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今回、俺はーつの企画を思いついた

初対面のキャバ嬢を一夜にして落とすべくニセの金持ちに成りすまそうというのだ。

むろん、簡単なことではない。相手は客の一挙手一投足に目を光らせ、人物の値踏みに目のないキャバ嬢。口先だげのウソなどすぐに見破ってしまうだろう。


会社の社長の名刺を作り、新宿の露天商で偽口レックスを調達、アルミのアタッージュケースと高級スーツは、アバレル関係の友人から一式借り受けた。場所選びも重要だ。六本木や歌舞伎町など、本物の金持ちがウョウョいる街でこちらのインバクトが小さくなる。なるべくなら繁華街から離れた地味な土地がいいだろう。

一通りの準備を撃えた俺は、同じキャバクラ好きの友人に同行を求めより社長っぼく演じ切るには共演者が不可欠。頭の回転の早いヤツに、名アシストを期待したい。


「おもしろそうじゃん。だったら見せ金も用意しなきゃ」

財布には最低50万くらいあるように見せかけないとキャバ嬢っで何気に中を覗いてるから。うん、なるほど。

午後10時コンビニ客を数人見かける以外、辺りに人影はない。出かける店はすでに決めている。クラブ。数日前にネットで見つけた店だ。ボーイの案内で席について間もなく、俺の隣りにはエキゾチックなミナミが、飯塚の横には小柄なリンカ21が座った。両者とも、場末のキャバ嬢にしてはかなりの上玉だ。


「ねえお客さんたちって、どういう知り合いなんですか」

「いやー、慶応時代からの付き合いなんだけど、今日、3年ぶりに会おうって」

実にわざとらしいやり取り。我ながら尻がむずかゆい。だが、キャバ嬢たちには想像以上に効いたらしい。 脈アリそう感じた俺は、ただちにミナミを場内指名を払い(退店まで同席させること)に 自分の名刺を渡しさらにホラを吹きまくる。フレンチイタリアンレストランを経営してるだの、年収が4千万あるだの。話のスケールがドンドンでかくなり、自分でもちと怖くなってきたが、酒の勢いもあってか口が止まらない。


ピリピリピリ午前0時過ぎ。電話を切り、すぐにミナミを誘った。

キミとも少し話がしたいんだけど、別の店で飲み直さない?

いくーホントは2時までなんだけど、上がっちゃう。そこまでして来たいのかよ。すげーなー、社長バワーってのば。

店の前で飯塚と別れた後、歌舞伎町へ向かった俺とミナミは、ショットバーで数杯飲み、さらに彼女の希望で寿司屋の暖簾をくぐった。先ほどから大ト口ばかりバクついているミナミが、視線を向ける。何をどう話したのやら、いつの間にか、俺がミナミに店を持たせてやるといっ話題になっていたのだ。


「もちろん」

「じゃあさ、私がプロデュースするから店やんない?儲かるみたいだしさ」

「じゃあ一度企画書出せよ。良い感じなら出資してやるから」

「ん、わかったー」

寿司屋を出た俺はミナミの手を引っ張り、ホテル街へ足を向けた。

「休んでいこうか」

「え、なんでえ?ダメだよ帰ろうよ」

殊勝なことを言っちゃいるが、本心でないことは目をみればわかる。ダメ押しするか。 

「おいおい。これからお前は、俺のビジネスパートナーになるんだろ。だったらお互い、体もツーカーになっとかなきゃ」

「ツーカー」

「ん、それもそうだね。じや、行こっか」

いざホテルに入ると、ミナミは積極的だった。いいねえー。やればできるじゃん。俺はすっかり興奮していた。普段は手強いキャバ嬢をこうもたやすく手玉に取れるなんて。けど、もしいま俺が年収350万、貯金17万の弱者とバレたら、確実に殺されるよな。それも塵のごとく…怖っ。


財布のヒモが固ければショボイ客と同じ

翌日のタ方、自宅のベッドに寝転びながら、俺は考えた。確かに、昨夜は完壁に金持ちを演じ切れた。夢の即ゲットもなんなく成功した。けど、何となく手放しで喜べないのは、あまりに出費が大きかったせいだろう。

キャバクラの飲み代だけでも飯塚と2人で約6万円使い、さらにアフター、ホテル代、タクシー代でも3万以上。早い話、6万もかかった計算になる。いくら演出のためとはいえ女のコのドリンクやフルーツ盛りに金を使い過ぎたんじゃ、この企画の意味がない。ならば、次回のトライアルは、社長という肩書きやハッタリだけで挑んではどうか。

飲む酒は通常の飲み放題の焼酎、ドリンクも気に入ったコのみに限定すればいい。

その日の夜、午後11時。再び俺は飯塚と共にH町へと向かった。 目指すキャバクラは、昨夜訪れた『S』の2軒となりである。例によって、サル芝居を始めた。

しかし・・結論からいえば、見事なまでの失敗に終わった。2時間で4人の女のコが付いたにもかかわらず、ー人として、アフターに誘えない。むろん、飯塚も同様である

ま、当然かも。俺は社長さまなんだとふんぞり返るくせに、女のコのドリンクや食べ物のオネダリをことごとく断わるのだから。キャバ嬢にとっては、金のない客よりも感じが悪かったに違いない。つまりは、こういっことなのだろう。キャバ嬢が好きなのは、あくまで自分の利益に直結するリッチメン。いくら金を持っていても、財布のヒモが固ければ、ショボイ客と変わりはないのだ。ふう、出直しますか。


ドン・キホーテで売っている「百万円冊メモ帳︵定価500円︶」という商品をご存知でしょうか。金額の部分に「百万円」と書かれたお札がデザインされたメモ帳なんですが、やたらとクオリティが
高く、パッと見だと1万円札の束にしか見えない代物です。

俺はこいつを使いガールズバーの女の子をパパ活の道に引きずり込んでいます。まず下準備として、茶封筒にこのメモ帳をいれたら、適当なガールバーに入り、女の子が自分の前に来たところでこう切り出します。

「ちょっと声出さんといてな。これ見て。競馬で87万当たってん。ヤバいやろ」
暗がりの中で、茶封筒の口をパカッと開けて中をみせれば、ほぼ全員が「えっ! すごい!」と目を見開きます。
「声出すな言うたのに。な、ヤバいやろ? 俺な、いまめっちゃいい気分やねん。お姉ちゃんめっちゃタイプやし、仕事終わったらメシでも食べ行こ。全部おごったるよ」
大金を持つ気前のいい男になんでも奢ると言われて、テンションの上がらない女の子はいません。高確率で、というか特に用事のない女の子ならほぼ間違いなくアフターに付き合ってくれます。
女子の胃袋なんてたかが知れています。適当な居酒屋か焼き肉屋に入って好きなものを注文させたとしても、いつもの飲み会程度の金額しかからないのです。
ポイントは「ギャンブルで大金を当てた気前のいい男が、何でもおごってくれる」という状況に、女の子が興奮するということ。いざ飲み始めると、終始アゲアゲの楽しい時間になります。
その勢いで「な、俺一回パパ活してみたかってん。」
この作戦、合計で5回ほど実行してますが、失敗したことはたったの一度もありません。


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