以前『JK本番ルームに集う狂った面々』という記事を掲載した。東京新宿の、売春が常態化したJKコミュ(個室でお話する形態の店)で働く女の子と客の様子をリポートしたものだ。
あの時点では、これほど狂った店は他にないはずだった。当たり前のように「3万円でホンバン」と言ってしまうのみならず、そんな店にワクワクしながら通う客ですら、なんら異常性を感じていない様子だったからだ。
ところが今回、大阪日本橋にそれ以上の店が存在するとの情報が入った。そのJKコミュ『X(頭文字ではない)』にはなんと、中学(JC)までもが在籍しているというのだ。
平日夜7時。新大阪駅から地下鉄を乗り継いで「恵美須橋」駅に降り立った。ここから歩いてすぐの場所が大阪イチのオタク街、日本橋だ。東京の秋葉原よろしく、家電量販店やパソコンショップが点在しているのだが、それにまぎれて、メイドカフェやJKリフレなんかの怪しげな店も乱立しているようだ。
件の店は駅から堺筋を北上した「日本橋4丁目」交差点付近の雑居ビル6階にある。ビル1階には個人経営の居酒屋が入っている。外でしばらく観察してみたものの、通りは人の往来が少ない。それでも単独男性がぱらぱらとビルに入っていき、エレベータで6階に向かう姿は確認できた。
というか他の階で下りる人はいないので、皆『X』目的でやって来てるのかもしれない。エレベータで6階へ。どの部屋もトビラに看板が出ていないが、目的の店のドアには「Welcome」と書かれた板が飾られていた。耳を澄ますも、中から音は漏れ聞こえてこない。中ではオッサンが受付をしていた。
「初めて?」「えーっと」「初めての人は指名とかないから、30分7千円ね」ココ、一見客はフリー限定らしく、2回目から女の子の名前を申告して指名するシステムなのだとか(指名料千円)。
たしかに店内にはパネルなどもなく、オッサンが独りで佇んでいるだけだ。あらかじめらしき女の子の名前は把握している。ここは一見じゃないフリをしてその子を指名すべきだろう。
「あの、前に来たときについたAちゃん指名したいんですけど」「そうなんだ。じゃあ8千円ね」
疑われてないようだ。カネを支払うとオッサンが奥にあるカーテンを開いた。先にはトビラが4つ5つほどある。それぞれが個室になっているのだろう。部屋は4畳半ほどのスペースに2人掛けソファとちゃぶ台が置かれた簡素な作りだ。このソファであってはならないことが行われているのだろうか。
コンコン。ドアがノックされ、すぐに扉が開いた。入ってきたのは制服姿の女の子だ。「Aです、よろしくお願いします」
「…ああヨロシクね」
「寒いですね。泣きそうやわー」
パッと見たところ、この子が中学なのか、高校生なのか、もしくはそれ以上の年齢なのかの判断がつかない。黒髪ストレートの髪型はそれっぽいけど、化粧をしてるのでちょっと大人っぽくも見える。着ている制服は店から支給されたものだそうだ。
「Aちゃん、今日は学校帰り?」
「一度部活終わって家に帰ってから来ましたよ」
「部活ってなにやってるの?」
「吹奏楽です。地味ですよね」
吹奏楽部の女子中生が放課後にこんなバイトをしてるとは。Aちゃんはソファではなく、オレが座る向かいの地べたに腰を下ろした。
「いまぶっちゃけ何才?」「何才に見えます?」
「もっと下かなぁ」
「えー、嬉しいです。けっこう大学生っぽいとか言われるんで」
「もしかして中学?」「はい。2年ですよ」
「…そうなんだ。じゃあ14才?」
「はい。お店の人には言えっていわれてるんでナイショにしてくださいね」
素直にこの話を信じていいものか、判断は分かれるところだろう。だけど彼女の見た目と表情の豊かさにくわえ、手入れのされてないまっさらな爪にホンモノっぽさを感じざるをえない。彼女の爪をぼんやり見ていたとき、手の甲に書かれたメモが目に入った。「それなんて書いてあるの?」
「あ、明日持ってくモノです。」
そう言って甲を見せるAちゃん。『楽譜忘れず!!!』本当に吹奏楽部のようだ。そのとき、彼女が少し小さな声を出した。
「あのぉ、どんなことしたいですかぁ?」
「…えーっと、そうだなぁ」
「お話だけやったらおカネにならないんで、やりたいコト教えてください」Aちゃんの目がまっすぐとオレを見つめている。つまりは売春を意味しているのだろうが、こうして見るとあどけなさが充分残った子供の顔だ。
「いつもはどんなコトしてるの?」「いろいろですね。手とか、舐めたりとか」「もしかして最後までとかも?」「まあ、人によってかな?お兄さんやったらそれでもイイですよぉ」
「早く決めてくれ」とばかりに身を乗りだしてくるAちゃん。そんなコトできるはずないし、してイイはずもない。
「ちょっと考えさせて。ちなみにいくらぐらいなの?」
「手は1で、舐めるのは2」「…最後までは?」
「4は欲しいけど、アカンかったら3とかでもいいですよ」
…ダメだ。語り口はいっぱしの売春婦だよ。
Aちゃんによれば、この店はいちおうJK店としてやっているらしいが、ホームページやブログなどはないそうだ。ときどき近所で女の子がビラ巻きをして客を集めているらしい。
「この店に入ってどのくらいなの?」
「まだ2カ月ぐらいやったかなぁ。でも週に2回ぐらいしか出ないから、そんなに稼げてないですね」
「へえ。時給は出るの?」
「いちおう千円なんですけど、あとは部屋でお客さんからもらうカンジですかね」
「みんなエッチなことを求めてくるんだ?」
「えー、ていうか話だけで終わる人なんていないですよ。みんなそれ目的!」
ニッコリ笑って彼女は告白してくれた。なんと1日で最高8万円を持って帰ったこともあるらしい。ゲーセンで遊んだり、好きな服を買うのが楽しみなのだとか。
「実家に住んでるんだよね?お母さんとかに何か言われないの?」
「隠してますからね。お年玉をもらったら入れておく銀行口座があるんで、お給料はそこに入れてます」
「気づかれないんだ。でも服とか増えてたら怪しまれるんじゃない?」「バレてへんと思うんですけどね。中学なんでバイトはできないじゃないですか。まさかバイトしてるなんて思ってないはず」
その後しばらく雑談タイムが続いた。やれ同級生男子が子供っぽくてムカツクだの、部活の顧問がエロい目で見てくるだのと、女子中学らしい話題が続く。だが彼女はやはり健全な中学とは違っていた。スマホで時間を確認するや、焦った表情で言う。
「ていうか時間ヤバイやん。あの、ゴム持ってきてます?」
「いや、コンドームはないけど…」
「え、しないんですか?せっかくやし、遊びませんか?」
「オレは遊ばないよ。ごめんね」
「えー、そうなんやぁ。あー、わかりました」
途端に機嫌が悪くなり、きっかり30分経ったところで彼女が立ちあがる。
「じゃあ時間なんで」
店を出ようとしたところで、奥に私服姿の女の子が見えた。Aちゃんよりも大人っぽく見えるのでこの子はJKなのかもしれない。ビル内の同じフロアでしばらく観察していたら、客のオッサンが出てくるのが見えた。上機嫌らしく口笛を吹いている。話しかけてみよう。
「この店すごいですね。初めて来たけどビックリしちゃいました」
「ああ、ホンマ?ええ店やろ」
「けっこう来てるんですか?」
「せやね。まあおおっぴらには言われへんけど。ヌフフ」
ゲスイ笑顔だ。
「今日ついた子が中学だったんですけど、この店って高校生だけじゃないんですね」「ホンマに?え、なんて子?」「Aちゃんです」
「うわー知らんかったー。ワシはいつもJKやからなぁ」
高校生であっても完全アウトなのだが、オッサンは得意気に語りだした。この店は摘発を逃れるために移転を繰り返していて、現在の場所に入居したのが3カ月前であること。今までこの店で5人ぐらいの子につき、全員と本番プレイをしたこと。相場は2万5千円であること。そして最後にこれだ。
「Aやったっけ。次は絶対その子入るわ。最後までイケるんやろ?」
それには答えずにお別れした。その直後、今度はサラリーマン風の客が店から出てきた。
「中学の子がいるなんて、ココ大丈夫なんですかね?」
「ああ、Bとかそうやんね。でも絶対どこでも言ったらアカンで?ホンマに」
え、中学はAちゃんだけじゃないの?マジかよ。
「たぶんAとBぐらいちゃう?あとはみんな高校やろ」なんてこった。まさか中学が2人も在籍してるだなんて…。彼は先ほどまでそのBちゃんを指名して個室に入っていたそうだ。いったい何をしてきたのだろうか。
翌日、午後7時ごろ店に入った。受付の男にBちゃんを指名と告げ、個室に通される。すぐにノックが鳴り、黒髪ロングヘアの制服女子が入ってきた。
「初めましてですよね?隣いいですか?」
ソファに座るオレのそばに腰かけるBちゃん。太ももが触れ合うほどの近距離だ。昨日のAちゃんは見た目で判断がつかなかったが、この子は間違いなく中学と思えるほど幼い顔立ちをしている。
化粧っ気はなく、まるで姪っ子が家に遊びに来たかのような感覚に陥る。
「若いよね。何才?」「高1です」あれ、そうなの?
「ホントに? もっと若く見えるなぁ」「そうですかぁ?」
「ていうか友達がこの店でキミとしゃべったことあるって聞いてきたんだよ。そのときは中学って言われたらしいけど」
「…わぁ、そうなんですか。いちおうお店の人に、聞かれたら高校って言えっていわれたんで嘘ついてましたぁ」そうか。やっぱりそうなのか…。
Bちゃんは中3で、現在は受験勉強の傍ら、この店にちょこちょこ出勤しているそうだ。
「高校はどのあたりに行こうと思ってるの?」
「●●高校か、あとは私立かどっちかです。ウチ片親なんで公立がいいんですけどねぇ」
すかさずスマホで学校名を確認してみれば、ちゃんと実在する高校だった。それもけっこうな進学校っぽい。受験勉強が大変などと話すBちゃんだが、どうしても間近の太ももに目がいってしまう。ときどき脚を組みかえるせいで、スカートがめくれあがりそうになるのだ。そんなオレを見かねたのか、彼女が悪魔の提案をしてきた。
「どうします?ゴム持ってるなら3・5でエッチしますけど」
このタイミングでの誘い。太ももチラは意図的だったのかとすら思わせるぐらいに絶妙だ。だがそんなのに応じられるわけがない。「まあ、もうちょっと話そうよ。彼氏とかはいないの?」
「あー、ウチの学校の男子ってホンマにアホばっかりなんですよ。他の中学に乗り込んでケンカしてきたりとか、スカートめくりしてきたりとか。ガキすぎてホンマに興味ないです」
「じゃあフリーなんだ」「いちおう高校のカレは、いるようないないようなってカンジなんですけどね。あんまり遊んでくれないんで」
彼氏はキミがこんなバイトをしてることを知ってるのだろうか。再び学校生活の話題に戻る。彼女はけっこう成績優秀らしく、部活もやらずに勉強ばかりしてきたそうだ。
「だけど『チャレンジテスト』っていうのが今年から始まったんですけど、それが思ったより出来なかったんですよね」
「なにそれ?」
「なんかテストなんですけど、その結果が内申点に関わってくるんですよ。それがあんまりやったんで、ちょっとビビってるんです」
取材後に調べてみれば、チャレンジテストは大阪府の1、2年生を対象に今年の1月に行われていた。当時のBちゃんは中2の3学期だったわけで、図らずも彼女が現在中3との裏づけが取れた形だ。
そんな話も終わって沈黙が続いたところで、彼女の太ももがグイッとオレを押してきた。
「ゴム持ってなかったらフェラでもいいですよ」「ちなみにそれはいくら?」
「1・5とかですかね」「うーん。女の子たちはゴムを持参してないんだ?」
「それはダメですよ。だってそういうところだってバレちゃうじゃないですか」
「警察が来たときとかに?」「そう。一応お話だけっていうお店やから」
自分たちのやってることが違法であるという認識は、かろうじて持ってるようだ。
「他の女の子もみんなエッチなことしてるのかな?」
「そうやと思いますよ。わざわざそういうコトを話したりはせーへんけど、シャネルのカバン持ってる子もおるし」
「Bちゃんは何にお金を使ってるの?」
「私は、親におカネ入れてますよ」「え、中学なのに?」
「そう。片親なんで。親は居酒屋でバイトしてると思ってますけど」
それをまっすぐ信じる親にも違和感を感じてしまう。
「中学はキミだけ?」
「ワタシと、あと一人おるんかな?たぶん2人やと思います」
「へえ。でもなんでまた、この店で働くようになったの?」
「先輩から教えてもらって。あ、今も一緒に働いてる高校の子なんですけど」
彼女のスマホがピピピっと鳴った。30分のタイマーを設定していたようだ。Bちゃんは帰り際に頭を下げ、「次はゴム持ってきてくださいね」と部屋を出ていった。
異常な空間をあとにして1階に立ちすくんでいたところ、6階から降りてきたエレベータから独りのオッサンが出てきた。
「あの僕これから『X』に入ろうと思ってるんですけど、中学の子がいるってマジなんですかね?」
「それは知らんけど高校はおるで。兄ちゃん、あんまり高いカネで交渉すんなよ?」「どういうことですか?」
「アイツら若いからカネぎょうさん取りよるやろ。それが当たり前になったら困るしなぁ。なるべく買い叩いとき」
相場を上げるなってことらしい。やはりこの店も、そこに集まる客も、腹の底から狂っていると言うしかない。