解され るとまずいですよね。近所はもちろん、 繁華街とかも誰に会うかわからないの で…』喜多田さんに指定されたのは、JR 環状線の●●駅の駅前だった。普通、 何か用事がないと絶対に降りない駅だ。 いっそう怪しいぞ。 そして、待ち合わせの日がやってき た。昼過ぎ、●●駅で下車して改札を 出る。 なんか緊張するなぁ。でもこれは、 ターゲットにアプローチするドキドキ 感というより、勧誘されるんじゃない か、変な所に連れていかれるんじゃな いかっていうドキドキだ。 いたいた、喜多田さん。前に会った ときより、そしてインスタの画像より バッチリメイクした顔で、少し派手目 のワンピース姿で微笑んでいる。いい 女、完璧なアラフィフだ。 さぁ、これから俺はどこに連れてい かれるんだろう。
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