宗教施設で行事の当日に強姦日枝神社巫女レイプ事件

被害者は日枝神社で巫女として仕えていたＡ子さん・彼女に大きな心の傷を与えた加害者は、同神社で現役の神職を務める男だった。もっとも、プライベートではちょっとした問題を抱えていた。年に神社で事務職をしていた女性と結婚したものの、次第に夫婦仲は冷め、事件当時はすでに別居中だった。わがままな匿瀬の性格に加え、いずれ九州の実家で夫の両親と同居しなければならない現実に、妻が嫌気をさしたらしい。単身生活を余儀なくされた鹿瀬、セックスレス状態にあった。一方、被害者であるＡ子さんが巫女として日枝神社に正式採用されたのは４月だった。事件発生からわずか２カ月前のことだ。彼女にとって皿女は、学生のころ初詣のアルバイトを経験して以来、ずっと興味を抱いていた仕事だった。念願が叶ったこともあり、仕事への意欲は人一倍あったはずである。ところが、いざ仕事を始めると、彼女は思い描いていた世界と現実とのギャップに頭を悩ませることになる。その最たるものが、人間関係だ。皿女にとって神職は絶対的な存在で、命令には必ず従わなければならないとのルールがこの業界にはある。Ａ子さんもはやくその環境に慣れようと必死になったが、それだけに空回りも目立ち、そのつど先輩正女や神職連中から厳しい導を受けた。迎えた事件当日。日枝神社は山王まつりの中でも最大規模のイベント「神幸祭」の最中だった。午後７時。その日最後のプログラムである民謡大会が終わり、Ａ子さんは上司の指示で境内の仮設テントへ向かった。テント内ではすでに打ち上げが始まっており、何十人もの神職や氏子たちが賑やかにお神酒（日本酒）を飲んでいる。あいにく、その場にいる女性はＡ子さんただ１人。上下関係からいっても一番低い立場にあったことから、自然、彼女はホステスさながらに給仕を務めるハメとなった。注がれた酒を一気に飲み干すと、鹿瀬はＡ子さんに盃を戻した。「キミも飲みなさい」彼女は体質的にアルコールに弱く、飲めば必ず湿疹が出る。が、匿瀬のことばに素直に従ったのは「神職は絶対」という業界の因習が頭にあったからである。「正女のＡ子さんが、匿瀬さんのことを『かっこいい」って言ってましたよ」むろん、Ａ子さんには身に覚えのない話だ。しかし匿瀬は真に受けていた。〈妻と不仲だったことから、性の処理をしたいと被害者の容姿を見て劣情した〉（冒頭陳述より）午後９時。ようやく酒席から解放された彼女は、クラクラの頭を抱えて社務所地下２階の女子参篭（さんろう）室に入った。本来は祈祷を行う神聖な場所だが、日ごろから正女の更衣室として使われている部屋だ。むろん、男子禁制である。私服のワンピースに着替えたＡ子さんは、酒の酔いを覚まそうと体を休めた。部屋の外から男の声が聞こえたのは、それから間もなくのことだった。顔を上げると、魔瀬が部屋に足を踏み入れていた。呆気に取られたＡ子さんに素早く近づき、強引に体を抱き寄せる。「なあ、いいだろ？」「ちょっと、止めてください！」懇願を無視するように、匿瀬が彼女を押し倒す。そしてワンピースをたくし上げながら、信じがたい暴言を吐いた。「みんなに言い触らすぞ、淫乱だって！」「お願い、止めてください！」必死の抵抗も虚しくＡ子さんは犯された。「神職には逆らうべからず」の文字も頭によぎったのだろう。彼女に出来るのは、ただただ歯を食いしばり、耐え続けることだった。屈辱のどん底に突き落とされたＡ子さんを尻目に、匿瀬は正常位から騎乗位に体位を変え、さらに彼女の体を弄んだ。我慢の限界を迎え、Ａ子さんは哀願した。「もう止めてください。私、できない……」ここにきてようやく罪悪感が芽生えたのか。あるいは誰かに助けを求めることを恐れたのか。いずれにせよ、射精を迎えぬままペニスを抜き取った匿瀬は、何事もなかったかのようにその場を立ち去っている。身繕いを済ませたＡ子さんは、泣きながら社務所を離れた。〈首をくくって死のう……〉思い詰めた様子で境内を歩いていると１人の神職が近づいた。問われるまま、彼女は強姦の事実を打ち明けた。「警察に知らせたほうがいい」まもなく、何台ものパトカーが神社に到着。そのまま警察署に赴いたＡ子さんは、女子医大病院に運ばれ、匿瀬は連行された。ところがその後、予想だにしない事態が起きる。取調べの際、匿瀬が犯行を全面否定したのだ。「（セックスは）無理やりではなく、合意の上でした」廠瀬の弁明は巧妙で、事件以前からＡ子さんとは個人的な付き合いがあったかのように供述し、さらに犯行時も騎乗位で結合したことから、むしろ彼女のほうが積極的だったとの理屈を押し通した。何故か、その主張を警察は信じた。翌日、釈放された匿瀬は間もなく日枝神社を退職し、九州の実家に戻った。不仲だった妻とは即座に離婚している。一方、Ａ子さんは強姦のショックや、彼女を狂言扱いする警察の態度に心身を消耗し、ＰＴＳＤ（心的外傷後ストレス障害）を発症した。このまま風化するかに思えた事件が再び動き出すのは、それから７カ月あまりが過ぎた明年１月下旬のことだ。犯行を否認しながらも、その裏でＡ子さんに５００万での示談を提示していた慶瀬の動きに捜査陣が不審を抱き、ついに逮捕に踏み切ったのだ。明年３月ｒ日、東京地裁の法廷に、黒いスーツ姿の匿瀬がのそのそと姿を現わした。起訴状が読み上げられると、以前の態度とは一転、匿瀬は犯行を全面的に認める。公判の中で、男性検察官は匿瀬を晩みながら怒りをぶつけた。「私は加年近く検事をやっているが、宗教施設で、しかも宗教行事の当日に強姦した、という事件を扱ったのは、検事として初めてのことです」対して、弁護人から今後の身の振り方について質問された匿瀬は次のように述べている。「もし、お許しをいただけるのなら、この仕事（神職）を続けさせていただきたい、と思います」虫のよすぎる男の言い分に、傍聴席からざわめきが起きた。むろん、被害者・Ａ子さんの怒りはその程度では済まない。〈鹿瀬を絶対に刑務所に入れてもらいたいです。本当のことを言うと、被告を殺してやりたいほどの気持ちです〉（Ａ子さんの供述調書より）被害者感情を逆撫でし続けた匿瀬に下された一審判決は、懲役３年。量刑に不服があるとして東京高裁に控訴するも、棄却となった。

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