裁判員が担当するのは窃盗な どの小さな事件ではなく、有罪 となれば懲役クラスの大事 件。否応なく被告人の(被害者 も)人生を左右する立場に立た される。それだけでもかなりの プレッシャーだが、《運悪く》殺 人事件を担当することにでもな ったら、その重圧は想像がつか ない。 ただ、少なくとも最高裁がし きりにPRしている《誰にでも できる裁判員》のイメージとは 大きなギャップがあるように思 う。凶悪な事件では、求刑Ⅱ死 刑となるケースがあるからだ。刑期については、このところ 厳罰化の傾向があるとも言われ るが、それは死刑にも当てはま るのか。死刑を選択する自分を 思うだけで憂諺になってしまう ぼくは、いまの日本じゃ少数派 ぼ くたちは、何を基準に有罪事件 の量刑を決めればいいのだろう。 頭の中が疑問符だらけになっ に属すのか。ゆくゆくは死刑が廃止になる という井垣さんだが、すぐにそ うなるかどうかは、また別の話 だ。現実がどうなのか、という エピソードから紹介しよう。 「フジテレビが放送した、模擬 裁判番組がありましてね。私は 裁判官役として出演したんです が、結論は私だけが無期。1対 8で死刑でした」 ぼくは残念ながら未見なのだ が、光市母子殺害事件を題材に したその番組は、評議の場面で 裁判員役の参加者が涙を流すほ ど白熱したと聞いたことがある。 光市の事件についてはあとで じっくり触れるとして、どうい う理由で死刑が選ばれたのだろ うか。 「番組に参加した息子を 持つ母親の場合、死刑を選択し たのは、それが唯一、安心でき る判決だからでした。もし被告人が刑務所を出て再び殺人でも したら、国民代表として責任が 取れないじゃないかと言うんで すね」 「私も結果には驚きましたが、 無理もないと思いました。その お母さんにしたって、刑務所が どういうところなのか、イメー ジすらわからないわけですか《巳 現在の刑務所では、刑期を終 えれば自動的に出所となる。そ のため、中には再び重大事件を 起こす人間がいることは確かだ。でも、そうならなかった。真 剣に議論を重ねるうちに、全員 の気持ちが死刑に傾いてしまっ た。だとすれば、裁判員制度開 始後も、同じような展開になっ て不思議じゃない。むしろテレ ビ番組以上にあっさりと、死刑 が決定するのかも。死刑はちょ っと、と思っているぼくだって、 いざそのときがきたら例外では ないだろう。 《もし出所後、もっとひどい事 件を起こしたら、あんたどうす るつもりなんだ。それは私たち の責任でもあるんだぞ!》 こんな調子で迫られたら、た ぶん言葉に詰まる。 《だからといって、死んでお詫 びをしろというのはどうかと。 それで何かが解決するとも思え ないし》「量刑相場というのがあって、 これまでの判決書集を見れば、 おおよそのところはわかるんで すよ。何も考えず、検事の求刑 をただ8掛けして判決を決めた ら、あとは知らんぷり。そうい う気楽な裁判官もいるそうです」 死刑にも相場があって、現在 のそれは《永山基準》というの だそうだ。1968年に起きた 連続射殺事件で、犯人の永山則 夫に対して下された判決要旨が、 死刑判決のガイドラインになっ ているのだ。 具体的には9項目が挙げられ ている。 ・犯行の罪質 ・動機 ・態様(ことに殺害手段や方法 の執拘性と残虐性) ・結果の重大性(ことに殺害さ れた被害者の数) ・遺族の被害感情.社会的影響 ・犯人の年齢 ・前科 ・犯行後の情状 これらの要素からやむをえな いと認められる場合には、死刑 の選択も許されると考えられて いるのである。永山則夫は事件 当時未成年(岨才)だったが、 それでも死刑になっている。 これ、厳密なルールではなく、 おおよその基準であるところが ミソだと思う。永山則夫は4人 を射殺して死刑になったが、そ こまで行かなくても被害者が3 人で他の要素を満たしていれば 死刑判決になってきている。も ちろん社会的注目度も大きいし、 死刑判決を下すには苦慮するこ とが多いだろうが、これらを全 部満たしていながら無期懲役と することなど、あり得ないのが 業界の常識なのだ。 井垣さんは、長い裁判官生活 で、一度だけ死刑以外に考えら れない事件に遭遇している。審理したところで結果が見えてい る裁判を通じて、刑事裁判の限 界を思い知らされた。日本の裁 判には《教育》という視点が決 定的に欠けていることに気がつ いたのだ。 「応報刑と言いますが、噛み砕 いて言えば、やったことと釣り 合いが取れる判決を、という考 え方です。ヨーロッパの一部の 先進国のような、悪いことをし た人を刑務所で教育することに よって矯正させよう、そのため には何年必要か、という発想で はないんです」 応報刑だから基本的に死刑が ある。ムショに閉じ込めて自由 を奪うまでが仕事で、被害者へ のケアもそこで終わり。自由を 奪う程度じゃ済まされないと判 断され、永山基準を満たしてい れば「死んで貰います」だ。その典型ともいえるのが、前 述の光市母子殺害事件だ。 的年4月、当時略才の少年が 山口県光市で女性を殺害し屍姦。 さらにその娘を窒息死させ、財 布を溢んで逃走した事件である。 ぞっとするような残虐さに加 え、少年犯罪でありながら刑事 事件になったこと、被告人が反 省の意思がみられない手紙を出 していたと報道されたことや、 被害者遺族への同情から、大き な社会的関心を集めている。 そして冊年、一審、二審で無 期懲役だった判決に、最高裁は 高裁への差し戻し判決を下す。 無期は手ぬるいと判断した、実 質上の、死刑宣言である。 それでもあきらめない弁護団 に対しては批判が続出。大阪府 知事に当選した橋下弁護士が、担当弁護士に懲戒請求するよう、 呼びかけたことも記憶に新しい。 高裁への差し戻し判決の論理 椛造に、井垣さんは怒りを隠さ ない。 「最高裁の判断には、世論が完 壁に反映していると思う」 無期では被害者が浮かばれな い、未成年だからと特別扱いし てたら続発する少年犯罪に市民 の安全な生活が脅かされる。そ んな論調がマスコミ報道で目立 ったのは確かだ。二審までは、 被告人が犯行時肥才だったこと、 計画性が認めにくいことなどを 理由として無期だったのだが、 最高裁はこの点を低く評価した。 そうなると殺害人数こそ2名だ が、永山基準を満たすといえば 満たすわけだ。 いや、もっと踏み込んでいる か。永山判決では、誰がみても死刑以外の選択肢は考えられな い事件であることが死刑の条件 とされていたようなのだが、光 市母子殺害事件では、特に酌量 すべき事情がない限り死刑の選 択をするほかないと、はじめに 死刑ありきとも受け取れる判断 を行っている。これに対し、井垣さんは、現 在の最高裁判官たちにはこのケ ースを読み解く力量が基本的に 欠けているという。 まず、たぶん彼らは家裁で少 年事件を担当した経験がない。 しかも、最高裁に限った話では ないが、日本の法律家は(判・ 検事・弁護士とも)教育学や心 理学、社会学の勉強をまったく していないので、被告人の心の問題が理解できない し、理解しようと努 力している人もほと んどいないからだ。
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