





東京の代々木公園は、人気 のお花見スポットなので、シ ーズン中はとにかく来園者が 多い。 週末の午後なんかは決まっ てトイレがひどく混むため、 男の立ちションだけでなく、 女の野ションも頻発します。 そのため毎年、大げさでも 何でも無く、何十人もノゾキ 魔が出没する公園でもありま す。 今春の様子を見に行ってみ ましょう。 その数ざっと 30 人 4月上旬の土曜日。天気が 良く気温も高い、絶好の花見 日和の昼下がり。 午後3時。代々木公園にや ってきました。時間的に宴会 客たちの酔いも回ってきてい るんでしょう、あっちこっち から賑やかな声が飛んでいま す。みなさん、楽しそうです なぁ。 桜の木が密集するエリアへ。 園内で一番混雑するトイレが 見えてきました。例年、ノゾキが大発生する場所です。本 日はこのへんをウロちょろし、 状況を観察するとしますか。 ノゾキの連中の動きについ ては、把握してます。このト イレの裏手に広がる雑木林で 待機し、行列の女性陣が尿意 の限界に達して茂みを求めて やってくるのを待つってのが パターン。混浴温泉の「ワ ニ」ならぬ、「陸ワニ」です わ。 さて、今、トイレは長蛇の 列です。陸ワニたちはどれく らいいるかしら? 裏手を見渡してみます。 いるいる! 雑木林の中に、 何をするわけでもなく突っ立 っている男が、ポツンポツン と何人も。 サッカーコート半分くらい の範囲に、その数ざっと 30 人。 一様に女子トイレのほうに視 線を向けているあたり、全員、 陸ワニで間違いありません。 「オシガマも 悪くないですね」 陸ワニたちが一斉に同じ方 向へ動き出しました。 見れば、若い女性が雑木林に向かって歩いています。細 身のズボンを履いて、何とな く足をモジモジ。 なるほど、あの子に反応し たってわけか。彼女のあとを つけている陸ワニたち。群れ るといよいよ気持ち悪いなぁ。 ネーさん、大丈夫かしら? しかし、彼女は尿意を我慢 できたのか、あるいは単に散 歩したかっただけなのか、雑 木林をふらふらと歩き、その まま遠くへ離れて行きます。 陸ワニたちは次々と回れ右。 何か滑稽です。 しかしポッチャリ体型の 30 才くらいの陸ワニが一人、尾 行を続けています。アイツ、 どこまで粘るんだろう? 付 いて行ってみますか。 モジモジ姉さんが立ち止ま ったのは、3分ほど歩いた場 所でした。木の陰に立ってじ っとしています。 と、ポケットからハンカチ を取り出しました。くるぶし あたりを拭いています。靴と ソックスを脱ぎ、足の甲や裏 も。 …これ、漏らしたんだろう な。やっぱり雑木林にはオシ ッコをしにきてたんだろな。でも、陸ワニがわんさか群れ てきたんで断念し、この結末 か。 彼女ががっくりと肩を落と して去っていきます。かわい そうに。 んん? ポッチャリ陸ワニ が彼女の立ち止まっていた木 の陰へ向かっています。でも って、手でその地べたを触り、 臭いを嗅いでいますよ! き っしょ! 思わず近寄り、しゃべりか けました。「彼女、お漏らししちゃいま したね」 仲間だと思ったのか、ぽっ ちゃりさんは警戒しません。 「まだ温かいですよ」 「……そうなんですね」 「オシガマも悪くないですね」 オシガマ。オシッコ我慢の 略だ。とんでもない性癖だな こりゃ。 「アイツが動いた ときには、行った ほうがいいですよ」 トイレの裏手まで引き上げ てきました。陸ワニたちの張 り込みは続いており、不気味 な状況は変わっていません。 改めてキョロキョロしていると、黒いシャツを着た 50 代 くらいの陸ワニと目が合い、 会釈されました。 「どうもー」 こういう現場の人種には珍 しい社交性です。どういう方 なんでしょう? 「あ、どうも」 「今日、ぜんぜんダメでしょ? ぜんぜん見れないし」 そうなんだ。ま、初心者の テイで答えときますか。 「そうなんですね。自分、初 心者なんで。状況があんまよ くわかってなくて」 「あ、そうなの。たしかにオ ニーさん、顔、初めて見るも んね。去年とかは来てないで しょ?」 このフレンドリーさは、い ろいろ教えたいクチかもね。 「はい、今年が初めてで。去年 そんなに良かったんですか?」 「よかったですよ、仮設トイ レがなかったんで。女子トイ レの行列がもっと長くなって、 女の子がもっとこっちへ来て てくれて」 「ふーん」 「仮設から少し水漏れしてて。 だからオレ、公園のスタッフ に言ってやったんですよ。早 く使用禁止の貼り紙貼って下 さいって。みんなのためにね」 何だこの話? てか、この オッサン、これを自慢したく て絡んできたのね。 ここは一応持ち上げておき ましょう。 「そうなんですね。いい仕事 しますね、オニーさん」 すると、オッサンの視線が、 少し離れた場所に立っている、 大きなサングラスをかけた 40 代半ばくらいの陸ワニへと向 けられました。 「いや、いい仕事するという ならアイツですよ。アイツは 察しがいいから、その女の子 がオシッコをしそうか、そうでもないかの見極めがすごく て。アイツが動いたときには、 行ったほうがいいですよ。み んなのレーダーだから」 ほぉ! それはちょっと興 味をソソられる人物ですな。 「アイツは女が酔っ払ってる と、オシッコしてるときにそ のコの体を触っちゃうたりも するからね。去年とか、しゃ がんでオシッコしてる女の子 のスカートめくってたり、胸 も触ったりしてたし」 唖然です。マジで要チェッ クの人物だわ。 宴会グループの 酒席をじーっと 眺めてる そんなわけで、レーダーさ んに注目することに。 4、 50 分後、雑木林に一人 の太ったオバサンがやってき ました。けっこう酔っ払って いるのか、顔が赤く、足取り も怪しげです。 リーダーさんがすーっと歩 き出し、オバサンの後ろ3メ ートルくらいの位置に付けま した。 見れば、トイレの裏にいた ほとんどの陸ワニたち約 15 人 が集まっています。さすがみ んなのレーダーです。 オバサンはずんずん茂みへ と入っていき、その場にしゃ がみこみました。 陸ワニたちが一斉に茂みを 取り囲みます。もう覗くって レベルじゃない。抵抗できな い獲物を囲むと言ったほうが 適切でしょう。 少し離れた場所から様子を うかがっていると、 30 秒ほど で陸ワニたちが茂みからさっ と離れました。オシッコが終 わったんでしょう。 オバサンが出て来ました。 表情は引きつってます。めちゃくちゃビビってるじゃん。 さらにその後、オレはさら にイヤな気分に。 レーダーさんが、雑木林か ら出ていくオバサンを尾行し、 どの宴会グループへ戻るかを 確認してその酒席をじーっと 眺めてるんです。 本当に悪趣味ですわ。 「何やってんだ、 こらぁ!」 夕方の5時を過ぎました。 公園全体の雰囲気がそろそろ お開きムードになり、トイレ の行列も少し減ってきました。 しかし陸ワニはまだ 20 人以 上も粘っています。 雑木林に、2人組の若い女 が入ってきました。ツレショ ンかな? 共にかなり酔っ払 った感じですし、片方は化粧 も服装も派手なギャルで、奔 放な空気をまとっています。 レーダーさんを筆頭に、わ らわらと連中が寄っていきま す。2人組はすんなり茂みの 中へと入り、陸ワニたちがさ っと取り囲みました。 とそのとき、後ろから男の 怒鳴り声が。 「何やってんだ、こらぁ!」 えっ? 何っ !? 反社顔のガタイのいいオッ サンが駆け寄ってきました。 2人組のツレのようです。自 分も遅れて立ちションをしに きたところ、異様な光景を見 てピンと来たんでしょう。 陸ワニたちが蜘蛛の子を散 らすように逃げていきます。 ぷぷっ。 ★ この陸ワニども、来年も絶 対またやってきます。女性は 代々木公園の花見は避けたほ うがいいかも。
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