
婚活パーティに女2人で参加しているコンビは、たいていどちらか1人は付き合いでついてきただけだったりする。どうせタダなので友達のために付き添ってあげているのだ。
出会いカフェに出会いパーティー、婚活パーティーで最後まで残っている女の子にも良い子が残っている可能性はあるのか。いろんな出会いの現場で最後まで残っている女の子にアックしてみた。
残りものには福がある、という。しかしおそらくそれは、刺身の盛り合わせやケーキ詰め合わせの争奪戦において、先に取れなかった者への慰めの言葉として使われるものだと思う。最後に残った、黒ずんだマグロの刺身に箸をつけた者に、
「まあまあ、残り物には福があるって」とか。
んなもん、ただの言葉のお遊びにすぎない。そもそも〝福〞って何だよって話だし。
では女の場合、残りものに福はあるのか。
刺身やケーキ同様、女も見た目の上位から順に選ばれていくため、残りものは例外なく容姿が醜いであろう。
しかし見た目が、まんま味につながる食品と違い、人間には内面というものがある。美醜のみにこだわる短絡的オトコの視界には入らない、そんな残りものに福がある可能性はなくもないのではないか。 第一の残りものは、金曜の夜、コンビニで1人分のオカズを買っている女性だ。
金曜の夜、合コンはおろか、女子会にも呼ばれていない女性。家族の待つ家に帰るでもなく、部屋でさみしくコンビニ飯。これぞ〝残った〞状況と言える。福の中身もわかりやすい。〝つけ入りやすい福〞だ。
金曜日、夜の8時。都心から電車で30分ほど離れた駅近くのコンビニに入る。しばし立ち読みをしつつ待つうちに、それらしき女子が入ってきた。
弁当売り場を物色し、おにぎりを手にレジに向かう。パッと見はオシャレな女子大生風なのに、こんな子でも取り残されてるのね。
店を出たところで声をかけた。
「そのおにぎりオイシイですよね」
「……」「良かったら一緒に食べませんか?」
あらかじめ買っておいたオニギリの入ったコンビニ袋を見せる。俺もアナタと同じ、1人でさびしくメシを食う男アピールだ。
「いや〜」
「ほら、そこの公園にベンチがあるから…」
「家で食べるんで」寂しいくせに強がっちゃって。そんなんじゃこれからもずっと残りもののままだよ。
続いて別のコンビニでは、黒縁メガネちゃんが唐揚げ弁当を一つ買っていった。住宅街に向かう途中で変化球を投げる。
「このへんにコインランドリーってありますかね? 引っ越してきたばかりでわからなくて」
「ああ、それならちょっと戻ってコンビニの脇ですよ」
「そうですか。お姉さんも1人暮らし?」
「ですね。それじゃあ」
「ちょっと待った。よかったら外でもいいから一緒にゴハン食べません?1人で寂しくて」
黒縁ちゃんは歩きながらオレの顔をじーっと見る。
「あの、来月、大地震が来るって知ってます?」
はて?どうしたの急に。
「いや、知らないけど…」
「私の行ってるセミナーで、その話が良く出てるんです」
「へえ」
「不穏なことが起こるから、私たちはそれに備えなきゃいけなくて。アナタはなにか備えてますか?」
…ヤバイのに声をかけちゃったみたいだ。こんなの追いかけても福なんてあるわけない。禍ならありそうだけど。
次の残りものは、婚活パーティーで誰からも声をかけられない女だ。みなさんも見たことがあるだろう、フリータイムで男が寄ってこず、さみしそうにケータイなんぞをいじってる女性たちを。あれほど残りもの感のある人たちをはっきり見せてくれる場はそうあるもんじゃない。
彼女ら、なるほど容姿はイマイチでも、あからさまに残りもの扱いされているだけに、ちょっと話しかけてあげればすぐ舞い上がるに違いない。舞い上がる、すなわち〝即マン福〞の香りがぷんぷん漂うのだ。
翌金曜、男女40対30の大所帯パーティに参加したオレは、最初の回転寿司タイムを軽く流しながらフリータイムが来るのを待った。
もちろんおおよその目星はついている。残りもの入りが濃厚なのは、その見た目からして5番、11番、24番あたりか。
フリータイムが始まった。男の数のほうが多いのに余ってしまう、つまり「あいつと話すぐらいなら1人でぼーっとしてるほうがマシ」と男性陣に思わせた女性は…3人いた。
見事に誰にも話しかけられずに携帯をいじっている24番さん、両サイドでは即席カップルが楽しそうに談笑してるけど、いったいどんな気分なんだろ。
では福を拾いにいこう。
「か?」
「え?私ですか?」
「もちろん」
「どうぞ。なんかすいませんね」
いきなり謝罪とは、ずいぶん自分を卑下した人だ。
「誰かいい人、見つかりました?」
「うーん。なんかよくわからないですね」「僕なんてどうですか? アナタのこと気になってるし」
「あはは。ありがとうございます」
説き文句にも本当に嬉しそうに笑う彼女は、34才の池田さん(仮名)。身だしなみはきちんとしているが、やはりルックスがアゴ勇似の25点レベルなのが残りものになった原因と思われる。
案の定、オレたちはめでたくカップルになった。しかしもちろん、こお話してもいいですちょっとした口の段階ではまだ〝福〞などない。即マンこそが今回の福だ。
一緒に会場を出てフラフラと歩く。時計は22時をまわったところだ。
さすがにホテル直行はなかろうと、近くの居酒屋に入ってビールと梅酒割りで乾杯した。
「でもいい人に出会えて良かったですよ」
「そんな、アタシのほうこそ。誘ってもらえると思わなかったから嬉しかったです」
やっぱり嬉しそうにニヤニヤしながら、池田さんはものすごいペースで一杯目を飲み終えた。めったにない男からの誘いに緊張してるのだろう。
「まあこうやって会えたわけだから、今日はパーッと行きましょうか」
「はい。明日はお休みですし」
彼女のほうから明日は空いてると申告してきた。やはり即マン福は実在するらしい。
深夜0時、そして1時を過ぎても、彼女は席を立とうとしなかった。
その間の会話に関しては正直どうでもいいようなものばかりなので割愛する。大事なのは終電を過ぎても帰りたがらないというこの状況だ。セオリーどおりに攻めるなら、この後、
「場所を変えよう」と店を出て、ふらふらとラブホを目指すべきだが。
「ちょっとお店変えようか」
池田さんの眉がぴくりと動いた。
「うーん、ここのご飯オイシイし」
「もっとムーディーなとこ知ってるよ」
「えー、動くの面倒だし」 どういうことだろう。残りものを拾ってもらったのに、わがままをぬかすとは。一寸の虫にも五分の魂、彼女なりにジラシの駆け引きをかましてるつもりなのか。そんなんいらんっちゅーの。
午前3時、オレは動いた。おそらくこの残りものは、強引な押しを待っているのだ。
トイレに立った彼女を追い、個室に一緒に入る。
「え? え?」
「いいじゃん。ちょっとだけ」
服の上からおっぱいに手を…。
「やめて。警察に言いますよ」
ものすごい形相で睨みつけてきた池田さんは、一礼して店を出て、タクシーに乗って帰っていった。
援助交際の現場にも、残りものがいる。出会いカフェに長時間すわりっぱなしの女だ。
トーク希望は入るけど、条件が合わないため店に居残り続けているパターンではない。誰からも指名されないのにずっとその場を動かない、
ヒマつぶしの極みのような女のことだ。
トークすら入らないのはすなわち『どれほど安かろうが絶対に買う気はない』と男たちに宣言されているわけで、当然ながらかなり醜い容姿の持ち主である。
そんな残りものに福があるとすれば、考えられるのは〝テクニック福〞しかない。
某日の夕方、都内の某出会いカフェで、明らかに浮いている女を発見した。推定年齢50才。髪の毛を後ろでひとつに結び、メガネをかけ、ポリポリとお菓子を食べながら携帯に熱中している。すさまじい浮きっぷりだ。プロフィールカードには、直美(仮名)35才とあるが、大嘘にもほどがある。
しばらく店内で観察を続けてみた。30分、1時間、2時間。女のメンバーが入れ替わり、男性スペースも満員にふくれあがってきたのに、直美さんだけは動かざること山の如しだ。
入店3時間が過ぎた。ではいよいよ、The・残りもの、直美さんに突撃だ。
「店員さん、1番に座ってる女性、お願いします」
その瞬間、男性陣からどよめきが聞こえた。勇者ついに現る、といった感じか。
トークルームにやってきた直美さんは、ワリキリを希望するオレに、淀みなく言った。
「アタシ受身はムリ。指入れもムリ。責めるほうは得意だけども。お兄さんがMなら相性はピッタリだけどどうする?」
なんか高圧的!おばちゃんならおばちゃんらしく粛々としてればいいものを…。
しかしこの物言い、テクニック福を期待してもいいかも。
「ボクMなんでお願いします」
「じゃあ出よう。1時間だけで、ホ別1万円くれればいいから。ほら、早く行こう」
おばちゃん特有の線香くさい臭いを隣に嗅ぎながらホテルへ向かった。
「先にもらうから」
部屋に入るや直美さんは1万円をせがみ、カネを財布にしまうと同時に行動に出た。
「ほら〜、ちんちん出して〜。早く大きくなりたいんでしょ?」
ズボンの上からチンコをなでている。ほう、そういうキャラか。
「おちんちんが『狭いですよ〜』って言ってるよ。はいはい、じゃあ楽にしてあげましょうねえ」
そのままズボンを脱がせて、なんと即尺スタートだ。洗ってないアナルにまで舌を這わせてくる。やはりテクニック福はあったのか!
「うん、美味しい。アナタのお尻、すごく美味しいんだね」
アナルを味わい終えた彼女が、服を脱いで浴室へと向かった。後を追ってオレも風呂場へ……は?
何でカミソリを股間にあててるんすか。
「ん? ちょっと伸びたから剃ろうと思って」
「……」
「んもう、我慢できなくて入ってきちゃったのぉ?」
キツイ。身の毛がよだつほどキツイ。不細工なババアがアソコの毛を整える姿なんてできれば一生見たくなかった…。
首元から足まで、カラダ中に広がった湿疹を爪でポリポリと掻く様も、異常なまでにおぞましい。テクニック福のわずかな喜びなどすっかり消え去ってしまった。
ベッドに入ってすぐ、オレの股間に直美さんの顔が近づいてきた。マングリ返しの態勢で、尻の穴に舌がグリグリ入ってくる。
「ねえ、どうしてこんなにヒクヒクしてるのお?」
「いや…」
「気持ちいいからでしょ〜。もっと奥まで、それ、それ〜」
舌のテクニック福10ポイント、アホらしい台詞マイナス10ポイントで、行って来いの0点ってとこか。
ババアが自分の手のひらにツバをかけて股間に塗りたくり、上に乗っかってきた。「チンチンがここにに入りたいって言ってるぅー。ほーら、いらっしゃいませ〜」
いかん、マイナスポイントばかりが増えていく。
「ウフゥ、ウフゥ。すんごーい、すんごーい」 驚異のガバマンに、針がマイナスのリミットを振り切った。こんなもん、1万も出して買ったオレが馬鹿だった…。
あらためて言うまでもないけれど、残りものに福なんかありません。こんなふざけた故事は、辞書から抹消すべきです。