お見合いパーティーでの勝ち組女負け組女

フジテレビの月９ドラマでも「婚活』がテーマに取り上げられるいま、適齢期の女性はパートナー探しに余念がありません。お見合いパーティ会場は彼女らの主戦場と言っていいでしょう。むろんそこには『人間は見た目が十割」という社会の構図をさらに濃縮した厳しい現実が待ちかまえています。顔ぶれが凡庸なのは、本日の参加条件が「・男性Ⅱ、〜列代会社員・女性Ⅱフリー」というユルュル設定のせいでしょう。回転寿司形式のトークタイムが始まったようです。広告代理店小間使いのフリーター、アャパン似の③アュミさんが、サラリーマン風の男性とおしゃべりをしています。どうしてこんな可愛い．がこんな場に？驚いたことに彼女はサクラではありません。今日は大学時代の友達に『ダダで参加できるから』と誘われたのです。カレシは半年いませんが、元よりこんなパーティなんぞに５５００円も払ってやってくる男に興味はなく、本人はあくまで「お付き合い」気分です。次から次へと目の前に座る男性たちは、⑬を質問攻めにしていきます。「アュミさんは休日は何をされてるんですか？」「まあ、買い物とかです」「へえ、どんなところに行くんですか」「まあ、渋谷が多いかな」「渋谷はぼくもよく行きますよ」「そうなんですか」持ち時間１分しかないのに、どうしてこんなくだらない質問ばかりするのだろうと不思議な⑬ですが、次の男もそのまた次の男も同じような会話を繰り返すだけでした。相手の印象を書き込むようにと事前に渡された参加者リストも真っ白なままです。 ⑬から３つ離れた隣の席では、墨田区の食品メーカーに勤める型才のＯＬ燕三中村上似の感が如代のサラリーマンとしゃべっています。地味顔の同僚と一緒にやってきた彼女は今回が５回目の参加。真剣に男性との交際を考えているのですが、まだカップルにはなれていません。ルックスもさることながら、その真剣さが男をドン引きさせるのでしょう。「どちらの会社に勤めてらっしやるんですか？」「××っていう電気関係の会社に勤めています。あまり大きくないのでご存じないとは思いますが」「ご家族は？」「両親と兄貴がひとり」「休日とかは何をされてるんでしょうか？」「んｌ、ゴルフとかですかねえ。あとは飲んだりとか」手持ちのリストに、男のプロフィールをすばやく書き込む回転寿司タイムの後は、お分間のフリータイムが始まりました。” 女性は着席したまま、男性だけが気になった相手の元に出向く方Ｉ式です。 ③の元には４人の男が殺到しました．先頭の男を筆頭に彼女の周りを輪のように取り囲み、次々と質問攻めにしています。すでにしゃべり疲れている⑬は、ただただ時間をやり過ごすことしか考えていません。一方の愚ですが、目の前の椅子は空席のままです．隣に座る友人の前もこれまた空席。知対犯なのですから理論上は手持ちぶさたになるはずがないのに、⑬が男を集めるせいであぶれてしまったのです．おかしなことに、誰ともしゃべらず中央に突っ立ている男もチラホラ見受けられます．つまり彼らは亀としゃべるぐらいなら立っていたほうがマシだと判断したのです。いたたまれなくなった富はおもむろに携帯電話を取り出し、メールチェックするブリで忙しさをアピールし始めました。このあたりの屈折した心情は本人にしかわからないでしょう。隣に座る友人が耳打ちしてきます。「どうせサクラなのに、あんな．に行ってバカよれえ」「ホントだよね」どうやら亀たちには、カワィィ女性参加者はみな業者の仕込んだサクラに見えるようです。と、そのとき１人の男が倉の前に座りました．会員番号、番．リストによればよりによって犯人の中でも倉が最低点数をつけた相手です。会社名はよくわからず、長男で、顔もイマイチ。とても結婚する気にはなれません。とはいえ男は男で倉のことを気に入ったわけではなく、なんとなくお情けで座ってみただけのこと。なんら盛り上がることなく会話は終了しました。⑬が無記入で提出しようとしたところ、隣の友人が紙を覗いてきました。「ねえねえ、何番にした？私Ｆ番」自分一人がシラけるのもどうかと、一番よくしゃべった塑番と記入したところ、まんまとカップルが成立してしまいました。残念ながら友人は不成立です。主催者に促されるまま友達と一緒に会場を出ると、翠番がエレベータ前で待っていました。「どうもありがとう」「あ、はい」「この後、どうされます？」「すいません、友達と一緒なので」「…そうですか。じゃあ携帯番号を交換しましょうか」「携帯持ってないんで」瞬時に気まずい雰囲気になりましたが、二度と会う気のない⑬には関係ありません。なおもしつこく食い下がる塑番にｍｉＸｉの偽ハンドルネームを伝えて、さっさと駅へ向かうのでした。そのころ鴬は当然のごととくカップル不成立で、会場の外で友達と愚痴りあっていました。「今回はイマイチだったね」「つｌか男の平均年齢行き過ぎだし」「やっぱ年収の高いのに行く？ダダじゃないけど」「そだね」自分のことを棚に上げてずいぶん勝手な言い草ですが、女としてのプライドを取り戻すには悪口を言うしかないのでしょう。受付にはすでに夕方の部の参加者が集まっています。せっかく新宿まで来たんだからもう一回参加しておこうかと、再び新しい番号札を受け取って着席する２人にはまた長い長い卯分が待っているのでした。

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